元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ローン・レンジャー」

2013-08-30 06:22:40 | 映画の感想(ら行)

 (原題:THE LONE RANGER )終盤の列車上でのアクションは凄い。通常、鉄道を舞台装置に使った活劇編では、使われる列車は一本である。まあ、二本以上登場させるケースも皆無ではないが、それはすれ違う際の切迫感の演出に使ったり、あるいはまったく違うロケーションに配置して時間的な緊迫感を高めるために使用する場合に限ったことだと思っていた。しかし、この映画は立体交差しながら併走する二本の線路にそれぞれ列車を一本ずつ配備し、走行中に登場人物達がその二本を“行き来”しながらアクションをこなすという、画期的な方法論を提示している。

 つまりは活劇空間が三次元的に拡大するということで、スペクタクル度の乗数効果を極限にまで高めているのだ。アクションの段取りやアイデアもその舞台にふさわしく、緻密に考え抜かれている。ただ派手に迫るだけではなく、観る側の予想を裏切る仕掛けが多数配置されており、文字通り息をもつかせぬ展開で圧倒される。さらにはバックに流れるのが勇壮なロッシーニのウィリアム・テル序曲なのだから、何も言うことは無い(笑)。

 さて、この活劇場面を除くと、本作は大したシャシンではない。1933年に始まったラジオドラマを皮切りに、さまざまなメディアで取り上げられてきた西部劇のヒーローものだ。黒いマスク姿の正義のヒーローとインディアンの悪霊ハンターが悪い奴らを懲らしめるという筋書きで、今回が4回目の映画化になる。

 何と言っても監督がゴア・ヴァービンスキーだ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」を思い起こすまでもなく、大味な作風には定評(?)がある。

 無駄に長い上映時間の中、メリハリに掛ける展開がダラダラと続く。悪霊ハンターのトントの生い立ちや、ローン・レンジャー誕生の経緯はもちろん描かれているが、それがまあキレもコクもドラマティックさも無い平板なもので、しかも愚直に一から十までエピソードを羅列しているだけなので、いい加減飽きてくる。

 そもそも、冒頭に示される老いたトントが幼い少年に語って聞かせるというモチーフからして無駄だ。ほとんど存在する意味を見出せず、単なる上映時間の水増しだと思われても仕方がない。

 ジョニー・デップをはじめアーミー・ハマー、ヘレナ・ボナム=カーターと各キャストは頑張っているが、内容がこの程度では、それが報われているとは言い難い。要するにこの映画、見応えがあるのはラスト近くの列車アクションだけであり、それ以外は無視してもいっこうに構わない。極端な言い方をすれば、最初の方だけを観て途中退場し、適当にロビーで時間を潰して終盤になってから再入場して列車活劇のみを楽しめばそれでOKだとも言える。
コメント
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