佐藤優という人が居る。なんだか物凄い勢いで原稿を書いている。書店に行けば必ずといってよいほど目に入る著者だ。西郷さんのような特徴のある顔をしておられるので、テレビや雑誌で写真を見た方は記憶されているだろう。外務省の外交官時代、鈴木宗男議員に絡む事件で起訴され有罪が確定し、そのため失職している(本当に有罪と言えるかは微妙なようだ)。
外務省失職後は文筆活動に転じ、多彩数多くの本を著している。歴史政治経済に膨大該博な知識を持ち、偏りの少ない論説を展開している。既に何冊かを読んだことがあり、ある程度参考になると思っていたが、NHK出版の「資本主義の極意」という本を読んで目から鱗が取れる気がした。元より私に歴史政治経済の知識が足りないせいもあろうが、日頃考えていたことのすっきりした見取り図を与えられた気がした。極意という著書名は、必ずしも当たっていないが、これを読んでこれからどうするかを考えるという意味では当たっている。
この本の中にも出てくるが反知性主義が席巻する日本でどう生きてゆくかを、考えさせられた。反知性主義と言うのは私には最近まで馴染みのなかった言葉で、文字通りに捉えていたが、そんな考え方もあるかでは済まない大きな勢力を持っている。反知性主義に掛かれば、恐るべき知識と能力を持つ佐藤優氏もぼそぼそとしゃべって気にくわないとか、ギョロ目で賢そうでないといった評価で切り捨てられることになる。
まあしかし、半ば幻想でなんとか楽しく生きようとしている者には厳しい本ではある。