現金の持ち歩きはもう古いと、いま盛んに宣伝されています。
古いといわれるとバカにされたような気になるという、人間の弱みに付け込んだ宣伝方法です。
「こっちにしなさい」では強制感を与えますが、「それ、もう古いよ」には「む、そうか」とつい誘われます。
電車の中でも、本を読む人よりペラペラの箱に見入る人が増えました。
新聞をガサガサ広げる人にはほとんど会いません。
ペラペラの箱には e システムがカッチリ仕込まれています。
友達との話にも、わざわざ e システムが使われます。
e システムを使うと、友達でない人とも、会話、あるいは言いっぱなしのやりとりができます。
便利な e システムにも、あまりよくない特徴があります。
1.記憶と記録が不要で、忘れ癖が増えます。
2.到来と侵入が増えるので、無視する癖がつきます。
3.吟味より選択が手軽なので、非考に走りがちになります。
e システムは、覚えっこなしの、無考空間コミュニティをつくります。
そこは、紙に書かれたことは自分以外のものという感覚の持ち主の集まりです。
かつてあらゆる場面で証拠物件になっていた書面も、見る瞬間だけの感情起爆材でしかありません。
条約を結べば、それが永久に守られるというのは、古びた幻想でしかなくなりました。
頭の強弱さえ、どんなことにどうであれば強いのか、弱いのか、それもわからなくなっています。