元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「眠狂四郎無頼剣」

2015-05-15 06:23:21 | 映画の感想(な行)
 昭和41年大映作品。御馴染みのシリーズの第八作目で、このシリーズの中でも評価は上位に入る。実際に見応えがあり、このような時代劇をコンスタントに作り続けていた当時の大映の勢いを感じられる出来だ。

 狂四郎(市川雷蔵)は後見人で老中・水野忠邦の側用人である武部仙十郎から、大塩平八郎の残党が不穏な動きを企てていると聞かされる。折しも大手の油問屋に強盗が入り、町中では火焔芸を披露する怪しい芸人たちがうろつくなど、文字通りキナ臭い空気が江戸中に蔓延していた。



 どうやら背後には大塩が生前考案した石油精製法に関する利権が絡んでいるらしく、それをめぐって油問屋が組織したゴロツキ集団と大塩に縁のあったテロリスト達が暗躍している図式が仙十郎の調べによって明らかになる。

 あまり関わりたくない狂四郎だったが、ひょんなことから件の芸人一座の一人であり事件のカギを握る勝美(藤村志保)を助けることになり、否応なしに陰謀に巻き込まれていく。

 伊藤大輔による脚本は実に密度が高く、事件の背後には数々の事実が内包されているものの、決してゴッチャになることはなく、整然と配列されていることに感心した。当然のことながら狂四郎は手掛かりを追うのに手一杯で、今回は女といちゃつくヒマもないのは御愛嬌だが(爆)、良く出来た犯罪ドラマの形式を踏襲しているのには感服した。

 天知茂扮する敵の首魁も狂四郎と同じく円月殺法を使うというモチーフは出色で、二つの円月がゆっくり廻るクライマックスは盛り上がる。

 三隅研次の演出は洗練されており、画面構成は堅牢そのもの(しかも、端正)。シネスコ画面を軽々と使いこなしているのが嬉しい。そしてもちろん観る者を圧倒する雷蔵と天知のカリスマぶり。観てよかったと思える逸品である。
コメント
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