韓国で仕入れてきた「無限動力(ムハントンニョク.무한동력)」(全2巻)という漫画、帰国の飛行機から読み始めて4日間で一気読みしました。今まで知らなかった漫画家の単行本を数冊、テキトーに目星をつけて買ってきたのですが、その中で最初に読み始めたのがコレです。
第1巻の表紙(上写真)のタイトルの上に「われわれの時代の若者たちの必読書」、下方に「88万ウォン世代の希望探し」とあり、その言葉に惹かれて購入したというわけです。
主人公は兵役を終えて大学4年に復帰した青年チャン・ソンジェ。入隊が遅かったため、もう27歳(数え年)。金融関係への就職を目指し、下宿生活を始めます。
ところが、他の下宿人はというと、獣医学部に在籍はしているものの「動物を触れない」ということで部屋にこもって公務員をめざして勉強している(といいつつゲームにはまっている)25歳の大学生、そして大学に入ったが親が仕事で失敗したためにやめてネイルアートの店で働きつつ借金の返済をしている同い年の女性。
つまり、まだ社会に安定した場を確立していない若者たちです。
下宿の主人は工具店をやっていますが、彼が若い頃から打ち込んでいるのが<無限動力>。日本では<永久機関>という方が一般的ですね。工具店も<無限動力>の製作に便利だからやっているようなももの。<永久機関>という、初歩の物理学でも否定されている夢を追い続けている変人。
父親よりしっかりしてそうなのが高3の娘で、母が交通事故で亡くなったため家事も下宿の管理等もきっちりやってますが、当然進路選択の問題に直面する時期です。高1の弟は無口で、人づきあいが苦手な少年です。
このような設定だと、物語の展開は深刻なものになりそうですが、それが逆なんですねえ。
この下宿の規則の1つが、毎日の朝食は皆そろって食べるというもの。ホントに韓国ではそんな下宿もあるのかなあ? 日本だったら「うざったい」と敬遠されるでしょうが・・・。
その他、すでに就職した友人との交流とか、下宿の主人+無限動力のテレビ出演とかいろいろあって・・・。
・・・その後の具体的な筋は紹介しませんが、韓国語中級以上の人なら→コチラのサイトで1話から見られます。セリフ等文字部分も(「食客」のホ・ヨンマンのように)多くないし、展開も(カンプルのように)複雑でなく、わかりやすいです。
著者チュ・ホミン(주호민)は1981年生まれ。兵役を終えて、自身の軍隊生活を率直に描いた漫画「チャム(짬)」を漫画サイトで連載して好評を博し、2005年本として刊行。この作品で2007年新人作家賞を受賞しました。
彼の第2作が2008年から韓国YAHOOのサイトで連載したこの「無限動力」で、今年102話で完結し、7月単行本として刊行されました。
今年4月の朝鮮ドットコムに載っていた記事によると、彼の父母はともに代表的な美術系大学の弘益(ホンイク)大出身の画家とのことです。
彼もアニメーション科の入試には失敗したが、絵を描く才能はあったので漠然と志願したものの、兵役を終えた後戻ってみると、進もうと思っていたアニメ科がなくなっていて、「腹立ちまぎれに大学をやめてみると、1日で高卒のペクス(백수.白手.プータローのこと)だったですよ。近所の大型マートで働いたんですが、月給が80万ウォンでした」。
その後新しい文化のウェブトゥーン(ネット漫画)が出版漫画よりハードルが低かったので「チャム」を連載することになり、プロ漫画家としてデビューできたというわけです。
彼は自分の漫画について次のように語っています。
「無限動力」はTVに出ていた無限動力研究者を見て、この研究者が強調する夢と、20代の若者の無気力を対照させるという設定を思いつきました。・・・・夢に対する温かい話を盛り込みました。」
「今も締め切り前に必ず還暦を越えた母に見せます。母が読みづらければ、用語や内容を修正します。漫画は何よりもおもしろさと満足感がいちばん重要だと思うんです。私は老若男女誰もが楽しく読める温かい漫画を描きたいです。」
【(左上)ソンジェ「だけど・・・夢は飯をくれないじゃないですか・・・」
(右上)下宿の主人「今おまえに必要なものは飯じゃないぞ」
(左下)下宿の主人「死ぬ直前に・・・」
(右下)下宿の主人「食えなかった飯を思い出すだろうか? それとも、かなえられなかった夢を思い出すだろうか?」】
※彼が<好きな漫画>としてあげているのがキム・スジョン(김수정)の「7つのスプーン(일곱 개의 숟가락)」とイ・ヒジェ(이희재)の「看板スター(간판스타)」。「事実主義を追求しながらもおもしろく、感情移入しやすい漫画だから」とのことです。
ヌルボは「看板スター」の方は以前入手して読みましたが、「7つのスプーン」の方は知りませんでした。いずれの機会に紹介します。
第1巻の表紙(上写真)のタイトルの上に「われわれの時代の若者たちの必読書」、下方に「88万ウォン世代の希望探し」とあり、その言葉に惹かれて購入したというわけです。
主人公は兵役を終えて大学4年に復帰した青年チャン・ソンジェ。入隊が遅かったため、もう27歳(数え年)。金融関係への就職を目指し、下宿生活を始めます。
ところが、他の下宿人はというと、獣医学部に在籍はしているものの「動物を触れない」ということで部屋にこもって公務員をめざして勉強している(といいつつゲームにはまっている)25歳の大学生、そして大学に入ったが親が仕事で失敗したためにやめてネイルアートの店で働きつつ借金の返済をしている同い年の女性。
つまり、まだ社会に安定した場を確立していない若者たちです。
下宿の主人は工具店をやっていますが、彼が若い頃から打ち込んでいるのが<無限動力>。日本では<永久機関>という方が一般的ですね。工具店も<無限動力>の製作に便利だからやっているようなももの。<永久機関>という、初歩の物理学でも否定されている夢を追い続けている変人。
父親よりしっかりしてそうなのが高3の娘で、母が交通事故で亡くなったため家事も下宿の管理等もきっちりやってますが、当然進路選択の問題に直面する時期です。高1の弟は無口で、人づきあいが苦手な少年です。
このような設定だと、物語の展開は深刻なものになりそうですが、それが逆なんですねえ。
この下宿の規則の1つが、毎日の朝食は皆そろって食べるというもの。ホントに韓国ではそんな下宿もあるのかなあ? 日本だったら「うざったい」と敬遠されるでしょうが・・・。
その他、すでに就職した友人との交流とか、下宿の主人+無限動力のテレビ出演とかいろいろあって・・・。
・・・その後の具体的な筋は紹介しませんが、韓国語中級以上の人なら→コチラのサイトで1話から見られます。セリフ等文字部分も(「食客」のホ・ヨンマンのように)多くないし、展開も(カンプルのように)複雑でなく、わかりやすいです。
著者チュ・ホミン(주호민)は1981年生まれ。兵役を終えて、自身の軍隊生活を率直に描いた漫画「チャム(짬)」を漫画サイトで連載して好評を博し、2005年本として刊行。この作品で2007年新人作家賞を受賞しました。
彼の第2作が2008年から韓国YAHOOのサイトで連載したこの「無限動力」で、今年102話で完結し、7月単行本として刊行されました。
今年4月の朝鮮ドットコムに載っていた記事によると、彼の父母はともに代表的な美術系大学の弘益(ホンイク)大出身の画家とのことです。
彼もアニメーション科の入試には失敗したが、絵を描く才能はあったので漠然と志願したものの、兵役を終えた後戻ってみると、進もうと思っていたアニメ科がなくなっていて、「腹立ちまぎれに大学をやめてみると、1日で高卒のペクス(백수.白手.プータローのこと)だったですよ。近所の大型マートで働いたんですが、月給が80万ウォンでした」。
その後新しい文化のウェブトゥーン(ネット漫画)が出版漫画よりハードルが低かったので「チャム」を連載することになり、プロ漫画家としてデビューできたというわけです。
彼は自分の漫画について次のように語っています。
「無限動力」はTVに出ていた無限動力研究者を見て、この研究者が強調する夢と、20代の若者の無気力を対照させるという設定を思いつきました。・・・・夢に対する温かい話を盛り込みました。」
「今も締め切り前に必ず還暦を越えた母に見せます。母が読みづらければ、用語や内容を修正します。漫画は何よりもおもしろさと満足感がいちばん重要だと思うんです。私は老若男女誰もが楽しく読める温かい漫画を描きたいです。」
【(左上)ソンジェ「だけど・・・夢は飯をくれないじゃないですか・・・」
(右上)下宿の主人「今おまえに必要なものは飯じゃないぞ」
(左下)下宿の主人「死ぬ直前に・・・」
(右下)下宿の主人「食えなかった飯を思い出すだろうか? それとも、かなえられなかった夢を思い出すだろうか?」】
※彼が<好きな漫画>としてあげているのがキム・スジョン(김수정)の「7つのスプーン(일곱 개의 숟가락)」とイ・ヒジェ(이희재)の「看板スター(간판스타)」。「事実主義を追求しながらもおもしろく、感情移入しやすい漫画だから」とのことです。
ヌルボは「看板スター」の方は以前入手して読みましたが、「7つのスプーン」の方は知りませんでした。いずれの機会に紹介します。