(原題:Dreamgirls)ドラマ面では見るべきものはない。各キャストも深みのある演技なんかしていない。演出も凡庸の極みだ。ならば何があるのかというと、音楽のみである。
60年代のデトロイトから世に出た女性三人組のグループを追ったストーリーの中で、往年のモータウン・サウンドがてんこ盛りに挿入される。特にメンバーの一人であるジェニファー・ハドソンの歌声はパワフルかつ伸びがあり、観客を圧倒。しかし、この手の音楽に興味のない者にとっては関係のない話だ。
もとより作劇は脆弱であるため、ソウル・ミュージックの門外漢をも映画の中の音楽に引き込むような仕掛けも力業もない。さらに、ゴリゴリのブラック・ミュージックを追求しようとするハドソン演じるエフィーと、白人のマーケットも視野に入れたマネージャーのカーティス(ジェイミー・フォックス)の確執も、完全に“語るに落ちる”ような話だ。当時の音楽シーンに思い入れがないとピンと来ないのではないか。
個人的には豊かな声量で押しまくるハドソンよりも、抜群のルックスとキュートな歌声で魅了するビヨンセ・ノウルズの方が断然好きだし、彼女をメインヴォーカルに据えようとするプロモーターの姿勢は大いに納得する。それに対するハドソン側の言い分が“自分の方が黒人音楽の本流だ”みたいな感じだけでは、広範囲な支持は集められないだろう。
それにしても、私が観た映画館(某シネコン)の音の悪さには参った。高音は歪みっぽく、ヴォーカルも割れまくり。低音なんてほとんど出ていない。昨今の米国の、この手のディスクの録音水準から勘案するにサントラがそれほど音が悪いわけはないので、問題は劇場側だろう。近頃はホームシアターが普及し、画像はまだフィルムに敵わないまでも音響に関してはカネのかけ方と使いこなし次第で相当のレベルまで持って行くことが出来る。対して一般の劇場がサウンド面でホームシアターに後れを取ってどうするのだろうか。何とか手を打たないと、映画館での鑑賞のアドバンテージは限りなく小さくなる恐れがあると思う。