元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「コットンクラブ」

2020-01-19 06:35:50 | 映画の感想(あ行)
 (原題:The Cotton Club )84年作品。フランシス・フォード・コッポラ監督によるギャング物という鉄板の御膳立てにもかかわらず、出来の方は大したことがない。しかし、贅を尽くしたセットと念の入った時代考証、そして煌びやかなショーを観ているだけで、何となく入場料のモトは取れたような気になってしまう。当時は酷評されたものの、今から考えるとそれなりの見応えはあったと思う。

 1920年代、禁酒法時代のニューヨークのハーレムにそそり立つコットンクラブは、超豪華なキャバレーとしてセレブたち御用達のスポットになっていた。しかし、この店を仕切っていたのは大物ギャングで、その利権をめぐっての他組織との抗争が後を絶えなかった。ある日、コルネット奏者兼ピアニストのディキシーはギャングのボスであるダッチを爆弾騒ぎの際に救う。そのおかげでダッチから一目置かれるようになったディキシーだが、一緒に救ったダッチの情婦の女性歌手ヴェラとも仲良くなる。



 一方、プロのタップダンサーになるのを夢見るウィリアムズは、兄のクレイと組んでコットンクラブのオーディションを受けて合格する。早くも人気を獲得した彼は、そこの専属歌手であるリラを好きになる。実在のナイトクラブを舞台にした愛憎劇だ。

 いろいろなキャラクターが出てくるが、どれも魅力に乏しい。コッポラが得意にしているはずのギャング同士の諍いも、かなり薄味だ。ジャズ、ギャング、恋愛沙汰、業界の裏話など、多数の要素が未消化のまま盛り込まれており、全体的に散漫な印象を受ける。ラストの処理は賑々しくはあるが、ドラマを放り出したような感じも受ける。

 しかしながら、映画の“外観”はかなり作りこまれている。スティーヴン・ゴールドブラットのカメラがとらえた、クラブ内部の妖しい美しさ。ミレーナ・カノネロによる見事な衣装デザイン。ジョン・バリーの流麗な音楽。主演のリチャード・ギアとダイアン・レインの存在感はもとより、見事なタップを披露するグレゴリー・ハインズや、ボブ・ホスキンス、ニコラス・ケイジ、ジェームズ・レマーと、役者は揃っている。さらにトム・ウェイツまで顔を出しているのだから嬉しい。あの「地獄の黙示録」(79年)を撮ったコッポラの映画だと身構えてしまうと肩透かしを食わされるが、これはこれで存在価値はあるとは思う。
コメント
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