駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医学は進歩したが

2022年10月28日 | 世の中

                  

 

 私は医者になって五十年になるので、五十年前の医療の記憶がある。万病はちょっと大げさだが、それに近い数の病気があるのでどの病気もとはゆかないが、多くの疾患で診断治療に長足の進歩がある。信じられないほどだ。医学生の頃は急性骨髄性白血病など死刑よりも怖いと感じたが、今は完治する患者さんも数多い。

 分裂病から統合失調症と名称が変わった精神疾患にも進歩がある。昔は精神科医でない私でも一二分話すとこの患者さんは統合失調だなとすぐ分かったのだが、今は風邪などの初診で来られてもはっきり分からないことがある。終り頃少し変だなと感じられるくらいで、有効な薬が出てきた。

 良い診断治療法がない時代(高々三、四十年前)、無念と亡くなられた患者さんを記憶する者としては、優れた医療を享受しているのに当たり前と感じたり不十分と思われる患者さんにはちょっと違うんではないかと思うことがある。 

 東京大阪三時間は当たり前、雷や雪で一時間遅れれば迷惑という感覚になってしまうのは人間の性だろうか。雨風を凌いで三度の飯が食べられる生活に感謝の気持ち、寛容な心情、誰の命も大切と生きる姿勢など、には進歩はないように感じることも多い。

コメント (2)
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