1. マイケル・サンデル氏の 『ハーバード白熱教室講義録 +東大特別授業』 (ハヤカワ文庫上・下 2012年)を、読みました。 氏の “JUSTICE(正義)”(『これから[正義]話をしよう』
早川書房 2010年)の草稿となった講義です。
2.氏の講義の目的と意図を、一度、整理すると、以下の2点が抽出されます。
a.アメリカの良き国家指導層と市民を作り出すこと。
b.異なるコミュニティに内在する共通善を考えること。
3.問題点と補足
a. 2-aの場合、氏はアメリカというコミュニティを擁護するため、氏を現代のソフィストと見紛(みまが)うまでの手法を使って(この場合はカントを引き合いに出して)、かってのクリントン-モニカ・ルインスキー、スキャンダルにおいて、クリントン氏が、「ルインスキーさんと性的な関係を持ったことはありません」と言ったことは、嘘をついたわけではないと弁護されます。これはサンデル氏が学生に言い逃れの術(すべ)を教えているように私には思えます。氏はソフィストなのでしょうか?
b. 2-bの場合、サンデル氏は、「それが何か重要な人類の善を促進するかで決まる」とも言われます。
4.私の考え
a.世界市民などというものは存在しません。
b.コミュニティというものは、それぞれ独自の発展を遂げて来ました。
c.ここで言うコミュニティには個々の国も含みます。
5.氏の哲学的実践
a.2010年5月、“JUSTICE”(『これから[正義]の話をしよう』)で、いわゆる従軍慰安婦と賠償の問題を提起。
b.2010年8月25日、東大で「1930年代と第2次世界大戦中の出来事に対する日本の道徳的責任」を議論することを提起。
6.氏への質問
a.上記の哲学的実践はどのような成果を生んだとお考えですか?
b.韓国の、自国とアメリカにおける、従軍慰安婦=性奴隷=従軍慰安婦像=反日キャンペーンはその成果だと満足されますか?
c.現在の中国の反日テロと尖閣列島への侵略行為はどのように見ていらっしゃいますか? 哲学者として介入の余地はあるとお考えですか?
7.氏への要望
a.氏は「従軍慰安婦」を記載するにあたって文献を1本挙げていらっしゃいます。研究論文で言えば、「又引き」にあたり、研究者倫理に反します。御自分でA,B,Cを調査し、A,B,C,の事実が判明した。よってA,B,Cは史実である、という考証をお願い致します。我がコミュニティ=国家の名誉がかかっています。
b.来日中、広島の原爆資料館へは行かれましたか?
c.広島、長崎への原爆投下と結果に対する内省をお願い致します。私達日本人は、先の大戦に敗北して以降、氏の仰(おっしゃ)る1930年代を含めて私達の父祖が臨んだ苛酷な事実の内省を続けています。こういう内省の文化が日本にあることを、氏は御存じでしょうか?
8.共通の地歩
a.上記をやり遂げられた所に共通の地歩が広がり、ともに「異なるコミュニティに内在する共通善」を目指すことができると思います。