新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

裏金議員が落選してもインフレは止まらない現実

2024年10月28日 12時15分25秒 | 衆院選挙

昨晩は、夕飯の後日曜日のいつも見ている番組が選挙結果一色の報道番組となり、珍しくウチのオバサンと2時間ほどテレビにくぎ付けになった。
 
自民党の裏金議員が小選挙区で野党議員に負ける結果が報じられるたびに夫婦で喜んでいた。
 
そしてすべての開票が終了した結果、事前に、ある程度は予想された「自公政権の過半数割れ」がいざ蓋を開けてみたら、今朝の東京新聞のトップ面が「自民惨敗」であった。
 
さらに連立政権の相手の公明党の新しい代表が自らの議席を失うという、誰もが予想だにしていなかったことも起きていた。
だからと言って、全野党が一緒になって政権を組むということは誰もが期待していなかった。
 
野党、自民への怒り追い風に 「立憲」と「国民」が受け皿 政権交代へ新局面 自公に変わる政権像は見えず
 

立憲民主党が躍進した。「政治とカネ」の問題を繰り返してきた自民党に対する怒りが追い風となり、政治に変化を求める有権者の期待の受け皿となった。国民民主党も議席を大きく伸ばした。野党は多くの小選挙区で候補者一本化を実現できず、自公に代わる政権の枠組みは示せていない。自公の過半数割れを受け、新たな政権の枠組みを巡る各党の駆け引きが活発化しそうだ。
◆「政治改革やってという思い結集」
 立民の野田佳彦代表は28日未明に記者会見を開き、「与党過半数割れが目標だったので、達成できたことは大きな成果」と語り「裏金問題について野党第1党が先頭に立ち、政治改革をやってほしいという思いを結集できた」と勝因を分析した。
 野田氏は選挙戦で「政権交代こそ最大の政治改革」と有権者に政権選択を迫り、自民党派閥の裏金問題への怒りを得票に結び付けた。自民に失望した一部保守層からも票が流れた可能性がある。
 野田氏は外交や安全保障政策では、自公政権との継続性を強調し、政権政党としての安定感をアピールした。党内外に「第2自民党になった」と不安視する声もあったが、立民幹部は「コアな支持層は離れていない」と自信を見せる。
◆野党間の選挙協力は進まず、自民批判票を奪い合い
 共産党とは距離ができたが、結果として保守層を取り戻すことにつながった可能性がある。野党間の選挙協力は進まず、野党系候補と与党候補の一騎打ちに持ち込めた選挙区は52で、前回から大幅に減らし、自民批判票を奪い合う状況となった。
 日本維新の会は、推薦した兵庫県前知事のパワハラ疑惑やトラブル続きの大阪万博を受け失速した。先の通常国会で自公両党と政治資金規正法改正案に衆院で賛成したことも、マイナス材料となった。前回維新に流れた改革保守系の無党派票は立民のほか、国民民主党に向かったもようだ。国民民主は「手取りを増やす」を掲げ、立民のリベラル色を敬遠した層にもアピールした。
◆自公政権入りについて「ない」と国民民主
 自公が過半数割れしたことで、今後は野党連携の行方が注目される。国民民主の玉木雄一郎代表は27日夜の民放番組で自公政権入りについて「ない」と否定。記者会見で「政権に入れば同意していないことも同意しなければいけない」などと理由を説明した。玉木氏は、所得税が課税される最低年収額を現在の103万円から引き上げる政策の実現に取り組む考えを示したが、立民などが掲げる企業・団体献金の禁止は否定した。維新の馬場伸幸代表も連立入りは否定した。
 立民の野田氏は「抜本的な政治改革を推進する一致点があるなら広く協力できる。野党で連携して法案を出せるようにしたい」と強調。「自公政権を望んでいない、(解散前に)不信任案を出した政党とは合意点を探せることは十分あり得る」とも述べ、国民や維新、共産との連携に意欲を示した。

 


 
ところで、政治評論家でも政治ジャーナリストでもない文筆家の御田寺 圭がこんな視点から自民の惨敗を分析していた。
 
石破自民が無惨なボロ負け、「誰も気づかなかった本当の原因」とは…麻生太郎の陰謀でも、高市早苗のクーデターでもなかった
 
■交付金2000万円」への違和感
第50回衆院議員選挙の投開票が行われ、自民党の大幅な議席減が確定した。自公あわせても過半数に満たず、大物議員や現職大臣、さらには公明党代表などが次々と落選する、近年まれにみる与党の大敗となった。

自民党は今回、「裏金問題」が決着を見ることなくくすぶるなかで、苦しい選挙戦に臨むこととなった。その逆風をさらに強める「ダメ押し」の一手となったのが、共産党の機関紙である「しんぶん赤旗」の10月23日の報道だった。非公認の候補が代表者を務める自民党の政党支部に、総選挙の公示後、党から政党交付金2000万円が支給されていたことが明らかになったのだ。
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〈今回の衆議院選挙で自民党から公認されなかった候補者が代表を務める政党支部に、党本部が選挙の公示後に2000万円を支給していたと、一部で報じられました。森山幹事長は「党勢拡大のための活動費として支給したものだ。候補者に支給したものではない」とするコメントを発表しました。
今回の衆議院選挙では、政治資金収支報告書に収入を記載していなかった自民党の前議員10人が、党から公認されず、無所属で立候補しています〉(NHK NEWS WEB「“自民 非公認の候補者が代表の政党支部に2000万円支給”報道」 2024年10月24日より引用)
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個人的には自民党を支持しているわけではないので擁護をしたいわけでもないのだが、それでも公正を期するため付言しておくと、野党(およびその支持者)やメディアはこれを「裏金だ!」とか「不正だ!」といった論調で非難したが、あくまで政党支部に支給される政党交付金であって、個人に支給される政策活動費とは別物だ。手続きに不正なプロセスがあったわけではなく、規則に準じて行われたものであり、法的にも問題はない。

しかしながら、たとえ「合法であり、手続き的にも正当」であっても、「裏金問題で非公認になった議員が代表を務める支部に、満額の交付金が支給されること」に世間が納得するかどうかは別の問題だ。自民党は、こうした“道義的論難”を受けるリスクがあることを想定しておかなければならなかった。とくに今回の衆院選のように、最初から逆風が強烈だった選挙戦に臨むにあたってはなおさらだ。
たとえ合法的なプロセスであったとしても、対外的に「筋が通らないじゃないか」とか「事実上の公認料ではないか」といった批判を受けうる“隙”を与えるべきではなかっただろう。裏金議員の非公認を決めた段階で、その議員が支部の代表を兼務している場合は退任させて、別の代表者を立てるなどしておけばよかったのだ。

今回は選挙戦の最終盤でも、まだ4割近い有権者が態度を決めかねていたようだ。この報道を受けて最後の最後で自民党への投票を止めた有権者は少なくなかっただろう。
……しかしながら、冷静に考えてみればある種の違和感も覚える。
■不自然すぎる「脇の甘さ」
というのも、「非公認になった裏金議員が支部の代表を務めている状態で、支部が交付金を満額受け取ったら、政敵やマスコミからよからぬ言いがかりをつけられるリスクがある」ということに、党内のだれも気づかなかったというのは常識的に考えてありえないからだ。
その辺の有象無象が集まった泡沫政党ならともかく、百戦錬磨の自民党が、このようなリスクをだれひとりとして事前に全く想定していなかったというのは現実的に想像しにくい。いくらなんでも脇が甘すぎる。
私は最初「石破首相を後ろから撃っている(≒高市総理爆誕を諦めきれない)人が赤旗にリークしたのか?」と陰謀説じみたことを考えたりもしたのだが、かりにそうだとしたら、自民党が壊滅状態になってしまうような状況をあえて引き起こしてから高市総理にバトンタッチするのは好ましくない。もっと穏当な形で「石破おろし」を画策するのが妥当だろう。自分たちの議席を失うリスクを猛烈に広げてまで石破失脚をねらうのは、合理的な行動ではない。よって「リーク説」はそこまで妥当ではない。
本件を含め、選挙戦始まって以降の自民党のゴタゴタについて「石破失脚をねらった陰謀・クーデター」の類いではないとしたら――と改めてじっくり考えてみたのだが、真相はもっと卑近というか、いうなればごくごく“下世話”な話だったのではないかと思い至った。
端的に結論をいうと、自民党やその関係者の持つ「石破首相のために!!!」という“熱量”が、現場で動く人びとそれぞれの中で、ちょっとずつ小さかったのではないか――ということだ。
■陰謀でもクーデターでもなく
もう少しわかりやすくいえば、「石破さんのために、徹底的に細かい部分までチェックして、一分の隙も出ないようにバックアップしなきゃ!!」と奮起する気持ちがみんな微妙に少なく、だれもがちょっとずつ手を抜いていた。それが積もり積もった結果として、思いもよらない局面で極大の地雷が爆発してしまった――といった流れが実情に近いのではないだろうか。
麻生派の陰謀でもなければ、高市氏らのクーデターとかでもなく、だれもがちょっとずつ、(ほとんど無意識的に)ごく小さくサボってしまい、他のリーダーならけっして見落とさなかったであろう部分も「なあなあ」になってしまった。そういう“ゆるみ”から生まれた隙を赤旗が見逃さなかったのだ。
これは、企業勤めの人には馴染みのある光景もしれない。主流派の出世街道から外され、同僚や部下からも人望が薄く、普段なにをしているのかもよくわからない、会議に来たらなにか言っているようで何も言っていない空虚な発言ばかりをくり返して辟易され、しかし終身雇用に守られているので首だけは切られないで済んでいる、「お飾り」感のある名ばかり管理職。そんな人物が治める部署に、上役の気まぐれで急に大きめの案件が降ってきたときに起こるアレと同じだ。
■「石破さんのために尽くす」人がいなかった
「この人に恥をかかせるわけにはいかない!」と、部下が一丸となって頑張るムードが生まれず、ちょっと緩んだ雰囲気をだれもが感じつつ、それでもとりあえず「事務的」にやることはやる。途中で「ん……待てよ……『コレ』ってもしかして、放置してたら後でヤバいことになるんじゃないか?」と直感が告げるような“なにか”を見つけても、いちいち報告を上げるようなことはしない。
「まぁ、報告したって『おまえが処理しろ』とか言われそうでめんどくさいし……黙ってればいいか」と、悪気なくちょっと手を抜いてしまう。そうしてだれもが見て見ぬ振りをしていた『アレ』がじつは極大の地雷で、ここぞという大事な場面で爆発――という具合だ。皆さんの会社でも似たようなトラブルに覚えはあるのではないだろうか。新首相就任後の自民党のゴタゴタ感は、つまりそういう話だったのではないだろうか。
かりに安倍晋三や岸田文雄がリーダーだったなら「総理!! これ絶対あとでヤバいことになります!!!」と飛び込んでくる腹心が少なからずいたはずだ。だが石破首相の場合は「まあ石破さんだし、そこまでしてやる義理はないか……」と、だれもが無意識的に判断して、熱量高く「石破首相のために頑張るぞモード」になってがむしゃらに動くことができなかったのではないだろうか。
いま思えば、石破氏が総理に就任したときに撮影したあの集合写真の騒動も、人望のなさとそれに起因する周囲の熱量の小ささによって重大なインシデントが起こることを暗示する、ある種の「伏線」だったように見える。
■だれも「まずいですよ」と言ってくれない
いま思えば、石破氏が総理に就任したときに撮影したあの集合写真の騒動も、人望のなさとそれに起因する周囲の熱量の小ささによって重大なインシデントが起こることを暗示する、ある種の「伏線」だったように見える。
皆さんも覚えているはずだ、内閣発足時に撮られた写真の騒動を。石破氏はサイズ感が合ってないダボダボのモーニングを着用し、お腹はシャツがはみ出して「地肌が露出しているのではないか」と大騒ぎになり、さらに新品のメガネには使用時に剥がすべきロゴシールが貼られたままだった。
モーニングのサイズ感は急な総理就任で誂えが間に合わなかったという理由もあるかもしれないが(それだって総理大臣ともなると高級百貨店が特注を受けてくれるのだから、対処できないことはないはずだ)、さすがに腹が出ていたりメガネのシールがそのままだったりするのは、「だれかが指摘すればすぐに直せる」たぐいのものだ。しかし、石破首相はだれからの指摘も受けることなく、そのままパシャリと写真に納まってしまった。
これも結局のところ「ククク……石破のヤツに出鼻から恥をかかせてやろう」と反石破系のだれかが邪な企てを行ったのではなく、「石破首相に恥をかかせるわけにはいかない!!」と誰も本気では考えない程度に、みんなの“熱量”が小さかったせいで生じたハプニングだったのではないだろうか。
「あっ……、もしかして石破さん腹出てね?」とうっすら気づいた人は複数人いても、そこから踏み込んで【じっくり見て確認して本人に直接指摘する】ところまで、本気で石破首相のために動く気になった人はいなかった。本当に些細な熱量の違いでうまれた小さな行動の違いかもしれないが、それが後になって大きな「綻び」として露呈してしまったのだ。
「大事な集合写真でお腹露出」と「選挙終盤で2000万円の地雷が爆発」は無関係ではなく、党内の「石破首相のために!!!」というエモーションの小ささが招いた、同じ延長線上のアクシデントだったのではないかと思わずにはいられない。
■「人望のなさ」が致命傷になった
自民党というのはよくもわるくも「伝統的日本組織」である。大企業的というか体育会的というか自治会的というか、ロジックを軽視するわけではないにしても、究極的には理屈ではなく「気持ち」で連帯を強める共同体主義的な部分が大きい。
理屈を超えた「気持ち」で結束を強める組織なので、リーダーを務める者の求心力や日頃の行いや人望がそのまま「組織のパフォーマンス」に大きく反映される。強い求心力を持つリーダーのもとだと、どの政党よりも一丸となって行動する結束力と実行力を発揮できるが、そうでないリーダーだとすぐにみんなバラバラになるし、細部の詰めが甘くなり、思わぬ失態を招く。
逆に、自民党のような「気持ち」ではなく、「ロジック」を重んじる政党(たとえば立憲民主党や日本共産党がその典型だ)は、自民党ほどの強烈な最大瞬間風速は出せないが、かといって「人望薄めのリーダー」が出てきてもそこまで総崩れにならない。よくもわるくも「この人のためになら俺はすべてを賭ける!!!」という浪花節で仕事をしている人が乏しいからだ。
石破茂という政治家がとくべつ無能とは思わない。だてに12期も代議士を務めているわけではない。しかし自由民主党という政党のリーダーになるには不向きだったと言わざるを得ない。立憲民主党や共産党のリーダーとしてなら適性がマッチするタイプの人だっただろうと思う。自民党では「人望のなさ(≒本気になってくれる人の少なさ)」はかなり重大なアキレス腱だ。情熱と忠誠をもって細部までしっかり詰めてくれる献身的な仲間の不在は、自民党のような「清濁併せ呑む」タイプの政治家が集まる組織では命取りになるのだ。
自民党が議席数200を割り込む大敗を喫したいま、石破首相の責任問題に発展することは避けられない。わずか1ヵ月あまりでの総理総裁の交代も視野に入るだろう。自民党関係者から聞くところによると、「総裁選なしで急遽代替わりするなら、直前に行われた総裁選の順位に基づくのが道理というものだ」といった声があがっているようで、本当にその方向性で自民党がまとまるなら、日本初の女性総理誕生も現実的な可能性として出てきたといえる。
空中分解状態となった自民党は、はたして結束を取り戻せるだろうか。


 
オジサンの個人的な思いからすれば、「空中分解状態となった自民党」はそのまま崩壊してくれれば、「夢ではない『自民党が消えた日本』」になるかもしれない。
 
しかし「呉越同舟」で「魑魅魍魎」の自民党がそう簡単になくなるわけがなく、少なくとも石破茂が来年の参院選までは引責辞任などはするはずがないことは確かである。
 
そうなれば来月の臨時国会で首班指名された石破茂が第二次石破内閣として直ちに行うことは当然ながら経済問題であろう。
 
自公過半数割れ、連立政権風前の灯火で「経済」は後回し…!それでも次の政権が絶対に実現すべき「経済政策」はこれだ
  
■極めて弱い政権基盤での経済財政運営
総選挙は、自民党は単独過半数割れ、公明党を加えた連立与党も過半数割れ、という結果になった。今後の政権の形がどうなるのか、自公連立か、あるいは別の形になるか、現時点では分からない。以下では、自民党を中心とする連立政権が登場するとの前提の下で、政権に対しての要望を書くこととしたい。どのような形の政権になるとしても、政策運営が極めて難しくなることは避けられない。
基盤が弱い政権は、大きな改革に手をつけることが難しい。とりわけ、負担の増加を伴うような政策はそうだ。そうでなくとも、政権は国民負担の増加を伴う施策を後回しにする傾向がある。この傾向は、今後の政権においては、顕著なものになるだろう。そして、本来必要とされる政策が手をつけられずに放置される事態が頻発するだろう。
こうした状況のもとでは、「負担問題から逃げるな」と叫ぶだけでは、事態は改善しない。現実の制約下でいかに問題を極小化できるかを考えていかなければならない。
以下では経済財政政策について、政権に注文をつけることとしたい。
■実質賃金引き上げの具体的プランを示せ
石破政権が続くか新政権となるか、いずれにしても第一に行うべきは、自民党が総選挙で公約した「実質賃金引き上げ」を実現することだ。
国民は、日々の生活条件がこれ以上悪化しないこと、できれば将来にむかって向上していくかどうかによって、政権を採点する。その指標となるのが、実質賃金の動向だ。
実質賃金は、今年の5月まで26ヶ月連続でマイナスの上昇率だった。6、7月にプラスになったが、8月には再びマイナスになった。
この状態は、決して放置できるものではない。問題はこれを改善するために、いかなる方策をどのようなスケジュールで行うかである。
自民党は、そのための手段として、最低賃金の引き上げや、財政支出などを掲げている。しかし、最低賃金の引き上げは、経済全体の実質賃金の引き上げには直接寄与しないだろう。また財政支出で賃金を上げることもできない。
企業が賃上げを転嫁できるようにしても、だめだ。転嫁された賃金上昇は物価を引き上げるので、実質賃金を上げることにはならないからである。
実質賃金の低下傾向は、最近のことではなく、90年代の中頃から継続している問題である。この傾向を逆転させるためには、生産性の引き上げが不可欠だ。そのためには、新しい技術の導入や人材の育成が不可欠だ。このように、実質賃金の引き上げとは、経済構造そのものを大きく改革することなのである。石破氏が掲げた地方創生プランは、こうした目的にはまったく不十分だ。
■年金改革は放置できない
制度改革が必要な経済・財政問題として、年金改革がある。来年度は年金改革の年であり、対処が必要な課題は24年7月に公表された財政検証に示されている。特に重要なものは次の3つだ。
第一は、国民年金の給付額が低下していくことに対する対策。第2は、サラリーマンの世帯の専業主婦が、保険料を支払わずに基礎年金を受給できる制度(3号保険者制度)をどのように見直すか。第3は、退職老齢年金(年金受給年齢になっても給与所得を得ていると、年金の一部をカットされる制度)の廃止。これらの問題の処理には、財源措置が必要になるものもある。
年金問題はすべての国民の老後生活に関わる重大な問題であり、放置するわけにはいかない。どのような見通しに従って改革を進めるかを明らかにする必要がある。
社会保障制度の問題としては、これ以外に、医療保険や介護保険における保険料率と自己負担率引き上げの問題がある。
この問題には、金融資産所得に対する課税の問題が深く関わっている。石破氏はこの制度改革を従来から指摘していたが、自民党総裁就任直後に株価の下落に見舞われて封印してしまった。これは岸田内閣の場合と全く同じ経緯だ。本来であればこの問題を再び取り上げて欲しいものだが、政権基盤が弱体では、とても無理かもしれない。
この問題に限らず、社会保障制度の問題は重要だ。その問題の多くは、財源措置を要するものであり、新たな財源が必要だ。ところが政権基盤が弱ければ、とてもそうした課題に手をつけることができないだろう。日本の社会保障制度がこれから維持できるのかどうか、極めて心配だ。
■バラマキ経済対策をやめよ
政権基盤が弱い政権が取る政策は、人気取りのためのバラマキ政策だ。今後の政権もこの道に突き進んでいく危険が大きい。
自民党は、総選挙で、選挙後に経済対策を行うことを約束した。公明党も物価対策を行うことを選挙で公約している。したがって、物価対策として、電気・ガス料金の補助、ガソリン料金の補助を継続することとなる可能性が高い。
この政策は、物価高騰に対する緊急策として導入されたものだ。電気・ガス料金補助は、今年5月にいったん停止されたが、8月から10月まで一時的に復活した。
しかし、この政策には問題が多い。まず、価格を本来の水準より低下させることになるので、エネルギーの節約に反する。また、高額所得者や、利益が増加している企業も受益する。
さらに、消費者物価指数が実態とかけ離れた数字を示してしまうことになる。先に、実質賃金の問題を述べたが、実質賃金を正確に測定するためには、消費者物価が正確なものでなければならない。ところがその消費者物価が、物価対策によって不規則な動きをしてしまうのだ。物価が上がっているのか下がっているのかさえ分からなくなってしまう。これは、壊れた体温計のようなものだ。日本はいま、自分の体温がどうなっているのかを正確に知りえない状態になっている。これは誠に由々しき事態だと考えざるを得ない。 
自民党は、経済対策の規模に関して、一般会計の歳出総額で13兆円超になった2023年度の補正予算を上回る規模にするとしている。本来、予算額は、必要な経費を決めた後の結果として決まるものだ。中身が決まっていないのに予算額だけが先行するというのは、誠におかしな事態だ。
コロナ期以降、補正予算でばらまき政策を行うことが慣習化してしまった。必要性の疑わしい政策を、国債の発行で賄う政策だ。基礎的財政収支を25年度に黒字化するという目標は、とっくに忘れ去られているようだ。
■物価を引き下げるには金融の正常化が必要
すでに日本銀行は金融正常化を進めており、石破氏も、自民党総裁選まではアベノミクスの検証が必要であるとの持論を展開していた。ところが、石破氏はその後、180度の方向転換をした。10月2日には、首相官邸で植田和男日本銀行総裁と会談後、「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と記者団に述べた。
しかし、実質賃金を引き上げるためには、まず物価上昇を食い止めなければならない。そのための最も重要な政策は、金融正常化を進めて、為替レートを円高に導くことだ。少なくとも、日銀の政策に圧力をかけて、利上げのスピードを抑えることではない。

 
年金生活の我が家では、買い物から帰ってくるオバサンが「またリンゴやトマトが値が上がった」などと毎日のように怒っている。
 
この怒りは新政権になっても当分は続くのだろう、とオジサンは思う。   

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