(原題:極限職業)設定はすこぶる面白いのだが、演出と脚本のレベルがあまり高くないため、終わってみればB級活劇の域を出ていない。ギャグの繰り出し方も泥臭く、全編通してあまり笑えず。とにかく、こういうネタではもっと盛り上がって然るべきだ。
コ班長率いる警察署の麻薬捜査班は、エネルギッシュに立ち回っているわりには検挙率は最低で、手柄を立てなければ解散させられるというピンチに陥る。班長は国際麻薬シンジケートの構成員が広域暴力団の事務所に出入りしているという情報をキャッチし、事務所前で張り込みを開始。24時間体制で任務を遂行するため、アジトの前にある唐揚げ屋を引き継いで偽装営業をすることになる。
ところが人一倍鋭敏な舌を持つマ刑事の作るチキンが大評判になり、店は連日多くの客が詰めかける。いつしか班員は店を切り盛りすることに手を取られ、捜査は後回しになり、犯人逮捕の絶好の機会も逃してしまう。本国の韓国では空前のヒットを記録したらしい。
冒頭の犯人追跡劇の緊張感のなさに悪い予感がしたが、映画が進むとそれは的中した。描写にキレが無く、ドラマが弾まない。ファンサービスのつもりかどうか知らないが、クサいお笑い場面が多数挿入され、それがまた物語の進行を阻害する。それでもチキン店をオープンさせるまでの前半は題材の面白さで何とか引っ張っているが、犯人と対峙しなければならない中盤以降の展開が弱体気味だ。
畳みかけるような筆致で一気に押し切らなければならないところを、コ班長の家庭事情とか、班長と対立するやり手の捜査チームとか(粋がっているわりには腕っぷしが弱いのも脱力する ^^;)、署長のボケぶりとか、余計なモチーフが盛り込まれており作劇に芯が通っていない。ラスト近くには大々的な乱闘場面もあるのだが、立ち回りの段取りがよくない上に各人の格闘スキルがさほど高くないので、観ていてシラけてしまった。
これは、たとえば日本で大ヒットした「踊る大捜査線」シリーズを外国に持って行ってもあまりウケないと思われるように、彼の国で観客を大量動員した作品が我が国で通用するとは限らないということだろう。イ・ビョンホンの演出はライト感覚だがどうにも垢抜けない(有り体に言えば、テレビ的だ)。
主演のリュ・スンリョンをはじめ、オ・ジョンセ、イ・ハニ、シン・ハギュンといったキャストは皆良いキャラクターは持っているとは思うが、この製作陣では活かしきれているとは思えない。ハリウッドでのリメイクが決定しているという話もあるが、ヨソの国の映画を再映画化して成功した例は無いとはいえ、今回の場合はシッカリしたスタッフを集めれば“本家”を上回ることが出来るかもしれない。