谷中の“町人”にきたます。
この店は、『ラーメンのある街へ 大衆食の裏路地へ(旅チャンネル)』の第一回放送の最後に紹介された店です。
もちろん、番組を手がけているのは、我らが尊敬する名誉隊長、居酒屋のオヤジさま(すいません。一部のヒトにしか判りませんね)。
どんな店かは、素敵な写真のHPがあったので、そちらから見てみてね。
【谷中町人】←ここ。
店内はものすごく凝ってます。
ぼくが一番気にいったのは、
これ。
かなり通とみた。
映画にもなったんだよ。
まずはビールでングングング…。
お通しをつまみながらメニューを開くと……
わけのわからん食べ物がたくさん。
おいらん焼きって???
とりあえず、「とんび」を注文。
それがこれ。
イカの口ばし?なんだそうです。
それでは目的のものを注文してみましょう。
『となりのトトロ』の真っ黒くろすけです。
実は、これ海苔。
正体は梅入り焼きそば。
これがヤミツキになりそうなぐらい旨い。
最後は〆で、
カニ汁を飲んで仕上げました。
いい店だぁ。
ひょっとして穴場?
隠れ家にどーぞ。って感じ。
それでは、またもや兄に登場してもらって、店の紹介をしていただきましょう。
では、どうぞ。
【太田和彦の居酒屋ひとりカウンター】
ゲンダイネット2005年12月20日 掲載
画商、大使令嬢、美大生が静謐を求めて
日暮里駅北改札口の西口を出て先の十字路を左へ。初冬の夜、古い寺町の通りはひっそりと暗く、夜目に朝倉彫塑館のシルエットがそそり立つ。明りのもれる「赤塚べっ甲店」では職人が夜なべのようだ。
広い通りを右に折れると「町人」の印象的なステンドグラスのランタンがぼおと見えた。
店は手前に大机ひとつ、中に小さなコの字カウンター、奥は丸机。カウンターに席をとった。
店中をすき間なく埋め尽くす古いものがすごい。
ランプ、柱時計、お面、如雨露(じょうろ)、タイプライター、ランドセル、カンテラ、地球儀、風船、壺、古皿、何かの鉄の道具などなど。古美術にあらず、骨董にあらず、はっきり言ってガラクタ……。
「よく集めたねえ……」
「いや僕じゃないんですよ、先代が」
ニットの帽子をかぶるマスターはここの常連だったが、先代女性店主に店を閉めるけれどよかったらやらないと誘われ、四日めに「やる」と返事したそうだ。
「まあ即決ですよ」
フリーでライターの仕事をしているが、昔からやってみたい職業が二つあり、その一つが居酒屋の主人だったという。
「もう一つは?」
「古本屋の主人」
「そのままの格好で務まるよ」
「そうだな、あはは」
人好きのするマスターはもう何十年もここに座っているような雰囲気だ。さて何にしようかな。
「町人揚って何?」
「いわしつみれの素揚げですが、今日はいわしが入らなくて」
では、と「はたはた」を焼いてもらうことにした。貼紙に「秋一番、日本酒がうまい」とある「正雪・秋あがり」の燗はとてもおいしい。
こんがり焼けた二尾のはたはたは身離れよく、時季の味だ。秋田で知ったこの魚も東京で食べられるようになった。
「客はやっぱり芸大が多いの?」
近くは東京芸術大学。音楽部も美術部もよく来るという。私は芸大をめざして果たせなかっただけに思い入れがわく。
太い丸太をカスガイで素朴に組んだ造り。廃舟材の机。おもちゃ箱をひっくり返したような店内は、いかにも芸術、美術の学生好みだ。価値の定まったものを整然と並べるのは老人芸術家のすること。若い美大生は自分にしかない感性で、一見ガラクタに命を吹き込む。乱雑、渾沌こそ若さの美学だ。私は美術を志した高校時代を思い出した。美術部の汚い部室もこんな風だった。
学生のみならず、代々木上原に住む高名な外国人画商もよく来るそうだ。何かのパーティーのあとなのか、有名な現代美術館の館長とヨーロッパ各国大使のお嬢さん達が、カクテルドレスで来たこともあったという。それはよくわかる。美術系はこういう店が好きだ。ここには美術の原点があるからだ。そういう居酒屋が、一歩外は店など何もなく、古い民家がひっそりと続く谷中の、夜の暗さ、静けさのなかにあるのが最高だ。
最近、編集者とか、パリに五年住んでたというような独身女性が谷中に越してくるケースが増え、仕事を終えて家に戻ってからゆっくり飲みに来るという。この店の静かで温かい居心地が夜の眠りにつくまでの時間をすごすのによいのだろう。酒も肴もさほど変わったものがあるわけではないが、これこそ居酒屋だとの思いを深くした。
居酒屋のオヤジさまの行きつけのBARがすぐ近くにありました。
いや、秩父の方じゃなくって。