紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

支持します。

2008-03-06 23:55:12 | 読書
 石田衣良の『うつくしい子ども』を読了。来週の読書会の課題図書なのだったが、久々に好きなタイプの小説だったので、心を打たれながら読んだ。こういう公正で冷静で思慮深い小説が、人気作家の手になって書店に並んでいることを考えると、まだまだ捨てたもんではないな、と思う。

 石田依良さんや伊坂幸太郎さんみたいな男性作家が出てきたのは、それ以前に、やっぱり村上春樹さんの存在があったればこそのような気がする。彼が作った「ケモノ道」に続く人たちなのかもしれない。

 それ以前は「面白いんだけど、なんかちょっとどうしても頷けないなー」「でもこれって私の心が狭いのかなぁ?オンナとしての被害妄想が過剰なのかなぁ?」と、くよくよしてたりしていたんだけど、彼らの出現で、ぱっと心が明るくなった。

 社会に縦横無尽に張り巡らされたバイアスを慎重にくぐり抜け、クリアにピュアでまっすぐな視点がうれしい。筆致はクールなんだけど、内容はアツい。やっと「男と女の暗くて深い川」を越える人たちが出てきたのだ。

 といって彼らの作品の熱心な読者で全て読破、というわけでもない。だからえらそうなことも言えないんだけれど、彼らの姿勢や物の見方には、拍手そして握手である。諸手で支持します。

 一年前の読書会では東野圭吾の『手紙』を読んだから、その疑問符への気持的な解決としても、うれしい読書だった『うつくしい子ども』。でもクールでライトな文章とはうらはらに、内容は絶望的に重い。
 
 「犯罪者の家族」「セクシュアリティ」「学歴(社会)」に渦巻く偏見や差別やナンセンスで本来なら必要の無いはずの自責を見つめる。返す刀で「簡単にコントロールされる」または「コントロールのみによってしか動けない」子どもたちが大人たちに大量生産されてしまう危機感が描かれ、やるせないが、ラストの生き生きした「うつくしい子ども」たちに希望を見いだした。