医師会の会合で普段話すことのない少し先輩のK氏と話していて、海外旅行の話になった。是非、スペインに行ってご覧なさいと言われる。八日間あれば回れますよとにっこりされた。いつも連休に四泊五日でヨーロッパへ行くと言ったら、そんな短くてはと驚かれてしまった。なかなか長くは休めませんには、今行かなければ行けなくなりますよと忠告された。K氏は二人で医院をやられているし往診されていないので、長期休暇が取りやすいのだろうと考えていたら、それが読めたのか横からM氏が私の所は田舎だから、長く休んでも患者は文句を言いませんと言われる。本当かなあと思いながら、どうもそそのかされた気になった。
確かに足から年を取るので、石畳の街を歩くのは今のうちかも知れない。自分はともかく、女房が健脚ではなく二百メートル歩くのも嫌がるようになってきているので、古希になるのを機にこれからは一週間の休みを取るかと帰り道に考えた。それにしても結構海外旅行を楽しんでいる同年配が多いのに少し驚いた。
確かに広い世界を知る海外旅行は大きな楽しみだ。そして、地味なK氏や口うるさいM氏が海外旅行を楽しんでいるのを知ったのも、大袈裟だが心の世界を広げられた気がする。
あんなにアイルランドにあこがれていた母は一度も海外に行くことができなかった。年老いてきた息子はせいぜい、時及行楽と旅に出ることにしたい。