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「象牙の塔」もモラル低下?

2005年09月14日 14時00分47秒 | 社会全般
非常に残念な事件があったようです。天下の東大で捏造疑惑ということのようです。しかも既に『ネイチャー』に投稿され、掲載されてしまったのではないかと思われます。インパクト・ファクターの頂点でもある学術雑誌ですから、査読は厳しいでしょうし、載るだけでも名誉なことなのだろうと思います。にも関わらず、このような疑惑を生じるというのは、日本の科学界には衝撃を与える事件だろうと思います。事実関係や出来事の背景などについても、よく調査するべきでしょう。また、科学研究関係の予算獲得などの競争激化なども、何かの遠因となっているかもしれません。私にはこうした学界の出来事については、全く知るよしもありませんが、複雑な問題が横たわっているのかもしれません。


論文の信頼性に問題、遺伝子研究で生データなし…東大 : ニュース : 教育 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

一部抜粋します。

多比良教授らが英科学誌ネイチャーなどで発表した12本の論文について疑問を持った「日本RNA学会」が今年4月、同大学に調査を依頼したため、同研究科は同月、調査委員会(委員長=松本洋一郎教授)を発足させ、調査を続けてきた。

調査委員会は12論文のうち、検証が比較的簡単な4本の論文について実験記録などを調査。 その結果、論文のすべてにかかわった助手は、生データのほとんどをコンピューターに直接取り込み、一部のコンピューターはデータを保存せずに廃棄していたことが明らかになった。手書きの実験ノートも残しておらず、実験が実際行われたかどうかも確認できなかったという。

平尾公彦・同研究科長は「実験の生データがないのは極めて異例。追試の結果を受けて、厳しく対処したい」と述べた。多比良教授は「実験結果には自信があるが、それを裏付ける物的証拠を提出できず、深く反省している」と話している。


これと似た事件は阪大でもありました。

改ざんデータで論文、大阪大チームが米医学誌に発表 : ニュース : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

こちらも記事の一部を抜粋します。

大阪大大学院医学系研究科の研究チームが昨年10月に米医学誌「ネイチャーメディシン」に発表した基礎研究の論文が、不正なデータに基づく内容だったことが18日、明らかになった。

研究の実質的な担当者だった医学部の学生が、大学側の調査に対しデータの改ざんを認めたという。実験を記録したノートや実験用のマウスも見つからず、実験結果そのものがねつ造だった可能性も出ており、同研究科は遠山正彌・研究科長を委員長とする調査委員会を設け、事実関係の解明に乗り出した。担当教授はすでに同誌に論文取り下げを申し入れ、承諾された。


このように阪大の場合には、学生による研究ということで、管理・指導の体制に問題があったと思いますが、東大の場合には既に掲載済みの論文で、しかも学生の研究とは訳が違うでしょうから、問題は根深いようにも思います。

研究機関に携わる人々にとっては迷惑なことだろうと思いますが、よく調査して同種事件の防止に努める必要がありますね。


ところで、「象牙の塔」と言えば、過去に何度か記事にも挙げたSF作家、アイザック・アシモフ(続・言葉の創造と理解日本の進む道)にもそれにまつわる作品がありました。非常にマイナーな作品なので、知る人は少ないと思います。私のようなアシモフ好きとかでなければ、読まれることもないのではないか、と思います(笑)。そういえば映画でちょっと名前が出てましたね。『ロボット』というタイトルだったかな?生きている時には、映画化されなかったのに、死んでからでは残念な気もします。因みにアシモフは非常に執筆が早いと豪語していて、出版界では知られた話だったそうです。著作数は物凄く多くて、曖昧な記憶ですが300冊以上が出版されたはずです。薄利多売の書き手だったのでしょうか(笑)。


作品名は『象牙の塔の殺人』というミステリーです。ある大学で起こった死亡事件が、殺人事件なのか、どうなのか、という内容でして、有機化学の研究教室が舞台となっています。答えを書くと、問題あるかな?まあ、「モラル」の問題が事件に関わるということですね。


私が持っている文庫本は、88年初版のもので、作品自体が書かれたのは何と58年だそうです。つまり今から50年位前の作品ということで、ちょっとなじみがないかもしれませんね。日本では、アシモフそのものが名前を知られるようになってから翻訳・出版されたのだろうと思います。それでも30年後に日本で出版というのは、ある意味凄いかも。内容は、アシモフらしからぬ、ちょっと毛色が違った本かもしれませんね。でも、研究機関に身を置く人達ならば、どことなく理解出来る内容なのかもしれません。興味がある方は、古本屋でも探してみて下さい。



選挙で国民は「ボロ勝ち強者」を求めたのか

2005年09月14日 11時23分46秒 | 社会全般
内田先生が毎日新聞に寄せたという「特異な病像」という総括(勝者の非情・弱者の瀰漫)であるが、自民党議席大量獲得という結果だけで見れば一見そのように思われるかもしれない。だが、現実とはちょっと違うような気がする。何故なら、日本人がこぞって「ボロ負け組叩き」を行ったわけではないからである。むしろ、大都市圏に多い、現状を抜け出したい、明日を変えたい、と願う比較的若い層の投票行動に影響を受けたのではないのかな、と思う。守旧派を追い込むだけで喜びを感じる有権者達が多かったなら、亀井兄弟、ワタヌキさん、野田聖子さんが当選することはなかったであろう。自民大勝のきっかけはあったことは確かであるが、それは国民の病像という心理的要因などではなく、選挙システムによる結果に過ぎないのではないか。


まず、前回(2003年衆院選)と分かる範囲で比較してみよう(資料は昨日の読売新聞朝刊に掲載されたもの)。

投票率(小選挙区)は59.86%から67.24%に上昇した。有権者数は前回1億253万人、今回1億327万人で、実際に投票した数は前回が6137万人、今回が6944万人となる(ともに投票率より推計、前回より+807万人)。新聞発表された合計得票数と合わないのですが、多分無効票の数が100万票以上あるからではないかと思う(それでも無効票自体は全体の2%以下だろう)。この小選挙区での得票割合は民主党は前回の36.7%から今回の36.4%と0.3ポイントしか減少していない。ところが自民党は43.8%から47.8%と4ポイントの増加だ。公明はほぼ横ばい、共産、社民がシェアを減らしていて、両方で2.2ポイント減少となっていた(新党には0.8ポイントしか流れていない)。

実数で見ると、前回に比べて、民主党は228万票増加したのだが、自民党は564万票の上積みとなっていた。つまり小選挙区の勝敗を大きく変えたのは、この増加分で上回った336万票にあったということになる。各選挙区に平均すれば1万票強程度が、である。全国で見れば、807万票の増加であったから、この増加分の約7割(564万票)が自民党に流れていった、ということだ。民主党はこの28%程度しか獲れなかったのだ。大都市圏での増加分が多いならば、恐らく従来の組織票にカウントされてこなかった40代以下の層の投票行動によって勝敗が大きく分かれたのではないのかな、と思う所以なのである。

比例でも、自民党は3.22ポイントの増加に対して、民主党は6.37ポイント減少であった。民主党以外は、全て実数を増加させていたにもかかわらず(全体数が前回推計で5908万票に対し、今回6781万票と873万票増加しているのだから、普通は増加する)である。ミニ新党等に4.8%奪われたのが、民主党層であったと言えるかもしれない(前回は無かった)。これが300万票以上あったのだ。民主党は、前回2209万票から、今回2103万票と106万票減少(前回比、以下同-4.8%)だったのに、公明25万票増(+2.9%)、共産33万票増(+7.2%)、社民69万票増(+22.8%)となっていた。新たに加わった800万票以上の層は、大体どの政党にも増加させたのに、民主党にだけは減少させる行動となってしまった、ということだ。そして、増加票の恩恵を最も受けたのが自民党で、522万票増(+25.3%)となり、民主党との差がくっきりと出てしまった、ということになる。


単なる「勝ち馬に乗る」とか、「弱者叩き」という現象だけでは、これらは説明出来ない。関心を高めた効果は十分にあったのだが、各弱小政党が票の上乗せをしたのに対し、民主党だけが減少したのは、「民主党にNO」の意思表示と見るのが普通ではないか、と思う。以前の期待が大きかっただけに、「失望売り」が出てしまった、ということだろう。比例票のシェアでは、自民党38.18%、民主党31.02%と得票比率が7ポイント程度の差しかないのだから、日本全土での「強者に引きずられ、長いものに巻かれたい」という病理など見当たらないと言うべきで、逆に自民以外には6割以上の票が集まっていることを考えれば、現代日本人の「精神が病んでいる」傾向が投票行動に現れているなどという、メディアによく登場する精神科医の俄か解説者達の言説はいかにも胡散臭いと言わねばならない。政治的な強者待望論が、自民党獲得議席数と比例するように、圧倒的に支持されているとも思えないのである。国民の精神構造や指向の安易な解説は、信じがたいのである。


小選挙区でも、比例区でも、自民党が上乗せした500万票以上(有権者の僅か5%程度に過ぎない)の投票行動が、勝敗に影響した要因について、もう少し分析が必要なんだろうと思う。開票後に書いた記事(選挙を終えて~ネットと選挙(更に追記)民主党よ、君達にも未来が託された)では、恐らく若年層にその理由があるかもしれない、と書いたのであるが、東京、南北関東地区などの分析をすればもう少し詳細が見えてくるのかもしれない。選挙システムによる要因と、新規に投票行動をとった人々の行動要因と、両者で考えるのが妥当な気がするのである。