第9話
『恋愛できない2人が本当の恋をした
高等遊民誕生の秘密と結婚式への思い』
依子と巧はお互い相手を変えてデートすることになった。
依子は事前に鷲尾の情報収集。
鷲尾も持っている数字が自分の好きな数字だったため、
テンションが上がりまくる。
依子は鷲尾と交際することになったと巧に電話で連絡。
巧も佳織と付き合うことになったと知らせた。
鷲尾の数字のことを巧に興奮気味に話す依子。
「藪下さん!! 君はまた同じ過ちを繰り返そうとしている。
僕は全部素数だったんだろ? その僕に恋をしたか?」
「しませんでした・・・」
「またデータにときめいちゃってるじゃないか!!」
「私としたことが・・・数字の魅力につい負けてしまう。
どうしよう・・・急に明日が不安になってきた・・・」
「落ち着きましょう。」
「たっ、体育会系男子とのデートについて至急情報収集し、
入念な準備をします!」
「待て! 早まるな! 君はそれが駄目なんだよ。」
「なんですって?」
「僕からこれだけは忠告しておく。
情報収集とは入念な準備とか一切やめるんだ!」
「どうしてですか?」
「君は自分から何かしようとすると必ず暴走する。
いいか? 鷲尾くんは既に君に惚れているんだ。
君から何かする必要はないんだよ。」
「なるほど・・・」
「全部鷲尾くんに任せればいい。
君は何の準備もせず普段のありのままの藪下依子で行けばいいんだよ。」
「ありのままの藪下依子・・・
そういえば鷲尾さんも言っていました。 そのままでいいと。」
「そうだろ? 君は頑張っちゃいけない人だ。」
「頑張ってはいけない・・・」
「恋なんて頑張ってするもんじゃないだろ。」
「盲点でした。」
「準備するな! 予習もするな! すぐに寝ろ!」
「分かりました。 そうします。
谷口さん色々とありがとうございました。」
「うん。 それから・・・もう僕に電話しない方がいい。
こうやって前の彼氏に連絡するのはルール違反だ。」
「そうですね。 もう連絡はしません。
谷口さんも佳織さんとうまくいき結婚ができるように遠くで祈っています。」
「君も30歳までに結婚するという目標を諦めるのは早いぞ。
まだ誕生日まで1ヶ月あるんだから。 じゃあ、遠くで健闘を祈ります。」
「感謝申し上げます。 では・・・さようなら。」
「さようなら・・・」
電話を切った後、巧が呟く。
「ジャージで行く可能性があるな・・・いや、さすがにそれはないか。」
すぐに寝ようとした依子だったが、
予習なしの状況に耐えられず眠れない。
結局起きて情報収集してしまった。
翌朝、巧の予想通り依子はジャージで待ち合わせ場所へ。
爽やかな笑顔で登場した鷲尾は、
依子の格好なんか気にもせず、依子の手を取り走り出す。
メガネをコンタクトし、美容院で髪をセットしメイクも施す。
そしてお洒落なコーディネイトを選らんでプレゼント。
可愛く仕上がった依子を自慢したい鷲尾。
人力車に乗って車夫さんにまで自慢する。
が、依子はそれどころじゃなかった。
人力車に揺られ気持ち悪くなり、昨夜大量摂取した食べ物が・・・
鷲尾が買ってくれたバッグにリバース!!
デートは中断となる。
一方、巧の方は外でデートできると思って
折角お洒落してきた佳織を自分の部屋へ上げる。
部屋で巧オススメの映画を鑑賞し、
巧オススメの本を読ませご満悦になった巧。
しかし佳織は不満で巧を無理矢理外へ引っ張り出す。
カラオケに連れて行かれ、巧が昭和歌謡を歌っていると、
佳織のヤンキー友達が乱入し、その場は一気にヤンキー色に。
なんやかんや巻き込まれEXILEを歌うハメになった。
疲れきった巧は依子に電話。
依子も大変なことになっていたと知りホッとする。
次回のデートの約束をしたと言う依子にまたアドバイスする巧。
「いいですか? ここからが正念場ですよ。
この状況は奇跡と思った方がいいんだ。
あんな完全無欠な好青年が君のような変てこな女・・・
個性的な女性に惚れているなんて、
もう二度と来ないチャンスかもしれない。」
「分かってます。 次回は必ずうまくやります。
今回の失敗を冷静に分析し傾向と対策を十分に練って―」
「だから、それが違うんだって! もう分析するな。
『Don't think. Feel』 By.ブルース・リーだ。」
「Don't think.・・・Feel・・・」
「考えるな。 感じろ。
ただ心を開いて鷲尾くんに全部委ねるんですよ。」
「心を開く・・・分かりました。
もう準備しませんよ。 これっぽっちも頑張るもんですか!」
「あなたが頑張らない人間になれた時、恋ができるでしょう。」
「頑張らない人間になれるよう、頑張ります!!」
「ん?」
「谷口さんもまた心を開く必要があると思いますよ。」
「えっ?」
「あなたの問題点は自分の趣味嗜好の世界しか認めないことです。
相手を好きになるには相手の趣味も受け入れることです。」
「そりゃそうだけど・・・ヤンキーの趣味なんて僕にはとても・・・」
「できますよ。 ズリ落ちたジーンズを穿き、
チョビヒゲを生やし、チェーンを振り回すんです。」
「君のヤンキー像は滅茶苦茶だな。」
「そしてマスターするんです。 エクソシストを。」
「EXILEね。」
「もう電話しない方がいいです。」
「しない方がいい。 健闘を祈る。」
「さようなら。」
「さようなら。」
2人はアドバイスを受け入れ、相手の好きなことを学習ように。
その成果を何故か電話で報告しあう巧と依子(笑)
鷲尾が頻繁にデートを誘うようになり、
鷲尾の想いに応えたい依子はいつお誘いがきても大丈夫なように、
毎日勝負服を着て身なりを整える。
こうなると仕事よりデート優先のようになり唖然とする。
そのせいで仕事にもミスが出てしまいショックを隠せない依子。
巧も母のお金でEXILEのものを買っていたが、
援助を打ち切られ蔵書を売る準備をして我にかえる。
「どうですか? 佳織さんとは順調ですか?」
「・・・・・分かりません。 藪下さんは鷲尾くんと順調ですか?」
「・・・・・分かりません。・・・やはり恋愛とは難しいものですね。」
「・・・そうですね。」
2人の疲弊はハンパなかった。
嘘をついて誘いを断るようになる。
異変に気づいた父は依子を訪ね、遂に携帯電話を見てしまう。
すると連日に渡って巧と連絡を取ってることが判明!!
その情報は鷲尾へ伝わり、宗太郎と佳織も知ることに。
佳織と鷲尾はそれぞれ無理矢理デートに誘い、
スケートリンクで巧と依子を会わせた。
立会人として宗太郎も。
「鷲尾と佳織に相談されて俺がセッティングした。
全部ハッキリさせようじゃねぇか!」
「裏でコソコソやられるの一番ムカつくんだよね。
結局2人はさ、お互いが忘れられないんじゃないの?」
「俺は初めから2次元オタのお前が
佳織に惚れる訳ねぇと思ってたんだ。 妹コケにしたら許さねぇぞ!」
「依子さん、自分は依子さんが望むなら悔しいけど身を引きます。
本当の愛とは相手の幸せを願うことだから。」
「私も。 巧くんが幸せになるなら別れてあげるよ。 2人を祝福するよ。」
お互い好きなんじゃないのかと聞かれキョトン。
デートを避けるようになったのは
恋してる自分が不本意だからだと2人。
「楽しいんですか? 自分らとデートしてて。」
「楽しいって言ってるじゃないですか!!」
「滅茶苦茶楽しいよ!!
デートがこんなにも楽しいものだなんて
この人と付き合ってる時は思いもしなかった!」
「左に同じ。
この人としていたことは一体なんだったのかと思いました。」
「楽しいから困ってるんだ!!」
「楽しすぎるから困ってるんです!!
次はいつ会えるだろう。
今度はどこへ連れてってくれるんだろうって
鷲尾さんの電話ばかり待ってしまって仕事が手に付かない・・・情けない。」
「貧乏画家の佳織にカラオケ代を出させるのは可哀想だと思って
アルバイト情報誌を開いてた・・・
この僕が働こうとしているなんて情けない!」
「折角規律正しく誰にも恥ずかしくない生活を送ってきたのに。」
「折角誇り高き高等遊民の生活を送ってきたのに。」
「このままでは私が最も軽蔑する無能な駄目OLになってしまう!」
「このままでは教養の欠片もない庶民に成り下がってしまう!」
「鷲尾さんのせいですよ!!」
「佳織のせいだぞ! どうしてくれるんだよ!!」
依子と鷲尾、巧と佳織は抱きしめあう。
勢いに乗って巧との結婚のために
予約していた式場へ鷲尾を連れて行き、
挙式を要請した依子でしたが鷲尾の返事はNO。
「自分は・・・自分と依子さんのための式場で結婚したいです。」
キャンセルすると違約金が80%発生してしまうってことで、
この会場を巧の両親・留美と努に譲ることになった。
挙式当日、てんやわんやあったけど全員揃った。
みんなの気持ちがひとつになったところで、
依子は巧に高等遊民の生活を送ることになったきっかけを
話してみてはどうかと。
小説家になるのを諦め、就職試験の面接に行った巧。
面接官たちに教育評論家である努のことをバカにされ、
嘲笑われたのに一緒になって合わせて笑ってしまった自分が許せなかった。
「帰りに公園のベンチに座ったら立てなくなった。
涙が止まらなくなって・・・何時間も立ち上がることができなかった。
通り過ぎる社会人がみんな何だかとてつもなく凄い人たちに見えて・・・
眩しくて・・・僕には無理だ・・・こんな人たちには絶対なれないって思った。
・・・それだけ。 くだらないだろ?」
「・・・・・くだらんな・・・・・実にくだらん・・・」
「あなた。」
「トイレだ!」 (>ω<。)
「努さん・・・失敗などしていないと思います。
あなたは 巧さんの教育に失敗などしていなかったと思います。
巧さんは心の優しい方です。」
その後、留美が投げたブーケを取ったのは巧と依子だった。
巧と依子は本当に恋をしているのか?
と、あたしは疑っている(笑)
2人は相手のことを理解してあげてるのに・・・
まぁ、だからといってそれが恋とも限らないんだけどね(‐∀‐;)
最終回、どうなるのか見守りますよ。
しかし巧の高等遊民になった訳が切なすぎる。
あの面接官最悪だな。
あいつら面接官の資格ないだろ。
そんな会社こっちから願い下げだよ。
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話
第7話 第8話