セントジョンズワート
「セントジョンズワート」
「セイヨウオトギリソウ」
オトギリソウ科。
主要成分:ハイパフォリオン、ヒペリシン
伝統的に、うつ病をはじめ、季節性情緒障害(SAD)、注意欠損性渦動症(ADHD)、不安・不眠症などに使用されてきた。
フラボノール誘導体、キサントン類、プロアントシアニジン類、フロログルシノール類、ナフトジアントロン類などの薬理活性物質を含有する。
近年の研究の結果、フロログルシノール誘導体のヒペルホリンやアドヒペルホリンなどが主要な活性物質であることが明らかとなっている。
ヒペルホリンおよびアドヒペルホリンは、神経シナプスにおけるセロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンなどのモノアミン類の再取り込み阻害作用を示し、セロトニン受容体である5-HT3や5-HT4などに対しては拮抗的に作用する。またヒペルホリンは、神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸やL-グルタミン酸のシナプトソームへの取り込みを阻害する。
抽出物を長期間連用した場合、セロトニン、ノルエピネフリン、ドパミンの再取り込みが阻害され、β-アドレナリンおよびセロトニン受容体(5-HT1と5-HT2)の発現が遺伝子レベルで抑制されることが知られている。(ダウンレギュレーション)。
肝臓の薬物代謝酵素P450の機能に影響を与えることが明らかになっている。セントジョーンズワート300mgを1日3回、2週間服用した場合、塩酸ミダゾラム(催眠鎮静薬、ドルミカム)の血中濃度が50%以上低下することが臨床的に示されている。
同様に、300mgを1日3回、2週間服用させた二重盲検試験によって、スタチン系高コレステロール血症治療薬のシンバスタチンの血漿中濃度が統計学上有意に低下したとの報告がある。いずれの知見も、セントジョーンズワートが薬物代謝酵素P450を賦活したことを示唆している。
三環系坑うつ薬などの坑精神薬に対しては薬理作用を増強する危険性があるため併用禁忌になる。
また、プロテアーゼ阻害剤(インジナビルなどの坑エイズ薬)の作用を著しく阻害する、シクロスポリンの吸収を著しく阻害する、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(フルボキサミン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリンなど)との併用で、体内のセロトニンレベルが過剰になり、セロトニン症候群を発症する可能性があるなどの相互作用が報告されている。
〜アロマとハーブの薬理学 講談社
鮮やかな黄色の花びらを指でこすると赤い液体が指につく。これは花びらの縁に沿って散在する小さな黒い分泌腺から出てくる油分。
適応/用途
軽度うつ病
筋肉痛
単純ヘルペス
2009年に軽度から中等度のうつ病に対する29の臨床試験が行われ。セントジョーンズワートを摂取した患者はプラセボを摂取した患者よりも症状が改善した。
セントジョーンズワートは軽度うつ病に有効な治療法として世界的に認められている。
重い月経前症候群の治療に抗うつ薬が使用されるが、英国のエクセター大学で月経前症候群の患者にセントジョーンズワートを用いたところ、大多数の女性が不安やうつ状態といった症状が50%軽減したと答えた。
セントジョーンズワートのオイル(ヒペリカム・オイル)も、外用剤として高く評価されている。花をオイルに浸して日なたに数週間置いて、ルビー色になったオイルを直接肌に揉みこめば筋肉痛などの痛みを和らげる。また傷やヤケド、虫さされ用の軟膏としても使える。動物実験では、オイルが皮膚の炎症を和らげ、細菌感染に対して抵抗することが確認された。
有効成分の一つであるヒペリシンは、単純ヘルペスの原因とされる単純ヘルペスウイルス1型や、HIVにも作用することがわかっている。
〜メディカルハーブ事典
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