前の記事の続きです。現実の特殊法人の例で示さないと、いつも仮定の話ばかりで真実味が少ないでしょうから(笑)。債務超過には陥っていない組織であっても、その組織が国民のお金を大きく毀損していくことがお判り頂けるだろうと思います。
特殊法人が独立行政法人化される時に、オカシナ帳簿操作が行われたのか、どういった意味合いなのか不明なものがある。今まで何度も例に取り上げた「雇用・能力開発機構」について再び取り上げてみましょう(
雇用保険は貢物か2)。
財務情報(再掲):
情報公開
財務情報を公開されている年次順に見てみました。負債は資産から資本を引いた額ですね。政府出資金以外に地方公共団体出資金もありますが、額が小さく影響があまりないので、合算した額を表記しています。資本は、政府出資金から欠損金を引いた額です。単年度で赤字が大きければ繰越欠損金が増加していくのです。それによって、資本は減少していきます。
(H15年度分は16年2月までの分で、3月1日からは独立行政法人になったので、別に財務諸表があります。「炭鉱離職~特別会計」は幽霊会計で金額も実態も無いも同然ですので無視してます)
H14年度(15年3月末) H15年度(16年2月末)
資産 2兆2900億円 2兆1051億円
政府出資金 2兆1616億円 2兆1616億円
欠損金 7324億円 9969億円
資本 1兆4292億円 1兆1648億円
このように、一年間に資産価値で1849億円、資本は2644億円もの減少となってしまいました(この前年は1420億円くらいの減少)。たった2年間で累損が4060億円以上という異常事態なのだ。これはH16年3月からの独立行政法人への移行の為にワザと累損を帳簿上に計上した可能性もある(つまりは、それ以前は損失を粉飾決算(意図的粉飾ということではないかもしれないが)によって隠していたとも言える。評価額の大幅に減少したような不動産などの処理によって損失を表面化させた、というようなことなのかな?内容はよく判りません)。帳簿なんてのは、操作次第でどうとでもなるし、会計検査が大甘だからね。監督省庁である厚生労働省も何をやってるのか知らないが、身内の不祥事も止められない挙句に、特殊法人・天下り野郎達と一体となって、不採算業務に取り組んできたとしか思えないですね。ひたすら国民の金を貪ったのですよ。
ここまでで十分問題は大きいのですが、更に疑問なのは、独立行政法人化された時に行われた帳簿操作です。雇用保険や税金が無駄に消えていったとしか思えないのです。
H16年3月末時点での大きな変化を見てみました。上の数字の決算が出てから、たった1ヶ月(!)しか経っていません。
まず、資産は1兆7321億円と3730億円も減少しました。2月には2兆円以上あったのに、です。政府出資金は8059億円で、1兆3557億円も減少しました。欠損金は228億円で、こちらも9741億円減少、資本は7807億円で3841億円減少しました。これは一体どういうことなのか?2月末からたった1ヶ月でこれ程の大損をしてしまうとはどういうことなのか?如何にこれまでの会計が杜撰であったのか、ということが判ると思います。損を隠し続けてきたんですよ、コイツらは。
普通に考えて、累損を解消するというだけなら、一掃したって約1兆円弱の減少となるはずなのに、出資金の減少額は更に3500億円以上多くなっています。つまり、以前は隠しておいた損失がここで明らかにされた、ということになります。それが資産の減少として表れています。より実態に近く計上すると、こうなっていたということです。
大きく異なっている部分を探すと、固定資産がまるで違います。旧機構の時には、土地139億円、建物114億円が計上されていたのに、1ヵ月後には土地3088億円、建物4320億円と7155億円増加しています。これはどこから来たのか?実は旧機構には特別な固定資産がありました。能力開発・雇用福祉事業資産というのが併せて1兆1450億円あったのですね。これをバラして、それぞれ振り分けたのでしょうけれども、中身はどういう評価になったのかは、出していないのですよ。本当に1兆1450億円分の評価であったとは考えられないのですよ。有形固定資産は7800億円分増加したことは確かです。では、残りの3650億円はどこに消えたのか?資産減少額3730億円と似た規模ではありませんか?単なる偶然に過ぎないのかもしれませんけれども。累積減価償却額なんてたかが知れてる。18億円位に過ぎない。事業資産は、クソどもが架空の帳簿計上をして、現実には存在しないような価値を持たせていたんだろう、としか思えない。たった1ヶ月でこれ程の損失が出るかっての。
他には、流動負債に2532億円の雇用・能力開発債権償還及び長期借入金返済(一年以内の返済予定なので)が増加していますが、長期債務は6523億円となっています。合計すると9055億円ですけれども、1ヶ月前の雇用・能力開発債権と長期借入金の合計額は8600億円でした(固定負債総額では8900億円以上)ので、実は455億円の借入金が増加したことになります。帳簿上の区分を変えて、一見長期債務の減少に繋がったかのようですけれども、現実にはそうではなくて、借金は増えているんですよ(一応、流動負債は150億円減少していますが)。
結局、新たに独立行政法人化したことで、政府出資金は1兆3千億円以上失われたとしか思えません。また、過去の積み上げてきた事業資産についても、恐らく3700億円程度の損失となったと思われます。新たにスタートした独立行政法人に、1ヶ月分として運営交付金が111億円、補助金が37億円、合計148億円が投入され、利益はたったの28億円だそうです。つまりは単月で120億円を飲み込まれることになり、一般会計からの繰入が年間1440億円も必要ということになってしまいます(平均給与がべら棒に高くて、800万円以上だもんね。“平均が“、だぞ?)。
まるで、バカ息子の道楽事業に金を出す父親みたいなもので、運営資金を毎月150万円近く渡していて、バカ息子は「利益が28万円も出てる。債務超過じゃないし、健全経営だよ」とのたまうわけだ。全くの大バカ野郎だな(笑)。
これが、債務超過じゃない特殊法人の独立行政法人化の実態であり、国民には内緒で損失処理をしていたに過ぎない。帳簿を見せなければ、「無かったこと」に出来るということだろう。累損は見なかったことにしてくれと。こんな機構に毎年1千億円以上とかつぎ込んで、まんまと貪り尽くされたのだ。
国民は既に1兆円以上の損失を被ったのですよ。こんなのが、いくつもあるんですよ、特殊法人というのは。まあこれは「新たな国民負担」とは呼ばないのかもしれませんけれども。
1兆円は大きいぞ!年収の少ない世帯に、現金で10万円ずつ配っても、1千万世帯に配れる。100万円ずつを100万世帯に配れる!驚きの額だな。もしも子供1人当たりに配るなら、100万人分ということだ。それ程巨額資金が消滅したのだ・・・