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負けず嫌いの中国外交部

2004年11月29日 20時47分56秒 | 外交問題
日経新聞によれば、中国外交部の武副部長(または武次官)は今回の小泉首相と温首相の会談の要請をしたのは日本側であると、日本人記者団に説明したそうだ。日本側の説明と食い違っている。日本は中国側の申し入れであることを発表していたから、武副部長は嘘つきということになる。さて、どちらの説明が正しいのか・・・




日中韓三カ国協議が始まり、重要な議題としてアジアの安全保障、特に北朝鮮の核開発問題を六カ国協議のテーブルに載せてゆく意志統一が行われるでしょう。後は拉致問題について中国の協力が取り付けられるかどうかですね。結果は温首相との会談後に確認してみることにします。これはさておき・・・武副部長ですね。


武副部長は原潜問題の時にも、ヤマタクと会談したり阿南大使に「遺憾の意」を語ったりと大活躍でした。その彼が日本側から会談要請があったと説明したのですから、これは当然「偉大なる中国から手を差し出した訳ではない」との意見表明と受け取れるでしょう。以前書いた「日中首脳会談の行方1」に述べたように、原潜問題に対する答えとしては「老獪さ」が満開でしたから、今回の説明も侮れないでしょう。この経緯を少し考えてみることにします。

武副部長は「APEC前に日本側から要請があったから、今回応じてあげた」というニュアンスで説明したようです。これはある意味、ウソではないと考えます。これは一体どいうことなのか?遡って推測してみます。





まず、日本側は中国との関係回復に向けての道を模索していた。中国としてはすんなり日本との協調路線は取り難い状況であり、10月のASEMでの首脳会談は一度断ることにした。そして中国側がエサを用意する。日本側の反応を確かめる為に・・・。原潜で日本側の反応と外交姿勢を試した(以前の記事を参照して下さい、カテゴリー:外交問題)。結果は、「応じてもよい」との判断が成立する見通しが立った。

日本側は中国との関係修復を考慮していたので、原潜問題の国内反発や防衛庁の策動を抑えこんで早い段階で「ケリ」をつけ、日本の面子も中国の立場も配慮した形で中国側へ申し入れをした。日本側がたぶん「APECかASEANでの首脳級会談を求めた」のではないか。日本側の思惑では胡主席もしくは温首相のどちらかでよいと踏んでいた。中国側は先の判断が働いていたし、日本側の姿勢を評価したという意味で胡主席が会談に応じることにしたのではないだろうか。中国は、APECでは経済面での存在感を示すことを目的としていたので、米国を中心に考えていたはずである。そこに日本からの要請があった為、日本との首脳会談のためにぎりぎりまで調整が続いたであろう。だが、中国側もこの機会を逃すと一層の冷え込みが懸念されるため要請に応じるつもりであったに違いない。

これで日本側は初期目標が達せられたと考え、APECで会談が成立したのであるからASEANでの会談は必要ないと思っていた。ところが、今度は中国側の要請があり、日本側としては「中国が求めるなら」と今回の温首相との会談に応じたのであろう。


ここが武副部長に言わせると、「最初に要請したのは日本」ということになる。なるほど、確かに最初に切り出したのは日本だ。中国側の用意した「原潜」を乗り切り、先に日本が「要請する」形を中国側が作り出したのだ。彼の、ウソではないが真実ではない発言はこのようにして生まれたのではないか。中国側としては、今度は「ウチから切り出してもいいでしょう」という判断も成り立つわけだ。二度も相手に要請させたわけですし。

休戦協定も似たようなものではないか。先に相手に言わせる。「どうしても、と言うなら応じましょう」の立場を堅持するためだ。これにより相手を格下と見なすことができる。うーん、なるほど。

一度お断りをした上で、次に「応じる」。交渉上手と言わねばなるまい。おまけに今回の「先に言ったのはそちら」発言。うまいぞ、中国外交部。原潜の時の「報道を注意深く見守る」発言もうまいと思ったが、また感心させられた。だが、本当の評価はこれからの会談内容であり、北朝鮮問題で中国の積極的な協力を得られるかどうかです。ここの部分に関しては、日本外務省の手腕にかかっています。そしてもう一つ、ガス田は決して譲歩してはなりません。その戦術を考えておくことが重要です。相手に言質を与えないように細心の注意を払うべきです。


以上は私の推測に過ぎないので、どうなのかはわかりません。でも、記者発表の食い違いはこのようにして起こるのではないか、と考えたりします。


それから、ODAに関しても小泉首相の発言を受けて、武副部長が「ODA続行か廃止は流れに任せる」と語っている。これは中国国内の約3割が中止か段階的に中止を認めていることから、反発が少ないと見てこの発言をしたのであろう。このことは、日本側が暗に「ODAを廃止しますよ、それでもいいんですか?」ということを示す首脳会談前のハッタリをあっさりかわした意味がある。これはそのカードは中国には「効きませんよ」という意志表示だ。一筋縄ではいかない、ということだ。


防衛政策への提言

2004年11月29日 14時17分02秒 | 防衛問題
少し前に、防衛力強化もしくは擁護派の方々から多くのコメントを頂きました。記事を読んで頂けたことは、意義があったと思っております。御礼申し上げます。いくつかご指摘を頂いたので、今後の防衛政策に対する私の基本的意見について、まとめてみようと思い記事にしました。




日本の存在価値についてですが、狭い国土と資源に乏しいことを考えると、日本という国土そのものにさして大きな魅力はないでしょう。それよりも日本の生産的活動の成果の方が遥かに魅力的であると思います。主として経済活動に意味があると考えると、仮に日本を攻撃して国土を焦土と化し、国民の半数を虐殺したところで攻撃する側の得ようとする利益は期待できないということです。日本においては本土決戦のような考え方はほとんど意味をなさない、と言えると思います。


また、日本を攻撃して占領統治をすると仮定しても、国際社会においてそれが本当に許容されるか、ということを考えてみても、やはり答えは否でしょう。領土拡大によって得る利益よりも、国際社会から経済的に切り離されてしまう方が損失は大きいでしょう。従って、「日本の国土を全て占領して、統治する」という考えそのものが否定されるでしょう。


日本に制圧部隊を多数送り込むためには必ず上陸作戦が必要ですが、絶対条件があります。それは制空権と制海権を掌握している地域以外には大部隊の上陸できないということです。このような大規模上陸作戦を敢行でき、日本の占領統治が出来る程の軍事力をもち、国際社会から孤立しても国家存続が可能で、なおかつ国際社会から軍事的制裁を受けるリスクをとることのできる国家がなければ、「日本占領」はあり得ないということです。


上陸作戦の阻止を防衛計画の根本として考えるのは画餅と一緒です。ほとんど実行不可能に近い作戦の心配をするということです。その点で陸上自衛隊の90式を不必要に増やしてみたところで、使い道はないといえます。自走砲やMLRSなどもそうです。同じ門数なら安い牽引砲で間に合います。海外に持っていって使うことを想定している以外、戦車等を配備する意味はありません。





今後想定される事態としては、非常に狭い地域での紛争が主であり、陸上部隊が大量に投入されるような防衛上の危機はないと考えます。例えば小さい島の領有を巡る問題などにより起こる紛争です。かつてのフォークランド戦争のような、海上戦を主体とする紛争が起こる可能性は考慮する必要があるかもしれません。BMD構想に基づき護衛艦が配備されるでしょうし、従来から保有する護衛艦や潜水艦等で小規模紛争には対処可能と思います。航空自衛隊の制空戦闘機及び支援戦闘機についても新たな配備が必要なほど、重大な局地的紛争が起こる可能性は当面少ないと考えます。仮に10年間くらい新型機の配備を中断したとしても、日本の防衛戦略上何ら支障は来たさないと思います。


防衛戦略上最重要と考えるのは外交戦略であり、無意味な装備充実とか陸上戦力増強は必要がありません。コストが無駄になるだけです。もし仮想敵国が本当に日本上陸を企んでおり、日本が90式の配備を止めたり陸上自衛隊の隊員を削減して警察やレスキューを増員することで時宜を得たりとばかりに攻め込んでくると考えるならば、歩いている自分の頭に隕石が直撃することを心配するようなものです。

紛争を防ぐことに最も必要なことは、適切な外交とインテリジェンスだと確信しています。


もし防衛費を一気に削減しないとするなら陸上戦力を増強するよりも高速ミサイル艇や汎用ヘリ、飛行艇等を整備する方が有利であり、コスト削減と同時に戦闘以外の使い道があると考えます。比較の問題ですから、実効性の高い方を選択すべきなのです。対戦車ヘリや主力戦車は戦闘以外には使えない代物です。また、空中給油機はどの様な想定で配備するのか理解できません。空中給油を受けなければならないような事態とは、どのようなものでしょう。国外派遣を推し進めることを想定してるとしか考えられません。自国の防衛に絶対的に必要な航空機ではありません。こんなものに何百億円も使うくらいなら、汎用ヘリを調達した方が役立つと普通は誰でも考えます。このような当たり前のことが、なぜ防衛庁やその他行政府に考えられないのか不思議です。




陸上自衛隊のお陰で補助金等が得られている市町村もあるのだ、という意見は一理あるとは思います。しかしながら、どうしても必要なお金ならば、陸自の駐屯地を無くしてお金だけ補助した方が安上がりですね。当たり前ですが、基地周辺の補助金等を同額支払ったとしても陸自隊員の人件費、通常装備費や演習費用等が浮くわけですから、国民全体としてはその方が助かります。災害救助活動を任務とするならば、自衛隊員である必要性は全くないことは誰しも分ることです。警察やレスキューに災害救助活動の訓練をさせれば済むわけで、銃器を持たせたりする必要はありません。救助活動のノウハウを陸自に行って学べば事足りると思います。テロ対策も機動隊や警察の特殊部隊を編成すれば済むことです。PKOにも参加可能ですし、単に警備だけ考えるなら警察組織で十分です。


以上が私の防衛に対する基本的な考え方です。根本にあるのは、教育、福祉や社会保障を削ってまでミサイルや戦闘機、戦車等を大量に保有することを大多数の日本人が望んでいるとは思えないこと、そして防衛費を効率的に使おうと考えるなら実情にあった防衛計画を立案すること、これを防衛庁やその他行政府の方々もよく吟味して頂きたいということです。