紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

青山二郎の眼

2006-10-03 23:17:46 | おでかけ
 昨日の続きで10月1日の話である。信楽のMIHOミュージアムへ企画展『青山二郎の眼』の会場へ行ったところからだった。(*MIHOミュージアムの『青山二郎の眼』のHPには展示品の一部が画像で見られます。青字の「展示一覧」で部屋の配置図をクリックすると、その場所に展示された品の画像が見られます)

 最初の部屋に入った時は、逸品揃いに度肝を抜かれたことを白状しよう。素朴な木喰作・地蔵菩薩像も完璧なフォルムで微笑んでいる。完璧な木喰って、ほとんど自己矛盾みたいだけど、本当にそうなんだもの。壺なども、形の美しさ、肌理の滑らかさ、色のほどよさ、もういうことありませんと平伏するしか無い。

 獅子を象った陶器の枕があり、考え深そうな何かを語りかけたそうな獅子は、骨董禅問答が好きそうな青山二郎にそっくり。気難しそうだけど、ふと気まぐれに面白い事をいったりしそうである。

 最初の部屋で私達が一致して絶賛したのは『黒釉油滴斑碗(油滴天目)』だ。黒地に銀色の斑点がひしめき、銀の星塊が流れるよう。そこの空気が光り輝くようだった。茶碗を取り巻く空気が濃い。信じ難い不思議な美しさで迫って来る。パワフルな魔力を秘めた茶碗であった。

 私はじっくりと鑑賞するので、どんどんH氏に遅れをとっていくが、蓮池で釣りをする人が絵付けされた蔓の取っ手付きのお皿を見て、H氏にぜひ聞いてみたい事ができ、追いかける。

 「お父さん、こっち来て!」
「あんた、そっちの皿の絵見た? ものすごワルそうな顔したネコいたやろ?」
ネコ? 確かにワルそうにほくそ笑んでたけど、中国の名窯、景徳鎮の絵にネコはないやろ、虎です、虎。あ、そうじゃなくて。
「ハスの池で釣りしてる人のお皿やけど、これ見た?」と実物の前まで連れて来る。
「ほら、このひとの顔、中華料理の登録商標のhttp://www.hamamura-gr.com/『ハマムラ』の横顔にそっくりやろ?
「ほんまや!」とうけまくってしまう。このマークを知らない方のために説明すると『ハマムラ』を縦書きして、横顔にしているのだ。ハは眉毛、ムは鼻という具合に。

 次の部屋では、いかにもH氏が好きそうな、虎の絵柄の壺『鉄砂虎鹿文壺』を見て、「これ、ええやん!」と大喜びしていた。何気ない大胆なタッチで飄々とした絵柄は、ほとんど大津絵。うん、たしかに、ええやん。

 赤絵の大皿や唐津の器があるが、そのあたりは私達には引き寄せられるものがない。ようするに「わからない」んだけど。でも銘が愉快な「虫歯」という唐津杯は、一点の茶色いシミや、下膨れの形が虫歯で腫れるほっぺたみたいで面白い。

 わからないといえば、織部もほぼ無縁のものだと思っていたが、『織部片輪車文蓋物』は、蓋をしていると土臭いが、蓋をとって中を見れば、虫、柳、(牛車の?)輪っか、梅、水の流れなど、シンプルな絵柄がかわいい。見飽きない趣がある。

 志野焼は以前から好きだったけれど、加藤唐九郎の『亜幌(アャ香j』という斬新な銘の志野茶碗は圧唐ウれる力強さ。誠にかっこいい茶碗である。

 ところで終盤に差し鰍ゥったところに、さして大きくもない『吸坂手白鷺鉄釉染付向付』というお皿があった。これにはシンプルな鷺が2羽描かれているが、へこんでるような眉毛をして、やたら不機嫌そうな、なのに愛嬌のある2羽なのである。
 「なんかこいつら、『ヘッケルとジャッケル』みたいやなー」。
ご存知ですか? ヘッケルとジャッケル。「よう、兄弟」とお互いを呼ぶカラスの双子(だったかな?)が主人公のアメリカの昔のアニメである。

 H氏は「ヘッケルとジャッケル」ネタに弱い。大好きなのだ。どれくらい好きかと言えば、私が以前ファンシーショップで「ヘッケルとジャッケル」柄のペンケースを見つけプレゼントしたら、驚喜したほど。

 彼は小学校の頃あまりに好きだったので、美術の木工工作の時間にヘッケルとジャッケルの浮き彫りを彫ったらしい。その時の美術の成績は5だったそうだ。もちろん5段階評価である。もののわかった先生だったらしい。

 という訳で、私達の美術鑑賞はこの程度である。『青山二郎の眼』を見ながら、まさか中華料理の『ハマムラ』や『ヘッケルとジャッケル』が話題にのぼる事になろうとは、本人達も予想もしなかった展開だったが。