単独無寄港世界一周新記録 57日13時間34分6秒

2008年02月02日 | 風の旅人日乗
単独無寄港世界一周記録に挑戦していたフランスのフランシス・ジュアィオン(51)が操る97フィート・トリマラン〈Idec2〉が、2008年1月20日午前0時39分58秒、フランスのブレスト沖にフィニッシュ。
フランシス・ジュアィオンと〈Idec2〉が地球を1周するのに要した時間は57日13時間34分6秒。これまでの世界記録だったエレン・マッカーサーの71日14時間18分を丸14日近くも短縮しました。

 1970年に、イギリスのロビン・ノックス・ジョンソンが人類として初めてセーリングによる単独無寄港世界一周を達成したときの記録は313日でした。
 今から10年前の1998年には、クリストファー・オーギンが105日間20時間という記録を打ち立て、ノックス・ジョンソンの記録を3分の1に縮めます。そして今回のフランシス・ジュアィオンは、10年前のその記録を、さらに半分に縮めたことになります。
 セーリングへの科学的アプローチと、インターネットを駆使するナビゲーション・ツールの進歩が、ここ最近の目覚しいセーリングスピード記録更新を支えているとは言え、セーラーとしてのフランシス・ジュアィオンの実力は並大抵のものではないのだと思います。

フランシス・ジュアィオンは2004年にも単独無寄港世界一周を成功させ、72日23時間足らずという新記録を打ち立てましたが、その1年後に、イギリスのエレン・マッカーサーによってその記録を、わずか約1日だけれども、破られています。今回の〈Idec2〉によるフランシス・ジュアィオンの航海は、そのエレン・マッカーサーの記録への挑戦だったわけだけれど、全航程の平均スピードは19.09ノット。これは、エレン・マッカーサーのそれを4ノットも上回るスピードででした。

もうひとつ、今回のフランシス・ジュアィオンの航海で特筆すべきことがあります。それは、〈Idec2〉には、補助エンジンも、発電機も積まれていなかったことです。航海中に必要な電力は、すべて風力発電と、太陽発電と、そして燃料電池でまかなわれました。燃料電池が消費したエタノールも僅か15リッターだけだといいいます。ほとんど自然エネルギー(風、太陽)だけで地球を回ったフランシス・ジュアィオンと〈Idec2〉の航海は、セーリングがいかに環境に優しいスポーツであり文化なのかを、現代社会にアピールしてくれたとも言えそうです。
(photo/JM Liot DPP IDEC)