「新型コロナとワクチン:知らないと不都合な真実」 峰宗太郎 山中浩之 日経プレミアシリーズ新書を読んだ。この本ではウイルスと免疫とワクチンという異なる専門分野にまたがる新型コロナのワクチン療法についてわかりやすい科学的で俯瞰的な解説がされている。文庫本一冊というのはある事柄について基本的な知識を身につけるのに適当な情報量で、そうした意味でこの本は新型コロナワクチンについて知識を得たい人に格好の本だと思われる。
今まで打たれてきたインフルエンザワクチンや麻疹ワクチンなどの開発に十年以上かかっていたのに、新型コロナワクチンが一年足らずで作成できたのは新型コロナワクチンが今までに使われてきた生ワクチン弱毒ワクチン部分ワクチンと異なる核酸ワクチンという遺伝子工学を利用した新しいタイプのワクチンで、同じコロナウイルスのSARSの時の経験知識が応用できたためと、緊急事態なので治験期間を短縮したためなのだ。
新しいタイプのワクチンで治験が不十分なので、実は副作用と効果についての情報は十分ではない(特に日本人では)。流行が猖獗を極めるアメリカやイギリスならともかく、現在の日本ではちょっと様子見という気持ちになる人が多く出ても不思議はない。特に危険率ゼロ指向の日本では、全く新しいタイプのワクチンで長期の副作用などが不明という情報が出回ると二の足を踏む人が出てくる可能性は高い。
管首相は安倍政権由来のやってる感の演出を狙う人なので、河野太郎の好感度に目をつけ突然ワクチン大臣に抜擢し、ワクチンという言葉の持つ予防効果が得られるという印象で新型コロナがすぐにも押さえられる感を狙ったものと思われる。
ワクチンによる新型コロナ抑制は国民の半数が接種し、しかもその予防効果が長く続くものでないと達成出来ない。つまり五月から打ち始めるのでは抑制効果が出るのは秋以降になるのでオリンピックには間に合わない。オリンピックがやりたい気持ちは分かるが、何よりも国民の健康、大げさではなく世界の健康を最優先していただきたい。