駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

君知るやバタフライ効果

2009年01月12日 | 世の中
 冬風邪が流行ると内科町医者はなかなか忙しい。午前中はたぶんF1のコックピットのようだと想像する?。コーヒーを手に診察室に入っても二口目が飲めるのは11時頃だ。忙しい時は神経を研ぎ澄ますから疲れる。緊張を強いられなければ忙がしくても、さほど疲れない。押し寄せる風邪の患者さんの中には風邪のようで風邪でないのが紛れ込んでいるから気が抜けない。50kmで走っている時は路上の落下物を避けることはさほど難しくない。100kmで走っている時は細心の注意を払っていないと避けられず大事故になる。
 風邪で込んでいるからと言って、高血圧や糖尿病の患者さんをおざなりに診ることはできない。もっとも優しい方も多く、込んでいれば雑談なしで腰を上げてくださる。
 人間優しく思いやりに富んだ方ばかりでなく、混んでいてなかなか順番が回ってこないと見て取ると、電話を掛けてくる図々しいおばさんが時にいる。患者からの電話だと私が出ることを知っているのだ。マンションを買えなどという電話には出ないのだが。
 「先生この前貰ったお薬 下痢するって書いてあったけど、(下痢することも時にはあると書いてあるはず)、便が軟らかくなったの、やめてもいいかね」。「熱は下がった?、食事は取れる?、咳や痰は?・・」。矢継ぎ早に聞いて「大丈夫止めてもいいよ、下痢は薬のせいじゃないかもしれないので、続いたら又来てください」。と電話を切る。こういう人に限って電話再診料などというものの存在を知らない。こちらもつい請求し損なうことが多い。
 こうした自分(と家族)が一番大切というおばさんの気持ちはよくわかるが、だからといって二十人も三十人も並んでいる人を飛び越えて自分の用だけ済まそうという心にはちょっと問題があると思う。それが戦争に繋がると云えば、おばさんは驚くだろうな。でもそうなんだと私はほとんど確信している。他者の痛み、たとえ些細なことでも、に対する想像力の欠如と自分の痛みに過敏であること(ある人達)が、微かな揺らぎを起こし、それが複雑に絡み合い積み重なりそよ風となりやがて台風を呼び起こすのだ?。
 
コメント
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