A.7月3日の政変
1. 7月3日夜(日本時間:7月4日朝)、エジプト軍最高評議会議長兼国防相・シン氏は、モルシ大
統領の解任し、同時に、α)大統領の権限は直ちに、マンスール憲法裁判所長官が引き継ぐこと、β)昨
年末に成立した憲法を停止すること、γ)人民議会(国会)選挙のための新法を作成するよう最高憲法裁
判所に指示したことを明らかにしました。(ウォール・ストリート・ジャーナル)
2.また、『毎日JP』は、エジプト軍が今回のデモが始まった6月30日に、戦車部隊をパレスチナ自
治区・ガザ地区との境界に配置していたことを伝えています。
B.停止された憲法作成の経緯
1.モルシ大統領の母体は、ムスリム同胞団だと言われています。昨年末、憲法草案が国民投票にかけら
れる経過は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、下記の通りです。
α) 2012年11月22日、モルシ大統領が、憲法令(暫定憲法)を発布。この憲法令は、大統領が発
令する全ての決定とイスラム勢力が多数を占める憲法起草委員会を、司法の判断が及ばないものにするこ
とでした。
β) この憲法令によって、憲法起草委員会が憲法草案を承認。(いわゆる世俗派やキリスト教会を代表す
る委員は抗議のため欠席。欠席者は全体の4分の1を越えました)。
γ) これを受け、大統領は草案を受理し、国民投票の実施を発表。
δ)2012年12月25日、第2回、国民投票実施。(賛成63.8%で承認されたと発表されていま
す)。
ε) 2012年12月26日、施行。
2.また、同紙は、エジプトのイスラム勢力と世俗派の対立は深刻であること、世俗派やリベラル派の人
々は、憲法草案はイスラム教徒が起草委を支配する中で策定されたもので違法であり、エジプトがイスラ
ムに乗っ取られる恐れがあると懸念していることを、伝えています。
C.ムスリム同胞団
1.ムスリム同胞団について記します。
a.世界のイスラム教徒の90~80%を占めるスンニ派に属します。
b.日本では「穏健派」と報道されますが、同団の人脈と思想の系譜からは、2001年9月11日のアメリ
カ同時多発テロのアルカイーダが派生し、パレスチナのハマスはエジプトのムスリム同胞団のメンバー
が作りました。
D.世界史の流れの中で
1.エジプトの政変の今後は、世界史の流れに作用します。パレスチナのハマスはムスリム同胞団の兄弟
組織です。国境を接したハマスへ、ムスリム同胞団は援助を行うことも可能です。この援助の内容によっ
て、イスラエルに対するハマスの力関係も変化します。
2.ジャスミン革命だとか、アラブの春と呼ばれた人々の街頭行動は、先進国の知識人がその言葉から期
待した自由と民主主義の政治制度とは別のものであるムスリム同胞団による権力の掌握を招きました。
3.これがアラブの春と言われたものの実体です。
4.本ブログは、今回のエジプトの人々の行動を支持致します。乏しい情報からしても、モルシ前大統領
が権力を自分の手中に収めて行く手法が垣間見えます。
5.また、イスラエルと世界との関係で言えば、モルシ前大統領政権の持続は、その緊張度を高める方向
に向かったであろうと言って良いと思います。具体的に言えば、エジプトは、パレスチナを援助し、イラ
ンと同方向の核政策を取るであろうと予測されたということです。
6.イスラエル支持の立場を本ブログは取ります。
E.自由主義社会と機会均等
1.社会は、全ての人に機会が均等に開かれていることが、その社会に所属して社会を作って行く、全て
の人々に与えられなければならない第一要件です。
2.自由主義社会について、6月23日の記事の一部を再掲致します。
自由主義社会の規範と善は、その形成を人間個人の自発性に負います。人間個人の自発性を主体と言いま
す。社会は、規範と善に限らず、この人間個人の自発性によって形成されます。そして社会は、この人間
個人の自発性にたいして機会を常に均等に開こうとします(そうしなければいけません)。これを自由主
義社会と言います。
3.エジプトの人々がより良い選択をされることを願ってやみません。
F.別項: 2013年参議院議員選挙
1.今回より、Webを通した選挙に関する書き込みが可能となりました。
2.本ブログは、自由民主党の候補者への投票をお願い致したく存じます。
3.皆様が、既に意中の候補者を決めていらっしゃらない時は、お考え頂きますようお願い申し上げます。
文責: 前田子六(正治)
e-mail :shouji_zen@ybb.ne.jp
幸福のクローバー