元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「悪の法則」

2013-12-09 06:35:33 | 映画の感想(あ行)

 (原題:The Counselor )つまらない。“何かあるぞ”と思わせて、実は“何も無い”という困ったシャシンである。せいぜいが“人間、ヤバいことに手を出さずに地道に生きるのが一番”といった退屈な道徳論もどきが転がっている程度。リドリー・スコット監督もいよいよヤキが回ったようだ。

 主人公はメキシコ国境付近の町に住む野心的な弁護士。魅力的な婚約者もゲットし、人生の絶頂にあると思われた。さらなる欲望に駆られた彼は、知り合いのウサン臭い実業家や裏社会のブローカーと手を組み、ハイリスクなビジネスに乗り出そうとするが、ここから雲行きが怪しくなってくる。彼らの企みは身近な者に全て筒抜けになり、やがてカネの臭いをかぎつけたメキシコの麻薬カルテルの介入を招いてしまう。

 スタイリッシュな画面造型と思わせぶりなセリフの応酬により、ハイ・ブロウな雰囲気を醸し出そうとしているようだが、物語の底は浅い。そもそも、主人公はどうしてこんな危ない橋を渡ろうとしたのかサッパリ分からない。職業柄、荒くれ共と数多く渡り合っているはずで、ヘタに闇社会に関わるとどうなるか一番よく理解しているはずなのだが・・・・。

 しかも、その段取りがとことん間抜けで、海千山千のビジネスマンや百戦錬磨のヤクザ者といった触れ込みの二人の仲間も、単なるデクノボーにしか見えない。これでは“どうぞ始末して下さい”と言っているようなものだ。

 冒頭近くのダイヤモンドに関するウンチクや、主人公の“知り合い”達が滔々と語る処世訓じみたセリフといった、メタファーめいた小ネタは全てドラマの核心から大きく外れ、話は退屈な結末に向かってノロノロと進むのみ。面白さのカケラも無い。

 斯様に話自体は実に冴えないのだが、どういうわけかキャストだけは豪華だ。マイケル・ファスベンダーをはじめペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム、ブラッド・ピットという主演級が5人も顔を揃えている。ところが目立った見せ場は皆無に等しく、全員が可もなく不可もなしのパフォーマンスに終始。見所を強いて挙げれば、キャメロン・ディアスのノーパン180度開脚ぐらいだ(爆)。

 結局、印象に残ったのはメキシコ・マフィアの残忍な遣り口だけ。相手が当局側の人間だろうと無辜の市民だろうと、邪魔な者は容赦なく抹殺してゆく。こんな奴らが我が物顔で闊歩している国に生まれなくて良かったと、つくづく思う。もっとも、そんなことはわざわざこの映画で語ってもらわなくても、関係資料をチェックすれば済む話なのだが(暗然)。
コメント
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