僕が渓流釣りを始めた頃はなかなか目にすることがなかったニジマス。この魚は釣り堀の魚というイメージでした。しかし現在の渓流、特に渓流エリアの比較的下流域では圧倒的にこの魚が多くなりました。本来であれば大型のヤマメが釣れるエリアです。何故このエリアに大型のヤマメが多いのか?と言えば活動エリアが広大で餌が豊富だからです。ここに大食漢のニジマスが入るとどうなるか・・・結果は見えています。本来棲息していたヤマメは小型化してしまうか、はたまたひどい場合は駆逐してしまうのです。そしてニジマスは大食漢ですから、すぐに釣れてしまう事が多く、釣りとしての楽しさも半減してしまうのです。勿論、掛かった後の引きはニジマスの方が強いので楽しいのかもしれませんが、本来棲息していなかったこの外来魚が釣れた時は、なんかがっかりしてしまいます。
そんな外来魚を何故に漁協は放流し続けるのか?まずはヤマメ・イワナに比べてニジマスの方が稚魚の値段がい安いという事です。要は同じお金で沢山の魚を放流できるのです。しかも、先にも書きましたがニジマスは大食漢で、しかもヤマメ・イワナほどは警戒心が強くないので簡単に釣れます。ヤマメ・イワナより大型化するので、自然というものを考えずに、ただそういうのが好きな釣り人が多く訪れてくれるので漁協が儲かるのです。要はイワナ・ヤマメが賢くて釣れない釣り人が漁協に釣られているという構図が出来上がっているのです。加えてニジマスは北海道以外は繁殖していないと言われているからです。どこからこんなデマな情報が出てるのか?は知りませんが、関東周辺のどこの川も自然繁殖していると思われます。先日も釣りに行ったら、いくつものペアが叩いていました(産卵行動)。やがて浅瀬にパーマークを付けた稚魚が見られるようになり、その後ヒレピンの幼魚が多く釣れ出します。放流魚だけで繁殖しないのでしたらこれらの事はあり得ません。ですから多分自然繁殖しているのです。では何故こんなデマ情報が出てるのかと言うと、この事が漁協がニジマスを放流するにあたっての大義名分になっているからです。つまり、そうしておかないとニジマスの放流が出来なくなってしまうからです。ちなみに、画像のニジマスは57㎝のもの。先日紹介した集英社の「kotoba」に掲載された駒彫り師のE氏が釣ったものです。多分この川で生まれ育った自然繁殖物だと思います。ヒレの線条に乱れもなく、ほぼ完璧な魚体でした。そういう意味では嬉しいのですが、これがヤマメだったらもっともっと、飛び上がるほど嬉しいのではないかと思ってしまうのです。ちなみに、僕のヤマメの自己記録は51㎝でこの川で釣りました。もうかれこれ30年も前の話です。その頃はヤマメが主体で、時々イワナ、そしてこのニジマスとブラウントラウトが釣れ始めた頃でした。その後はニジマスとブラウントラウトが徐々に多くなり、今ではほとんどがニジマス。ブラウントラウトは姿を消しています。時々ヤマメが釣れると『ヤマメだ!』と叫ぶほど。それでもヒレが甘い個体がほとんど。ヒレピンのも時々は釣れますが、ヒレの線条は間違いなく乱れが見られます。つまりは放流物です。完璧な魚体のヤマメはほぼ皆無です。勿論、この川の在来種はヤマメ・イワナですから自然繁殖できないはずはありません。ただ、ニジマスがヤマメを駆除しながら大型化し、大型化したニジマスは魚食性が高くなるので、ヤマメ・イワナの稚魚・幼魚をみんな食べてしまうのではないかと思っています。その結果、時々釣れて来るヤマメはある程度大きくなって放流された、いわゆる成魚放流の魚だけなのではないかと考えます。
日本の渓流釣りではやはり渓流魚と言われる『イワナ』か『ヤマメ』が釣れて欲しいのです。それもヒレが奇麗で大型の魚なんかが釣れたら手が震えるほどの感動ものです。そして、昔はそんな魚が時々竿を撓らせてくれたものです。
ヤマメ・イワナはと遠の昔から繁殖を繰り返し、世代交代を続けて来た日本の魚です。天然物が釣れた時の感動は、それはもう言葉では言い表せないものがあります。何せ悠久の時を泳いで来た魚なのですから。そんな素晴らしい魚がいるのに、漁協の放流によってそれらを途絶えさせようとされてる今、即刻外来魚の放流を辞めさせる必要があると考えます。今なら小支流に生き残っているヤマメ・イワナが居ますのでまだ間に合います。環境省さんがその明晰な頭脳をもって“渓流”と言う閉鎖された世界を理解し、未来に向けて素晴らしい自然が残せるような策が施されることを願って止みません。