元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「EMMA」

2015-07-21 06:20:01 | 映画の感想(英数)
 (原題:SKYGGEN OF EMMA )88年デンマーク作品。子供をダシに使ったサスペンス編としてはリュック・ベッソン監督の「レオン」(94年)やジョン・カサヴェテス監督の「グロリア」(80年)などが挙げられるが、本編も小品ながら気の利いた出来だ。

 1930年代のコペンハーゲン。11歳のエマは裕福な家庭に生まれ、甘やかされて育ってきた。折しもアメリカでは、大西洋無着陸飛行に成功したチャールズ・リンドバーグの息子が誘拐されて殺されたという事件があり、デンマークにもそのニュースは伝えられて話題になっていた。そこでエマは両親がどの程度自分を気に掛けているかを試すため、家出を思い付く。



 エマは知り合いの子の親が経営する安食堂へ身を隠し、やがてその近くに住む貧しい中年男メルテと出会って仲良くなる。そして、何かと世話を焼いてくれた彼への恩返しのつもりでエマはある小さな犯罪を決行するのだが、それが思わぬ大事に繋がり、メルテを窮地に追い込んでしまうのであった。

 エマが孤独なら、同僚からさえ蔑まれて生きるメルテも孤独感に苛まれている。2人が心を通わせて親子のように親密になっていくのに、そう時間は掛からない。エマは利発だが所詮は子供で、自分の言動がどういう結果になるのかは分かっていない。だが、それは家事や育児を放棄して遊び呆けている彼女の母親の愚かしさにくらべればずっとマシなのだ。この映画では、女はエマを除いては誰も感じが良くなく、嫌われているように見えるのが面白い。

 セーアン・クラーグ・ヤーコプセン監督の作品を観るのは初めてだが、話の面白さで見せようとしているあたり、かなり手慣れた職人監督といった印象を受ける。特にドラマの後半に挿入される下水溝での逃亡シーンは実にスリリングで盛り上がる。エマを演じるリーネ・クルーセは達者な子役だが、メルテに扮したボリエ・アールステットの抑えた演技も光る。時代考証も興味深く、観て損は無い佳作と言えよう。
コメント
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