A.ある技術者の死
1.7月9日、前・福島第一原子力発電所所長、吉田昌郎氏が食道ガンのため逝去されました。御冥福を
祈り、衷心より哀悼の意を表します。
2.本ブログは、2011年3月11日の東日本大震災に遭遇し、その惨禍を世界に知らしめた時までを
、日本の旧時代、それ以後を新時代と認識しています。そしてその思いでホームページを開設し、日の丸
も背負(せお)いました。
3.時代を旧・新に区分するのに倣(なら)い、人物も旧タイプ・ニュータイプに分けると、吉田昌郎氏
は旧タイプに属されます。細心さ、繊細さよりも、豪胆かつ磊落。問題が起こればそれに一身を捨ててあ
たる。報道の伝える氏の像はこのように思えます。そしてまた、このイメージを書きながら、私は、先の
大戦に敗北した旧軍の将官に同じようなものがあると思ってしまいました。
4.ウィキペディアによりますと、2008年、東京電力内で、福島第一原子力発電所に想定を大きく超
える津波が来る可能性があるという評価があったことを記しています。この時、本店・原子力設備管理部
が、それは「あり得ない」と判断し、対策を立てられませんでした。この時の本店・原子力管理部長が
吉田昌郎氏です。
5.また、歴史に「たら、れば」はありませんが、震災遭遇時の初動において、全電源喪失が判明したと
き、予備電源の確保に、何故、自衛隊の出動を要請されなかったのか? 予備電源の提供を、マスコミを
通じて放送されれば、事態は異なったものになったように思います。
6.しかし、残念なことに、自衛隊に関しては、事故当時の東電社長・清水正孝氏が自衛隊のヘリコプタ
ーの使用を要請されていますが、その時の民主党、防衛大臣・北澤俊美氏は許可しなかったという経緯が
あります。
B.重大な技術上の瑕疵
1.ベント管の一部を空調用ダクトで代用させた部分があったこと。(テレビ朝日、“報道ステーション”
2011.12.31)
C.初動時に発生した重大な操作ミス
1.非常用復水器の冷却管の緊急用バルブが、当初、開いていると思われており、実際には閉まっていた
こと。非常用バッテリーが一時使える状態になり、バルブを「開」としたものの、再び、「閉」としたこ
と。
2.この非常用復水器について、福島原発事故独立検証委員会の「調査・検証報告書」では、1号機が、
「電源喪失に伴う隔離弁(緊急弁)閉止により、ほぼ機能喪失」と記載されています。しかし、緊急弁は
手動で開けることができます。(注:非常用復水器=ICが据え付けられているのは、福島第一のNo1
ユニットのみです。 2013.8.5)
D.安全神話
1.安全神話については、色々なところで書かれたり、話されたりしています。旧時代の東京電力の原子
力発電所といえば、絶対安全な日本の技術の象徴でした。私もそう思っていました。しかし、事実は違い
ました。補助電源は水没し、そのバックアップもなく、ベント管の規格さえ守られていませんでした。こ
ういうものを旧時代と言います。
2.新時代の技術と社会はこれから作るものです。それは当たり前のものが、当たり前のこととして作ら
れ守られ、安全であることです。
E.標語としての 「新時代、旧時代」
1.2011年3月11日以降の社会が、それ以前の社会とは変った新しい社会であることは、日本人の
殆どが意識していることだと思います。
2.これが意識に留まらず、社会がそのようなものとして作られて行くためには、「新時代」という考え
が、標語のように社会に浸透して行くことも必要と考えます。そして一人一人が「新時代」の規範と行動
基準を考え、それを行うことだと思います。
3.安倍首相が「戦後レジームからの脱却」と仰(おっしゃ)っていらっしゃいますが、この「新時代」
というフレーズもその一ファクターだと言えます。
F.終わりに
1.前・福島第一原子力発電所所長、吉田昌郎氏を、ひとつのタイプとして、一つの時代の終わりと、
新しい時代の始まりを述べさせて頂きました。
2.氏の御冥福を重ねて衷心よりお祈り申し上げます。
G.別項: 2013年参議院議員選挙
1.本ブログは、自由民主党の候補者への投票をお願い致しております。
2.皆様が、既に意中の候補者を決めていらっしゃらない時は、お考え頂きますようお願い申し上げます。
文責: 前田子六(正治)
e-mail : shouji_zen@ybb.ne.jp
青空