タダの「形作り」と思われていますが、六カ国協議には一応の成果が得られたということになっています。米国はそれなりに、北朝鮮も「軽水炉」提供の語句を盛り込むことに成功したと考えているでしょう。日本にとっては、大きな進展ということはなかったものの、家族会の理解が多少は得られるものとなったことで、こちらもそれなりの成果と言えるかもしれません。経済制裁の要求圧力は若干ながら弱められたでしょう。
米国と北朝鮮の言い分は、まるで日本の党首討論の時と非常に似ていました(国会空洞化現象)。それは年金改革に関して、小泉さんが「民主党がテーブルにつけば、一元化・納税者番号導入も検討する可能性はある」と言い、当時の民主党岡田代表は、「一元化・納税者番号導入を認めるならば、席につく」という主張を繰り返したのですが、これと本当に似た状況だな、と思いました。
米国は「核・ミサイル放棄なら、軽水炉提供を考慮してもよい」と言い、北朝鮮は「軽水炉提供なら、核・ミサイル放棄をしてもよい」という主張をしており、この議論は堂々巡りに終わることは、先の党首討論の例でも分る通りです。どちらかが譲歩するか、先決事項を確定しない限り、交渉が進展することは有り得ないのです。米国が北朝鮮の要求を先に呑むことは有り得ないだろうと思います。北朝鮮は、中国の出方を見ながら、米国の主張をかわす方法を新たに考えるか、交渉拒否を続ける道を選択することも可能です。北朝鮮にとっては体制維持が最優先であり、軽水炉を手に入れることの重要性などは低次元の問題だからです。エネルギー供給というのも、別に軽水炉に頼る必要性などある訳でもないでしょう。
北朝鮮の立場に立つとすれば、核ミサイル放棄ということの代わりになる、いわば「人質」が必要なだけです。核兵器を失ったとしても、北朝鮮国内に原子炉が存在するならば、その破壊やメルトダウンは十分な脅迫になり得るからだろうと思います。韓国や中国はえらい迷惑な話でしょうけれども、もしも核ミサイルを放棄して軽水炉を手に入れれば、「どこら辺に建設・設置するか」によって、脅威の程度が変わろうというものです。韓国国境寄りに設置され、万が一原子炉が破壊され放射能の広範な汚染地域ができてしまえば、立入禁止区域が朝鮮半島に誕生するだけです。その時に韓国がどの程度の被害を被るのか、ということだろうと思います。これが中国国境寄りに設置されれば、それはそれで中国が被害を被る立場ということになるかもしれません。つまりは、北朝鮮国内に常時置いてある「人質」みたいなものなのです。北朝鮮の狙いは、多分そういう意味なのではないか、と考えます。
朝鮮半島での軍事的緊張が高まったとして、米国が実際に北朝鮮に対して戦術核兵器を使用するかというと、まずないでしょう。当然核を用いずとも、旧式のガラクタ兵器しか持たない北朝鮮の貧弱な施設・設備では、通常兵器の攻撃でも十分な可能性が高いのではないかと思っています。ただ、北朝鮮のミサイル発射が全弾防げるかどうかは不明ですので、一部戦術ミサイルは発射されてしまうかもしれません。その着弾地点が韓国なのか日本なのかは、はっきりとわかりませんけれども。米国にしてみれば、先制攻撃によってミサイル発射可能地点を破壊できれば、特別核兵器を使用するという作戦を選択することもないのです。極々稀なケースとして、戦術核のオプションは考慮しているのかもしれませんが。
従って、北朝鮮が軽水炉を欲しがるという目的は、ただ一つ、「原子炉」という人質を国内にとっておく、ということ以外に有り得ないだろう、というのが結論です。米国はその目的を知っているでしょうから、先にそれに応じることは有り得ません。また、仮に北朝鮮が核ミサイル放棄に応じたとしても、原子炉提供は六カ国協議の中で「reject」とされる可能性が高いでしょう。よって、米国は北朝鮮の対応には無関係に、「軽水炉提供」という案を採用することは有り得ない、ということです。
北朝鮮は、これを考えれば、核ミサイルを放棄してもしなくとも軽水炉は手に入らないのですから、核ミサイルを放棄することはないでしょう。よって、双方ともに現状からの進展は得られず、北朝鮮が時々「ごねる」、米国や中国が「あやす」、韓国は北朝鮮が暴れたりしないように「何かプレゼントをする」という構図になってしまいます。ロシアは、米国の思惑を外すことが出来れば何でもよく、朝鮮半島や日本の安全保障に関しては、「お前ら、勝手に打ち合え」ってな具合でしょうか。
映画にありがちな緊迫したシーンで言えば、
人質を取った犯人が「アタッシュケースをこちらによこせ!」
ヒーロー刑事が「早まるな、人質を撃ったら、お前は死ぬぞ。まず人質を放せ」
犯人「ケースが先だ!」
刑事「人質が先だ」
犯人「ケースを渡さないと、本当に撃つぞ!」
刑事「撃てるもんなら撃ってみろ。お前を撃ち殺す」
犯人「本気だぞ」
刑事「分った、落ち着け」
犯人「だったら、ケースをよこせ!」
刑事「ケースを渡しても、お前は人質を放さないだろう」
犯人「・・・本当に撃つぞ」
刑事「やれるものなら撃て。その代わりお前は死ぬ」
犯人「ケースをくれたら、解放する」
刑事「人質解放が先だ、放せばケースを渡す」
犯人「先に解放したら、お前は撃ってくるだろ」
刑事「撃たないから、人質を放せ」
犯人「そんなの信じられるか、ケースをよこせ」
刑事「人質を放さないと今度は本当に撃つぞ」
犯人「ふん、撃てるわけない。ケースを渡せ」
・・・・・・
と言う具合に無限に続けられますね。この交渉は、人質(核ミサイル)が先か、アタッシュケース(軽水炉)が先か、というのが問題となり、どちらかが一方の要求を呑まない限り、永遠に終わりがないのです(笑)。刑事(米国)はケースを渡せば、人質と両方を手に入れられる可能性があって応じられないし、犯人(北朝鮮)は人質を放せば、ケースをくれるどころか撃ち殺されるかもしれない、と疑心暗鬼を抱くに決まっていますね。特に米国のような「バイオレンスデカ」は他でも犯人に乱射して犯人射殺を躊躇わない(イラン・イラクを見ればそう思うでしょう)という前科が既にあるわけですから、これを信じろと言われても中々信じられないでしょうけれども。
ということで、睨み合いを当面続けるしかない、という双方とも「すくみ状態」にあると言えるでしょう。北朝鮮が緩やかな体制解除などという道を選択するとは思えませんね。なので、今の所、六カ国協議の枠組みでは、事態の進展はない訳で、唯一残ったのは犯人と刑事を結ぶ、交渉の為の「電話線」という程度でしょうか。とりあえず、どちらも電話を切らないでおこう、という程度の合意しかないでしょう。
日本の立場は微妙でして、刑事と犯人が交渉している合間を縫って、犯人が欲しがる「アタッシュケース」以外の交渉材料を提示しなくてはいけないし、日本としては「拉致被害者」という、刑事と犯人双方の交渉材料とは当面無関係なものを要求しなければならないのですから。上の例で言えば、犯人が隠し持っている「渡したくないもの」を日本に渡せ、と刑事の背後から要求しているようなものです。この交渉を続けることは、結構難しいのです。
解決が難しい問題を後回しにして、北朝鮮の態度を変えさせるには、「罰を与える」か「褒美を与える」のいずれかしかないと思います。どちらの選択肢を用いるか、というのは外交戦略にかかっています。大体「褒美を与える」では効果が期待できないということも予想がつく訳です。もしも、それに応じるとなればとっくに解決しているでしょうね。罰を与えるのは勇気がいるのと、他のメンバー(米中露韓)が嫌な顔をするのが困るところです。ですが、六カ国協議が一定の成果を挙げてしまった後では、恐らく北朝鮮は応じてはこないだろうと思いますね。
なので、「人質」と「アタッシュケース」の膠着状態を見ながら、北朝鮮が交渉から降りそうにならない限り、「拉致問題、人道問題」を”大きな問題”として国際社会にアピールするしかないでしょうね。その為には強い態度でも止むを得ないかな、と。
米国と北朝鮮の言い分は、まるで日本の党首討論の時と非常に似ていました(国会空洞化現象)。それは年金改革に関して、小泉さんが「民主党がテーブルにつけば、一元化・納税者番号導入も検討する可能性はある」と言い、当時の民主党岡田代表は、「一元化・納税者番号導入を認めるならば、席につく」という主張を繰り返したのですが、これと本当に似た状況だな、と思いました。
米国は「核・ミサイル放棄なら、軽水炉提供を考慮してもよい」と言い、北朝鮮は「軽水炉提供なら、核・ミサイル放棄をしてもよい」という主張をしており、この議論は堂々巡りに終わることは、先の党首討論の例でも分る通りです。どちらかが譲歩するか、先決事項を確定しない限り、交渉が進展することは有り得ないのです。米国が北朝鮮の要求を先に呑むことは有り得ないだろうと思います。北朝鮮は、中国の出方を見ながら、米国の主張をかわす方法を新たに考えるか、交渉拒否を続ける道を選択することも可能です。北朝鮮にとっては体制維持が最優先であり、軽水炉を手に入れることの重要性などは低次元の問題だからです。エネルギー供給というのも、別に軽水炉に頼る必要性などある訳でもないでしょう。
北朝鮮の立場に立つとすれば、核ミサイル放棄ということの代わりになる、いわば「人質」が必要なだけです。核兵器を失ったとしても、北朝鮮国内に原子炉が存在するならば、その破壊やメルトダウンは十分な脅迫になり得るからだろうと思います。韓国や中国はえらい迷惑な話でしょうけれども、もしも核ミサイルを放棄して軽水炉を手に入れれば、「どこら辺に建設・設置するか」によって、脅威の程度が変わろうというものです。韓国国境寄りに設置され、万が一原子炉が破壊され放射能の広範な汚染地域ができてしまえば、立入禁止区域が朝鮮半島に誕生するだけです。その時に韓国がどの程度の被害を被るのか、ということだろうと思います。これが中国国境寄りに設置されれば、それはそれで中国が被害を被る立場ということになるかもしれません。つまりは、北朝鮮国内に常時置いてある「人質」みたいなものなのです。北朝鮮の狙いは、多分そういう意味なのではないか、と考えます。
朝鮮半島での軍事的緊張が高まったとして、米国が実際に北朝鮮に対して戦術核兵器を使用するかというと、まずないでしょう。当然核を用いずとも、旧式のガラクタ兵器しか持たない北朝鮮の貧弱な施設・設備では、通常兵器の攻撃でも十分な可能性が高いのではないかと思っています。ただ、北朝鮮のミサイル発射が全弾防げるかどうかは不明ですので、一部戦術ミサイルは発射されてしまうかもしれません。その着弾地点が韓国なのか日本なのかは、はっきりとわかりませんけれども。米国にしてみれば、先制攻撃によってミサイル発射可能地点を破壊できれば、特別核兵器を使用するという作戦を選択することもないのです。極々稀なケースとして、戦術核のオプションは考慮しているのかもしれませんが。
従って、北朝鮮が軽水炉を欲しがるという目的は、ただ一つ、「原子炉」という人質を国内にとっておく、ということ以外に有り得ないだろう、というのが結論です。米国はその目的を知っているでしょうから、先にそれに応じることは有り得ません。また、仮に北朝鮮が核ミサイル放棄に応じたとしても、原子炉提供は六カ国協議の中で「reject」とされる可能性が高いでしょう。よって、米国は北朝鮮の対応には無関係に、「軽水炉提供」という案を採用することは有り得ない、ということです。
北朝鮮は、これを考えれば、核ミサイルを放棄してもしなくとも軽水炉は手に入らないのですから、核ミサイルを放棄することはないでしょう。よって、双方ともに現状からの進展は得られず、北朝鮮が時々「ごねる」、米国や中国が「あやす」、韓国は北朝鮮が暴れたりしないように「何かプレゼントをする」という構図になってしまいます。ロシアは、米国の思惑を外すことが出来れば何でもよく、朝鮮半島や日本の安全保障に関しては、「お前ら、勝手に打ち合え」ってな具合でしょうか。
映画にありがちな緊迫したシーンで言えば、
人質を取った犯人が「アタッシュケースをこちらによこせ!」
ヒーロー刑事が「早まるな、人質を撃ったら、お前は死ぬぞ。まず人質を放せ」
犯人「ケースが先だ!」
刑事「人質が先だ」
犯人「ケースを渡さないと、本当に撃つぞ!」
刑事「撃てるもんなら撃ってみろ。お前を撃ち殺す」
犯人「本気だぞ」
刑事「分った、落ち着け」
犯人「だったら、ケースをよこせ!」
刑事「ケースを渡しても、お前は人質を放さないだろう」
犯人「・・・本当に撃つぞ」
刑事「やれるものなら撃て。その代わりお前は死ぬ」
犯人「ケースをくれたら、解放する」
刑事「人質解放が先だ、放せばケースを渡す」
犯人「先に解放したら、お前は撃ってくるだろ」
刑事「撃たないから、人質を放せ」
犯人「そんなの信じられるか、ケースをよこせ」
刑事「人質を放さないと今度は本当に撃つぞ」
犯人「ふん、撃てるわけない。ケースを渡せ」
・・・・・・
と言う具合に無限に続けられますね。この交渉は、人質(核ミサイル)が先か、アタッシュケース(軽水炉)が先か、というのが問題となり、どちらかが一方の要求を呑まない限り、永遠に終わりがないのです(笑)。刑事(米国)はケースを渡せば、人質と両方を手に入れられる可能性があって応じられないし、犯人(北朝鮮)は人質を放せば、ケースをくれるどころか撃ち殺されるかもしれない、と疑心暗鬼を抱くに決まっていますね。特に米国のような「バイオレンスデカ」は他でも犯人に乱射して犯人射殺を躊躇わない(イラン・イラクを見ればそう思うでしょう)という前科が既にあるわけですから、これを信じろと言われても中々信じられないでしょうけれども。
ということで、睨み合いを当面続けるしかない、という双方とも「すくみ状態」にあると言えるでしょう。北朝鮮が緩やかな体制解除などという道を選択するとは思えませんね。なので、今の所、六カ国協議の枠組みでは、事態の進展はない訳で、唯一残ったのは犯人と刑事を結ぶ、交渉の為の「電話線」という程度でしょうか。とりあえず、どちらも電話を切らないでおこう、という程度の合意しかないでしょう。
日本の立場は微妙でして、刑事と犯人が交渉している合間を縫って、犯人が欲しがる「アタッシュケース」以外の交渉材料を提示しなくてはいけないし、日本としては「拉致被害者」という、刑事と犯人双方の交渉材料とは当面無関係なものを要求しなければならないのですから。上の例で言えば、犯人が隠し持っている「渡したくないもの」を日本に渡せ、と刑事の背後から要求しているようなものです。この交渉を続けることは、結構難しいのです。
解決が難しい問題を後回しにして、北朝鮮の態度を変えさせるには、「罰を与える」か「褒美を与える」のいずれかしかないと思います。どちらの選択肢を用いるか、というのは外交戦略にかかっています。大体「褒美を与える」では効果が期待できないということも予想がつく訳です。もしも、それに応じるとなればとっくに解決しているでしょうね。罰を与えるのは勇気がいるのと、他のメンバー(米中露韓)が嫌な顔をするのが困るところです。ですが、六カ国協議が一定の成果を挙げてしまった後では、恐らく北朝鮮は応じてはこないだろうと思いますね。
なので、「人質」と「アタッシュケース」の膠着状態を見ながら、北朝鮮が交渉から降りそうにならない限り、「拉致問題、人道問題」を”大きな問題”として国際社会にアピールするしかないでしょうね。その為には強い態度でも止むを得ないかな、と。