まだ中学生の頃のこと。
釣り友達から釣行を誘われた川がある。
必ずイワナが釣れる小さな渓で、草のトンネルをかきわけての釣りとなる、とのことだった。
釣行計画まで立てていたのだが、急遽取りやめとなった。
その後もその川のことは話題になったが、結局その川への釣行は果たせなかった。
しばらくして、その友人から残念な事を伝えられた。その川が工事により水路のようにされ、釣りができるような川ではなくなるということだった。
数年後その友人は、遠方に越していった。
川の名前だけが記憶の片隅に残った。
その川に行ってみた…
本当に小さな川だ。
上流部には農業集落がある。谷間にしては平坦で、水田がある。コンクリートで護岸されたその川は水田の間を真っ直ぐ流れ、稲に水を供給している。川底は変化に乏しく、水量も僅かだ。何も期待できない。
下流部はかなりの斜面だ。その付近にも民家があり水田がある。比較的新しい家も多い。その区間は3面コンクリート化されていて本流につながっている。
昔、友人から聞いた河川工事は上流部分のことなのか下流部分のことなのか、今となっては、私には分からない。
ただ、訪れようとしていた川は、伝え聞いたように、すっかり変わってしまっていたことは、確かなようだ。
しかし、何故か、下流部と上流部の間の100m程の区間だけは、護岸工事されていない。
かなりの急斜面で大きな石がたくさんある。その隙間を縫うように少しの水が流れている。
ここなら、中学生の私が狙おうとしていたイワナの末裔が居るかも知れない。
前日に夕立が降った日の朝なので、条件は悪くはないはず。少し濁っているのもその為なのだろう。
周りの草が伸びていて釣りにくいが、すぐに反応があった。
綺麗なイワナだ。
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