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特殊法人の不良債権額の推測?

2005年09月09日 20時17分32秒 | 経済関連
私は会計の専門家などではないし、正しい財務諸表の見方や資産評価などが出来るわけではないので、正確なことは判りません。一応、自分の思いつく範囲で述べてみたいと思います。

過去の記事(財政改革の道は・・・)に書いたのですけれども、特殊法人等の損失処理に係る新たな支出については、経済財政諮問会議からの発表があったと思います(元の記事が見つかりません)。これによれば、恐らく13兆円位の損失処理額になる、ということのようです。これがどのレベルでの損失処理となっているかは不明ですね。今更私が解説するまでもなく、独立行政法人や特殊法人は、事業収益と財投などからの借入、一般会計からの繰入(補助金、交付金、補給金、委託費などです)、場合によっては特別会計のような目的税等によって収入を得ています。支出としては、事業運営費や借入償還、利払い金などです。従来は財投から資金供給を受け、借り換えを繰り返しながら事業規模を拡張してきました。また、一般会計からの繰入も増額が進んで、結果的には特殊法人の肥大化をもたらしました。


全くの仮定で考えてみましょう。ある民間会社Aが負債を抱えて赤字の子会社工場Bの廃業処理を行うとしましょう。この工場は効率が非常に悪く、赤字額が多くていつも親会社のAから現金を貰っているので、親会社が現金を出す余裕がなくなって廃業することにしたのです。
この工場Bは、土地・建物・機械類等の資産がありますが、これは会計上の簿価が決まっていて、その評価額によって資産計上されています。いま簿価で固定資産は、土地1千万円、建物1千万円、機械類500万円、投資等50万円で、合計2550万円としましょう。また流動資産としては、在庫が資産計上されており、200万円とします。他に取引先への売掛金が100万円、現金預金が150万円で流動資産が合計450万円であるとします。するとこの工場Bの総資産は、3000万円です。

一方負債は、買掛金や預り金等の流動負債が300万円、長期借入金の固定負債が2500万円で、負債合計は2800万円です。負債は全額親会社Aの債務保証付きです。資本金1000万円は元々親会社が100%出資しましたが、毎年毎年赤字で現金補填を100万円づつ補填していたにも関わらず(贈与の税金などは考えないものとします)、累積損失は800万円となっていました。なので、資本の部は1000万円-800万円=200万円です。工場Bはこのような貸借対照表となっていました。この工場Bを廃業する時の、親会社Aの損失額はどれ位になるでしょうか。

まず負債ですが、2800万円は返済義務があるので、必ず返さなければなりません。従って、親会社Aは2800万円を必ず支出します。回収できる現金を考えてみましょう。流動資産のうち、現金となるのは250万円だけです。在庫200万円は現金化すると、市場価値としては2万円位かもしれません。多めに見て、10万円としましょう。すると、流動資産450万円のうち回収できるのは、260万円に過ぎません。続いて固定資産ですが、機械類は引き取り手がないので、ほぼ市場価値はゼロに限りなく近いでしょう。ですが、5万円くらいなら買ってくれる人がいるかもしれません。また、工場の土地・建物ですが、通常は工場になど何の価値もなく、ほぼ土地代金が回収されれば良い方です。簿価では合わせて2000万円の価値であっても、土地代金としては700万~800万円も現金として入ってくれば御の字でしょうか。立地等の条件にもよりますので、一概には言えないのですけれども。あと、投資等50万円は、評価損が15万円だったので、現金化すると、35万円となってしまいました。従って、回収現金は、流動資産450万円のうちの260万円と、固定資産2550万円のうちの840万円となり、合計しても1100万円となってしまいます。つまり総資産3000万円あっても、現金回収を行えばたった1100万円となってしまうのです。総資産の僅か37%程度となってしまいました。


親会社Aは、工場Bの資本金1000万円を払った挙句に、負債2800万円を払いましたから、合計3800万円払ったのに、回収した現金は1100万円に過ぎず、差額2700万円を失ったのです。更に言えば、毎年現金を100万円づつ補填(=補助金等)していたので、この工場Bが15年稼動していたとするなら、その間に移動した現金は1500万円です。それも雲散霧消となるのですね。隠れた1500万円分を考えれば、払込合計額は5300万円で、回収できたのは1100万円に過ぎないということになります。この工場Bの債務2800万円の処理によって、失ったことが判明したお金は4200万円ということになるのです。これが現実です。


親会社Aが国で、工場Bが独立行政法人などの特殊法人に置き換えてみれば、債務処理に伴って実質的に失った国民のお金は、債務額に納まるということはまずないでしょう。普通の運営形態だと、最初に述べたように一般会計や特別会計からの資金をかなり飲み込んでおり、おまけに独立行政法人化した際には政府出資金を大幅に減額したり(帳簿上で損失を帳消しにしたのか?謎の処理が行われている)した上に、更に回収不能というお金がかなり出るのです。


上の廃業処理に伴う回収現金が少な過ぎなのではないか、ということも考えられますが、他の参考としては、RCCが引き受けた買取債権があります。簿価上の債権総額のどの程度で買い取ったのかというと、長銀は31%、日債銀は48.5%、地銀7行分は49%位だそうです。つまり1千億円借金がある貸付先から、回収するのは多くても500億円程度ということになります。工場Bは2800万円借りていたので、最大でも1400万円程度しか戻ってこない計算になります。

ただ完全破綻ではないので、債権価値の劣化は倒産の場合よりも少ないかもしれませんが、公的企業の簿価評価は甘いことが一般的なのではないか、と推測しています。なので、大体3割強、多くても4割位しか戻されないかもしれないと思っています。また、RCCが健全経営銀行から不良債権を買い取った場合は、平均すると簿価の10分の1程度だったそうです。つまり1千億円の負債がある不良債権先からは、100億円くらいしか回収出来ない、ということです。ですので、特殊法人の資産価値はどの程度なのか、ちょっと想像出来ないですね。経済財政諮問会議の試算では、多分債務超過先だけの処理で”新たに”発生する国民負担分ですから、本当はもっと巨額資金を失ってしまう可能性が高いでしょう。上の例(工場B)で見れば判る通り、本当は3800万円だけじゃない、ということです。


特殊法人の不良債権額はどれ位なのか、という議論がある訳ですが、諸説あって確定しないでしょうね。厳密な会計基準を適用したり、前身組織時代からの累積損失額を考えれば、巨額であることは間違いないでしょう。で、どの程度の額なのか、ということになりますが、所謂「ソースを出せ論」があると思いますね。例えば「100兆円以上」ってのは、「どこのドイツ」が言ったんだ、ってね(下らないですね、笑。この帽子ドイツんだ?それ、オランダ)。デマゴギーもいい加減にしろよ、と。全特殊法人等の財務諸表を監査するだけの根気やマニア度がなければ、実態把握は無理かとも思いますが。そんなの会計検査院とか所管官庁や財務省が頑張れよ、と言いたいですけれどもね。その為に給料を貰い、仕事としてやっているんだから。何の為に存在するんだ?と、ちょっと思うぞ。


上で参考に取り上げた記事に、郵政問題研究家さんがコメントに書いてくれたのが大きなヒントになっています。有難うございます。それは、今年3月2日の委員会質疑で、谷垣財務大臣が米澤議員に対して答弁した内容が一つの例でしょう。その中で取り上げられた”論文”では、特殊法人の不良債権額は267兆円と指摘されている、となっております。

これに対して谷垣大臣は、その”論文”の存在は知っていること、債務超過法人は5つに過ぎないこと、地方自治体の債務42兆円分は支払能力から地方交付税を外していることが評価として不適切としていること、旧国鉄債務についても支払い不能としていること、を反論としています。これを除外したとしても、除外されるのは70兆円に過ぎず、200兆円近くの「不良債権説」には、答えていません。財務省としてはその程度の解釈なんだろうな、と。不良債権額が200兆円としても、回収率が半分ならば損失は100兆円だし、40%ならば120兆円、ということになりますね。案外妥当な水準なようにも思いますが(笑)。谷垣大臣はその”論文”が何か、とは答えていないので、客観的な情報は判りませんが、全くの当て推量ですけれども、所謂「”土居・星”論文」だろうと思います。
月刊ESP7月号(オリジナルのDoi and Hoshi(2002)は分かりません。これによれば、00年度時点で国民負担は78兆円ということになっていますね)


他には日医総研の森宏一郎氏の説によれば、188兆円という不良債権額があります(有料ペーパーになっているらしいので、持ってる人が見てね)。これも、どの程度の回収が見込めるのかということで、全額焦げ付きとは違うでしょうけれども、90兆円以上は”やられる”可能性がありますね。内容の吟味については、能力のある方々にお願いしたいものです。私のような畑違いの人間には、財務は難しいものですので。専門に研究している人々の論文について、「お前は間違っている」などと突っ込める程の能力はないですから。私には、そういう説があるんだな、という納得くらいしか出来ないです。細かに吟味して、反論は出来ないですね。


疲れた・・・続きは、次に持ち越しです。