(原題:狂怒沙暴 HIDDEN STRIKE)2023年アメリカ=中国合作。ジャッキー・チェン主演のアクション大作で、撮影は2018年に完了していたらしいが、“諸般の事情”によってアラブ首長国連邦など一部の国を除き劇場公開されていない。代わりに2023年7月からNetflixが配信を開始しており、それをチェックした次第だ。
イラクで油田開発を進めていた大手中国企業の精製所が突如武装集団の襲撃を受け、技術主任のチェン教授らが誘拐されてしまう。警備を担当していたセキュリティ・カンパニーの司令官であるルオは、人質を奪還する任務に就く。一方、武装集団に加わっていた元特殊部隊のアメリカ人クリスは、組織の目的が石油資源強奪であることを知らされた挙げ句、ボスによって行動を共にしていた弟を殺されてしまう。そんな彼は偶然ルオと知り合い、反目し合いながらも共闘することを決意。人質奪還のため武装集団に立ち向かう。
どうも物語の前提が釈然としない。いくらルオが手練れだといっても、公安や軍関係などの国家機関の所属ではなく警備会社の一員に過ぎない。それが国際関係にも影響を与えそうな大暴れを披露するというのは、無理がある。クリスにしても、いくら自分が住む村の子供たちの生活を守るためとはいえ、当初は見るからにテロリストみたいな連中と一緒になっていたのは説得力を欠くだろう。
しかしそれでも、活劇シーンが始まってしまうとあまり脚本の瑕疵は気にならなくなる。ルオに扮するジャッキーのパフォーマンスはさすがに寄る年波には勝てず、全盛時のキレは望めない。だが、アクションの段取りは悪くないし、格闘場面が続いて画面が冗長になりそうになると派手な爆破シーンやカーチェイスが挿入されるのも賢明だと思う。
クリスを演じるジョン・シナは元々プロレスラーだけあって、体術もサマになっている。テクニックよりもパワーを重視した立ち回りは、ジャッキーとは好対照とも言えよう。また、ラストのNG集では下ネタの連発で笑わせてくれるし、本当に憎めない奴だ。スコット・ウォーの演出は取り立てて才気は感じられないが、無難な展開ではある。
ヒロイン役のマー・チュンルイをはじめ、ジァン・ウェンリー、ピルー・アスベック、ティム・マンなど顔ぶれはあまり馴染みは無いが、それぞれ良くやっていると思う。それにしても、ジャッキー・チェンはあとどのくらいアクション映画に関われるのだろうか。くれぐれも身体に気を付けて、出来る範囲で仕事をして欲しい。