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「新文物検疫所」とは、カン・ジヨンという新進女性作家が書いて評判になった本のタイトルです。
11月28日の記事で「2週間後くらいには紹介できそう」と書きましたが、予告よりかなり早く読み終えたのは、読み進むほどにおもしろく、他のやるべきこともうっちゃつて読みふけったからです。
今年一番感動した本といえば申京淑「オンマをお願い」ですが、一番おもしろかった本はこれです。(日本語の本も含めて。)
私ヌルボがこの本を読むきっかけになったのは、10月19日の記事に記した「東亜日報」<記者の目>のパク・ソニ記者の記事。最近注目の次世代大衆作家として、このカン・ジヨン(강지영)の本が「コメディとロマンスを混合させた時代物」として紹介されていました。
*** 時代小説で、ユーモア小説で ***
・時代は17世紀初頭。舞台は漢陽(現ソウル)。物語は主人公ハムポクペが難産の末に生まれる場面から始まりますが、そこからして「いきむとウンコが出そうで・・・」とか、何じゃ?という描写。その後一言も物を言うことなく育ったポクペですが、10歳の時に6歳下の少女ヨンジに会って初めて話し始めます。
・ポクペは20歳になって科挙の試験を受けに行きますが、試験直前に尿意を催してトイレに行ったりしたため、いい席が取れず、受かりはしたものの遠く離れた済州島に赴任することになります。
・済州島での職位は新文物検疫所の所長。外国から入ってきた新奇な品物の用途を研究して報告する仕事。最初は円い布が2つ眼鏡のようにつながっていて、端に長い紐がついている。お尻に着けるものでは、との意見もあったが、ポクペは「お尻には小さすぎるし、官吏がかぶる頭巾でしょう」という説を採り、「不峩者(ブラジャ)」と命名して自ら被ったりします。
・その後島に漂着した肌が白く髪の黄色い人間が登場します。ホランドから来たベルテプルとのことですが、言いにくいので<パク・ヨン(朴延)>という名を与えます。彼はポクペの頭の「ブラジャ」を見て笑い、絵を描いて説明しようとしますが、ポクペはそれを春画と誤解します。しばらくして、ヨンジとその父が済州島に来ますが、<春画>をめぐって一騒動も起こります・・・。
新文物の一つに、「痔を治療する道具では?」と部下が推定した物があり、実際に試してみますが、結局それはパク・ヨンにより歯ブラシだったということが判明! また最初女性が針仕事に使う指貫と思われる小さな袋には「困導敉(コンドミ)」と命名。しかしこれも後で間違いが判明。(発音は近いが・・・。)
*** ミステリーもあり、ロマンもあり ***
・ところが、島で結婚をひかえた女性の殺人事件が起こります。それも連続して・・・。犯人はわかりません。被害者の手に握られていたのは新文物の時計。物語のにわかにミステリー展開に・・・。
・殺人事件への対応だけでも大変なところに、漢陽からなんと鼻長(코길이.コギリ)、すなわち象(코끼리.コッキリ)が送られてきます。人を踏み殺して流罪になったのです。象の飼育係のミホも働き者でなかなか魅力的な娘です。
・新文物の石鹸の用途はすぐにわかり<飛陋(ピル).비루>と名付けます。(韓国語で石鹸はピヌ.비누です。) しかしその後、象がその石鹸を食べてしまい大騒ぎに。なくなった石鹸の代用品を自分たちで作ろうと、ポクペたちは子どもの小便とかも試すなどした結果、いい香りのそれらしい物を作るが泡も立たず代用品にはなりません。しかし別の用途を見出だし、「露巽(ロソン)」と命名。(つまり、ローションですね。)
・連続殺人事件の犯人では、ポクペが考えたソン・イルヨンは実は暗行御史だって? また彼はヨンジと親しくなっているようで、ポクペは内心あせります。
一方、「恩人に会いたい」というミホのたっての願いで、男装したミホとともにポクペは妓生房を訪れます。・・・そこから物語は読者の予断を許さない、手に汗握る展開になっていきます・・・。
※オランダ人ベルテプルすなわちウェルテフレーは1627年朝鮮に漂着した実在の人物で、朴延の名を与えられて帰化したというのも史実だそうです。「朝鮮新報」のサイト中に彼について触れている記事がありました。
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