日経新聞によれば、中国外交部の武副部長(または武次官)は今回の小泉首相と温首相の会談の要請をしたのは日本側であると、日本人記者団に説明したそうだ。日本側の説明と食い違っている。日本は中国側の申し入れであることを発表していたから、武副部長は嘘つきということになる。さて、どちらの説明が正しいのか・・・
日中韓三カ国協議が始まり、重要な議題としてアジアの安全保障、特に北朝鮮の核開発問題を六カ国協議のテーブルに載せてゆく意志統一が行われるでしょう。後は拉致問題について中国の協力が取り付けられるかどうかですね。結果は温首相との会談後に確認してみることにします。これはさておき・・・武副部長ですね。
武副部長は原潜問題の時にも、ヤマタクと会談したり阿南大使に「遺憾の意」を語ったりと大活躍でした。その彼が日本側から会談要請があったと説明したのですから、これは当然「偉大なる中国から手を差し出した訳ではない」との意見表明と受け取れるでしょう。以前書いた「日中首脳会談の行方1」に述べたように、原潜問題に対する答えとしては「老獪さ」が満開でしたから、今回の説明も侮れないでしょう。この経緯を少し考えてみることにします。
武副部長は「APEC前に日本側から要請があったから、今回応じてあげた」というニュアンスで説明したようです。これはある意味、ウソではないと考えます。これは一体どいうことなのか?遡って推測してみます。
まず、日本側は中国との関係回復に向けての道を模索していた。中国としてはすんなり日本との協調路線は取り難い状況であり、10月のASEMでの首脳会談は一度断ることにした。そして中国側がエサを用意する。日本側の反応を確かめる為に・・・。原潜で日本側の反応と外交姿勢を試した(以前の記事を参照して下さい、カテゴリー:外交問題)。結果は、「応じてもよい」との判断が成立する見通しが立った。
日本側は中国との関係修復を考慮していたので、原潜問題の国内反発や防衛庁の策動を抑えこんで早い段階で「ケリ」をつけ、日本の面子も中国の立場も配慮した形で中国側へ申し入れをした。日本側がたぶん「APECかASEANでの首脳級会談を求めた」のではないか。日本側の思惑では胡主席もしくは温首相のどちらかでよいと踏んでいた。中国側は先の判断が働いていたし、日本側の姿勢を評価したという意味で胡主席が会談に応じることにしたのではないだろうか。中国は、APECでは経済面での存在感を示すことを目的としていたので、米国を中心に考えていたはずである。そこに日本からの要請があった為、日本との首脳会談のためにぎりぎりまで調整が続いたであろう。だが、中国側もこの機会を逃すと一層の冷え込みが懸念されるため要請に応じるつもりであったに違いない。
これで日本側は初期目標が達せられたと考え、APECで会談が成立したのであるからASEANでの会談は必要ないと思っていた。ところが、今度は中国側の要請があり、日本側としては「中国が求めるなら」と今回の温首相との会談に応じたのであろう。
ここが武副部長に言わせると、「最初に要請したのは日本」ということになる。なるほど、確かに最初に切り出したのは日本だ。中国側の用意した「原潜」を乗り切り、先に日本が「要請する」形を中国側が作り出したのだ。彼の、ウソではないが真実ではない発言はこのようにして生まれたのではないか。中国側としては、今度は「ウチから切り出してもいいでしょう」という判断も成り立つわけだ。二度も相手に要請させたわけですし。
休戦協定も似たようなものではないか。先に相手に言わせる。「どうしても、と言うなら応じましょう」の立場を堅持するためだ。これにより相手を格下と見なすことができる。うーん、なるほど。
一度お断りをした上で、次に「応じる」。交渉上手と言わねばなるまい。おまけに今回の「先に言ったのはそちら」発言。うまいぞ、中国外交部。原潜の時の「報道を注意深く見守る」発言もうまいと思ったが、また感心させられた。だが、本当の評価はこれからの会談内容であり、北朝鮮問題で中国の積極的な協力を得られるかどうかです。ここの部分に関しては、日本外務省の手腕にかかっています。そしてもう一つ、ガス田は決して譲歩してはなりません。その戦術を考えておくことが重要です。相手に言質を与えないように細心の注意を払うべきです。
以上は私の推測に過ぎないので、どうなのかはわかりません。でも、記者発表の食い違いはこのようにして起こるのではないか、と考えたりします。
それから、ODAに関しても小泉首相の発言を受けて、武副部長が「ODA続行か廃止は流れに任せる」と語っている。これは中国国内の約3割が中止か段階的に中止を認めていることから、反発が少ないと見てこの発言をしたのであろう。このことは、日本側が暗に「ODAを廃止しますよ、それでもいいんですか?」ということを示す首脳会談前のハッタリをあっさりかわした意味がある。これはそのカードは中国には「効きませんよ」という意志表示だ。一筋縄ではいかない、ということだ。
日中韓三カ国協議が始まり、重要な議題としてアジアの安全保障、特に北朝鮮の核開発問題を六カ国協議のテーブルに載せてゆく意志統一が行われるでしょう。後は拉致問題について中国の協力が取り付けられるかどうかですね。結果は温首相との会談後に確認してみることにします。これはさておき・・・武副部長ですね。
武副部長は原潜問題の時にも、ヤマタクと会談したり阿南大使に「遺憾の意」を語ったりと大活躍でした。その彼が日本側から会談要請があったと説明したのですから、これは当然「偉大なる中国から手を差し出した訳ではない」との意見表明と受け取れるでしょう。以前書いた「日中首脳会談の行方1」に述べたように、原潜問題に対する答えとしては「老獪さ」が満開でしたから、今回の説明も侮れないでしょう。この経緯を少し考えてみることにします。
武副部長は「APEC前に日本側から要請があったから、今回応じてあげた」というニュアンスで説明したようです。これはある意味、ウソではないと考えます。これは一体どいうことなのか?遡って推測してみます。
まず、日本側は中国との関係回復に向けての道を模索していた。中国としてはすんなり日本との協調路線は取り難い状況であり、10月のASEMでの首脳会談は一度断ることにした。そして中国側がエサを用意する。日本側の反応を確かめる為に・・・。原潜で日本側の反応と外交姿勢を試した(以前の記事を参照して下さい、カテゴリー:外交問題)。結果は、「応じてもよい」との判断が成立する見通しが立った。
日本側は中国との関係修復を考慮していたので、原潜問題の国内反発や防衛庁の策動を抑えこんで早い段階で「ケリ」をつけ、日本の面子も中国の立場も配慮した形で中国側へ申し入れをした。日本側がたぶん「APECかASEANでの首脳級会談を求めた」のではないか。日本側の思惑では胡主席もしくは温首相のどちらかでよいと踏んでいた。中国側は先の判断が働いていたし、日本側の姿勢を評価したという意味で胡主席が会談に応じることにしたのではないだろうか。中国は、APECでは経済面での存在感を示すことを目的としていたので、米国を中心に考えていたはずである。そこに日本からの要請があった為、日本との首脳会談のためにぎりぎりまで調整が続いたであろう。だが、中国側もこの機会を逃すと一層の冷え込みが懸念されるため要請に応じるつもりであったに違いない。
これで日本側は初期目標が達せられたと考え、APECで会談が成立したのであるからASEANでの会談は必要ないと思っていた。ところが、今度は中国側の要請があり、日本側としては「中国が求めるなら」と今回の温首相との会談に応じたのであろう。
ここが武副部長に言わせると、「最初に要請したのは日本」ということになる。なるほど、確かに最初に切り出したのは日本だ。中国側の用意した「原潜」を乗り切り、先に日本が「要請する」形を中国側が作り出したのだ。彼の、ウソではないが真実ではない発言はこのようにして生まれたのではないか。中国側としては、今度は「ウチから切り出してもいいでしょう」という判断も成り立つわけだ。二度も相手に要請させたわけですし。
休戦協定も似たようなものではないか。先に相手に言わせる。「どうしても、と言うなら応じましょう」の立場を堅持するためだ。これにより相手を格下と見なすことができる。うーん、なるほど。
一度お断りをした上で、次に「応じる」。交渉上手と言わねばなるまい。おまけに今回の「先に言ったのはそちら」発言。うまいぞ、中国外交部。原潜の時の「報道を注意深く見守る」発言もうまいと思ったが、また感心させられた。だが、本当の評価はこれからの会談内容であり、北朝鮮問題で中国の積極的な協力を得られるかどうかです。ここの部分に関しては、日本外務省の手腕にかかっています。そしてもう一つ、ガス田は決して譲歩してはなりません。その戦術を考えておくことが重要です。相手に言質を与えないように細心の注意を払うべきです。
以上は私の推測に過ぎないので、どうなのかはわかりません。でも、記者発表の食い違いはこのようにして起こるのではないか、と考えたりします。
それから、ODAに関しても小泉首相の発言を受けて、武副部長が「ODA続行か廃止は流れに任せる」と語っている。これは中国国内の約3割が中止か段階的に中止を認めていることから、反発が少ないと見てこの発言をしたのであろう。このことは、日本側が暗に「ODAを廃止しますよ、それでもいいんですか?」ということを示す首脳会談前のハッタリをあっさりかわした意味がある。これはそのカードは中国には「効きませんよ」という意志表示だ。一筋縄ではいかない、ということだ。