芳香をテーマにした作品なら、映画「パフューム」よりもこの小説の方が数段面白い。並はずれた嗅覚によって「調香師」として世界的な名声をおさめ、さらには他人の心を操る香水をも作り出し、反社会的な野心を抱く男と、女流ノンフィクションライターとの“対決”を描くホラー篇。
正直言って小説としては出来が良くない。オカルト的なテイストを詰め込みすぎで消化不良を起こしているだけではなく、後半は明らかに収拾がつかなくなり、ヤケクソ的な終わり方で読者を唖然とさせる。キャラクターがそれほど魅力的でないのもマイナスで、何より“劇中劇”である犯人が殺人を告白した書物の紹介が不必要に長く、全体的な作劇のバランスを著しく欠いている。
しかし、それでもこの本が捨てがたいのは、“匂い”がもたらすイメージの描写が非凡であるためだ。些細な幻覚がやがて視界すべてをひっくり返すような異世界へと変貌してゆく様子を、たたみかけるような筆致で綴り、読む者を圧倒する。スケール感もたっぷり。筋書きを整理して脚色すれば、ハリウッドで映画されてもおかしくないほどのネタだ。映画「パフューム」も、このぐらいの大風呂敷を広げて欲しかったのだが・・・・。
正直言って小説としては出来が良くない。オカルト的なテイストを詰め込みすぎで消化不良を起こしているだけではなく、後半は明らかに収拾がつかなくなり、ヤケクソ的な終わり方で読者を唖然とさせる。キャラクターがそれほど魅力的でないのもマイナスで、何より“劇中劇”である犯人が殺人を告白した書物の紹介が不必要に長く、全体的な作劇のバランスを著しく欠いている。
しかし、それでもこの本が捨てがたいのは、“匂い”がもたらすイメージの描写が非凡であるためだ。些細な幻覚がやがて視界すべてをひっくり返すような異世界へと変貌してゆく様子を、たたみかけるような筆致で綴り、読む者を圧倒する。スケール感もたっぷり。筋書きを整理して脚色すれば、ハリウッドで映画されてもおかしくないほどのネタだ。映画「パフューム」も、このぐらいの大風呂敷を広げて欲しかったのだが・・・・。