地方自治体の財政力を示す指標に財政力指数という数値がある。
基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値なのだが、専門用語でいえば、「 財政力指数が高いほど、普通交付税算定上の留保財源が大きい」ことになり、財源に余裕があるといえる。
家計に例えれば収入と支出が同じならば「1.0」となり、数値が高いほど貯金額も増えるということ。
したがって1.0を上回る自治体には地方交付税交付金が支給されず、「財政健全度」全国トップ400自治体ランキング」などには入っていない下位の自治体は地方交付税交付金頼りとなる。
そして、その交付金を支給する元締めが総務省である。
そんな関係から財政が健全でない、「『貯金の多い・少ない市町村』全国ランキング400」のような自治体は常に総務省からの指示には逆らえないという事情がある。
前置きが長くなったが、五輪開催までに何とかすべての高齢者にワクチンを接種させたいと目論んでいた菅義偉は、本来ならば厚労省主管にもかかわらず、自分の出身省庁の総務省を使って、新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種の前倒しを求め、総務省職員が自治体に繰り返し電話させていた。
当然国会でも取り上げられていたが、菅義偉の命令を実行した担当大臣は、「武田総務相、『圧力』を否定 自治体への高齢者接種前倒し要請」との記事では、「課題を聞いて厚生労働省などに伝え、解決に努めてきた。自治体の抱える問題を一緒に解決していくのは間違ったことではない」と筋の通らぬ言い訳をしていた。
同じようなことが最近も起きていた。
そもそも、本来ならばコロナ対策の主管省庁は厚労省なのだが、なぜ「経済再生担当相」がコロナ対策の政府のスポークスマンになっていたのかという裏事情はいろいろとささやかれていたが、国民からみれば「コロナよりも経済」と見えてしまう。
それは、昨年の緊急事態宣言が延長され5月25日に解除された以降、まだ収束を見ないにもかかわらず夏には「GoToキャンペーン」を始めた当時の安倍晋三と同じように菅義偉も経済優先を続けてきたことからもうかがわれる。
さて、「政権擁護紙」と揶揄されている産経新聞。
発行元は、「株式会社産業経済新聞社」であり、その名の通り「経済産業省」とは良好な関係を持っている。
その産経新聞が、経産相ではなく西村康稔経済再生担当相の突然の要求に経済界の苦言を報道していた。
新型コロナウイルス感染拡大の抑制に向けた取り組みをめぐり、経済界が政府からの突然の要求に困惑している。政府は今月に入り、在宅勤務などのテレワークの企業ごとの実施水準の公表や、企業の診療所を使った地域住民へのワクチン接種を経済界に要請。しかし経済界は企業活動の実態を踏まえれば、満額回答での実施は難しいとの立場だ。これらの要請は担当大臣が経済界との会談の場で事前の打診もなしに打ち出したという経緯もあり、政府の調整力不足への不満も出ている。 「特に上場企業はテレワークの状況、出勤者数の状況を公表していただく」 西村康稔経済再生担当相は11日の記者会見で、経済界に対してテレワークに関する情報開示を求めた。 5月の連休が明けて企業活動が再開する中、出勤者数の7割減を達成するため、企業がより積極的にテレワークに取り組むよう促すのが狙い。テレワークの実施率は全国では約2割、首都圏の1都3県では約3割での横ばい傾向が続いており、西村氏はテレワーク情報の開示は学生が就職先を選ぶ際の参考にもなると意義を強調した。 しかしこの後に西村氏とテレビ会議を行った経済界のトップらからは厳しい反応が相次いだ。小売業や建設業などテレワークが難しい企業も多く、実施水準の低い企業のイメージを悪くするような仕組みは容認できないためだ。 日本商工会議所の三村明夫会頭は「主要企業に協力を要請するが、対応が難しい業種への配慮を求めたい」と苦言を呈した。また経団連の古賀信行審議員会議長は「企業ごとの実施状況のパーセンテージ(比率)が独り歩きすることがないように配慮を求めたい」とした。 経済産業省は18日から企業がテレワーク情報を提供しているホームページのリンクをまとめる形で各社の取り組みを公表している。しかし企業数は25日時点でも573社にとどまる。 一方、河野太郎行政改革担当相は経済界に対し、企業が所有する社内の診療所や病院を活用し、社員だけでなく、地域住民も対象にしたワクチン接種への協力を要請した。経団連の冨田哲郎副会長は13日の河野氏との会談後、ほぼ全面的に協力する考えを示した。 だが、経済同友会からは、企業内診療所での地域住民接種はセキュリティー面で課題があり、難しいとの声も上がる。日商の三村会頭は「中小企業では産業医は掛け持ちのケースが多く、(職場での)職域接種自体が難しい」と指摘する。 昨年来、経済界は政府の在宅勤務要請など、さまざまなコロナ対策に全面的に応じてきた。しかしこうした要請では、政府側が内容を事前に打診するなどして実現可能性を把握したうえで、公にしてきたのが実情だ。 ある経済界の関係者は「会談の日程だけ決められて、その場で大臣にこれをやってほしいといわれても、現実問題としてできないこともある」と強調。結果として経済界が応じられなかった場合、「コロナ対策に非協力的なように見えてしまう」と困惑する。 コロナ対策では今後も官民の連携が欠かせないが、「いきなりの指示や要請は困る」(関係者)というのが経済界の本音だ。(平尾孝) |
東京都の1日の感染者数が「高止まり」している原因には「人流」が削減されていないという単細胞的な発想から、テレワークの実施率を上昇させたいとの理由らしい。
満員の通勤電車に揺られ職場に向かう勤労者たちを強制的に「STAY HOME」できないからと言って、単純にテレワークで出勤者の数を減らせという要請には限界がある。
本来ならば、国の経済を支えている人々を安全な環境で働いてもらうのが最善の策であり、ワクチン接種順位も「医療従事者」に次いで現役の勤労者たちにワクチンを接種してもらい安心して大いに働いてもらうほうが現実的ではなかったのだろうか。
我が家近くの高齢者たちがワクチンを接種し始めているのだが、日常的に「3密」を避けて生活している高齢者たちを地元から遠い場所で「集団接種」させるために、わざわざ公共交通機関を使わせるという発想も理解しがたいものがある。
そのワクチン接種率を上げるためにも、31日で切れる緊急事態宣言を延長することがほぼ決まったらしいが、ただ単に延長すればいいというわけではない。
「日本医師会・中川会長が今度は〝寿司デート〟報道 『国民の手本になるような団体じゃない』」とスッパ抜かれた男が、偉そうなことを言うなと突っ込まれそうだが、本人は、宣言を解除する目安として、東京の新規感染者数が100人以下になることを目指すべきだとしたうえで、解除にあたっては専門家の意見を尊重すべきだという考えを示していた。
「日本医師会会長 宣言延長同意も“解除の具体的目標示すべき”」
まあ、私生活はともかくも日本医師会会長の立場からは当然の指摘であろう。
それにしても、今後も「自粛要請」や「酒類提供禁止」などが続くのならば、科学的な根拠を基にした線引きが必要となるべきである。
「東京都の休業要請に一部緩和案 緊急事態宣言の再延長後、百貨店や映画館など」
【東京 きょうにも宣言延長を要請】https://t.co/NaElQ7YY5h
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) May 26, 2021
東京都は今月末で期限を迎える緊急事態宣言について、きょうにも政府に再延長を要請する方向で調整に入った。 小池知事は「(宣言の)一定の効果は出ているものの、まだ収まりきっていない」。
それにしても緊急事態宣言延長は現状から当然なのだが、昨年実施された「持続化給付金制度」は終了しており、家賃支援給付金の給付事業もなくなった。
そして「休業要請と補償はセット」ということも最近は聞かれなくなってしまっている。
まさか「With コロナ」だから、メディアもあえて報道しないということならば、メディアの使命放棄ではないだろうか、とオジサンは思う。
【付録】(文春砲)
「IOC重鎮委員が独占告白『菅首相が中止を求めても、大会は開催される』」
「私が知っている限りでは、日本政府は非常に協力的だ。五輪の開催は、日本の当局、日本の公衆衛生当局、そしてオリンピック・ムーブメント(IOCなどの活動)が共有している決定だ。仮に菅首相が『中止』を求めたとしても、それはあくまで個人的な意見に過ぎない。大会は開催される」