駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

どうやって越したか九十の山

2022年05月27日 | 診療
           

 Tさんがやってきた。マイペースで騒がしいので来たのが直ぐ分かる。「先生にお世話になって二十年になる」という。それよりも来月九十一歳になるというので驚いた。「よく九十まで生きたね」と率直な感想を言わせて貰う。
 病気の問屋と言うほど病気がある。高血圧、肝臓、糖尿病それに癌まである。癌は一度再発しているのだが、三年前に上手く取り除くことができた。勿論、御主人はとっくに亡くなり自由気ままにしているが、幸い近くに娘さんが居て手助けをしてくれる。「あたしゃあ、気にしないだよ、それが良いかな」と言われる。確かにくよくよされない。マイペースと言っても我が儘ではなく、理解力は悪いが総合病院のY先生と私の言うことにはどういうものかよく従う。
 「先生の言うことを聞かないと診てくれなくなると困るから」と言われる。勿論、診なくなることはないが匙を投げることはあるかもしれない。
 血圧は良好だが糖尿病は優等生ではなく、若い専門医が診たらインスリンを打ちなさいと言うレベルだ。癌だって再々発の可能性があり油断できない。診ている方はヒヤヒヤしているが、いつの間にか九十一歳になるというのだから驚いてしまう。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする