今ではコンピュータを使った補正がされるので天体観測のずれは問題にならなくなっているようだが、半世紀以上前は天体観測にも観測者による誤差があり、その誤差には観測者の癖というか個性が出ていたようだ。
医療界では未だ個々の患者さんの予後を予測するコンピュータは導入できておらず、あとどれ位の余命かは医師の勘が頼りで、なかなか正確には当てられない。あと数日というのであれば、経験からかなり正確に予測できるが、何ヶ月となるとばらつきが大きくなる。私もそうであるがどちらかというと長目に予測してしまう医師が多いようだ。それにはあと三四ヶ月と思っても、心配そうな家族の顔を見ているとつい半年と言ってしまう人間の心理もが絡んでいるようだ。
しかし中にはあと半年の予想を大幅に裏切って一年以上頑張られた患者さんもおられる。どういうわけか全て女性で、中には家族が音を上げて正直に私の方が大変などとこぼされたこともあった。そうして頑張られる患者さんも夏の暑さは越えられても冬の寒さは越えられないようだ。室内暖房がされてはいるのだが、北海道のように全館暖房でなく、すきま風が入ってくるのだろうか。
この寒波で12年の長きにわたり寝たきりだったKさんが永眠された。亡くなる数日前まで呼びかければ返事があったのだが、眠るように亡くなられた。九十八才、百までの末娘さんの願いは叶わなかった。長く生きると、色々なことがあり、ご長女が向こうで待っておられる。