Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染付 木の枝文 菱形小皿

2021年09月26日 15時54分37秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 木の枝文 菱形小皿」の紹介です。

 この「染付 木の枝文 菱形小皿」の名称ですが、よく見ますと、葉っぱに隠れて栗のイガのようなものが描かれていますので、「木の枝文」ではなく「栗枝文」とすべきなのかもしれませんが、パット見た感じでは「木の枝」に見えますので、「栗枝文」ではなく「木の枝文」としておりますことをご了知ください(^_^;

 

表面

 

 

側面

高台が比較的に高く作られています。

 

 

裏面を斜め上から見たところ

蔓草が側面から高台内にまで入り込んで描かれています。

 

 

裏面

高台内にまで文様が描かれているのは珍しいケースです。

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代前期

サ イ ズ : 長径15.9cm×短径11.6cm 底長径9.5cm×底短径6.5cm 高さ2.5cm

 

 

 なお、この「染付 木の枝文 菱形小皿」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で、既に紹介しているところです。

 そこで、その際の紹介文を次に再度掲載し、この「染付 木の枝文 菱形小皿」の紹介に代えさせていただきます。

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー187  伊万里染付木の枝文菱形小皿     (平成25年11月1日登載)

 

     

 表面は捻花状に陽刻されかたのように作られ、縁はその捻花状の陽刻をそのまま延長させて輪花状にしている。
 比較的に薄作りで、高台も高めに付けられ、厳しい造形であり、あまり類例を見ない、珍しい作例である。 

 表面に描かれた葉っぱなど、1枚、1枚、丁寧に描かれており、葉っぱが裏返った様まで描かれている。
 こんなデコボコした面に、これだけ伸びやかに描かれているということは、相当に腕の良い絵付け師によって描かれたということであろう。
 かなり写実的で、さながら、「ボタニカルアート」を観ているかの如くである。

 裏面には、非常に手慣れた筆致で、蔓草が描かれている。
 その蔓草も、それほど簡略化されることなく、比較的に丁寧に描かれている。
 また、その蔓草はのびのびと描かれていて、生きているかのようである。
 相当に上手で手慣れた絵付け師でないと、こうは描けないであろう。

 ところで、この小皿を特徴付けているのは、高台内にまで絵付けされていることである。
 高台内にまで絵が描いてある例はめったにない。

 この小皿は、造形的に珍しいし、高台内にまで絵が描かれているなど、大変に珍しい作例である。

 

  江戸時代前期  長径15.9cm 短径11.6cm 高台長径9.5cm 高台短径6.5cm   高さ2.5cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌117  古伊万里との対話(木の枝文の菱形小皿)(平成25年11月1日登載)(平成25年10月筆)  

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  葉 隠 (伊万里染付木の枝文菱形小皿)

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、たまには季節に合ったものと対話をしたいと思ったようで、この季節にピッタリのものはないものかと、押入れ内を探しはじめた。
 だいたいにおいて、主人の押入れ内の大部分とは既に対話済みなので、残り物の中からそのような物を取り出すことは不可能に近いと思われるのではあるが、強引になにやら引っ張り出してきて対話をはじめた。

 


 

主人: この頃は、朝晩めっきり冷え込んできた。少し前まで、暑い暑いと言っていたのが嘘のようだね。夏から、秋を飛ばして、一足飛びに冬になってしまった感じだね。

葉隠: そうですよね。最近、私のようなものの出番は短期間になってしまいましたよね。

主人: 売り買いの場面だって、一般的には、やはり、春には、春らしい物が売れるし、春らしい物を買いたいし、夏には、夏らしい物が売れるし、夏らしい物を買いたいしで、また、秋には、秋らしい物が売れるし、秋らしい物を買いたいだし、冬には、冬らしい物が売れるし、冬らしい物を買いたいと思うのが人の心理だよね。デパートだって、夏の終り頃には、すぐに、「秋物セール」が始まるものね。そして、秋の終り頃には「冬物セール」の開始だ。
 ところで、お前のことは5年前の12月に骨董市で買ったんだ。12月といえば秋を通り越して冬だから、お前は「秋物セール」もとっくに終った、むしろ、「秋物処分セール」に出品されたというところかな。

葉隠: それでは、私は、安く売りに出されていたんですか!

主人: ところがね、今言ったようなことは一般的な話で、骨董の世界では話が別だね。季節なんかにはトントお構いなしだ。特に古伊万里なんてものは酷いもんだね。例えば、果物の場合なんか、花と実が一緒に描いてあることが多いよ。そんなものをコレクションしている私なんか、どんどんと季節感が鈍麻してきてしまった・・・・・。

葉隠: それはどうですかね。もともと季節に鈍感だったんじゃないですかね!

主人: まっ、そのことは、お前の言うとおりかもしれないかな・・・・・。
 そうそう、話は脱線してしまったが、お前は高く売られていたんだよ。なんでかって、お前には、高台の中にまで蔓草文が描かれているだろう! 高台内にまで絵が描かれているのは珍しいんだよ! 売る方もそれを良~く知っていて、高くして売っていたんだな~。 

葉隠: それで、得意の値切りで、値切りに値切って買ってきたんですか。

主人: 人聞きが悪いことを言うね~。そんなことは出来なかったよ。
 売る方も強気で、全然負けないんだ。それで、「う~ん」と唸ったきりで、結局は、その場では買うことを断念してしまった。
 というのは、何時も、この骨董市の後に競り市行くんだが、ここでお前を買ってしまっては所持金がほとんどなくなってしまう状況だったからだ。そんな状況で競り市に行って、もし、すごく気に入った古伊万里が出現したとしたら大変なことになるものね。手も足も出なくなってしまい、それこそ、その後、夢にうなされることになるからね。それで、競り市での余力を残しておくために断念したわけだよ。 

葉隠: それでも、結局は私を買われたわけせしょう。どうしてですか?

主人: それはね、その日の競り市では、気に入った古伊万里は出現しなかったので、競り市終了後、急きょ、また、その骨董市に戻ることにしたんだよ。やはり、お前が気になったものだからね~。
 値段が高かったので、たぶん、誰も買う人はいないだろうから、まだお前は売れ残っているとは思ったが、骨董市が終了してしまっているかどうかが心配だった。
 幸い、骨董市では、ほとんどの業者さんが帰り支度をしている最中で、まだ間に合った。お前を売っていた業者さんも同じで、お前は既に片付けられてしまってはいたが、私が買う旨を告げると、喜んで出してくれて売ってくれた。もちろん値引きなしで・・・・・。

葉隠: それはよかったですね。

主人: うん。どうしても欲しいという程ではなかったんだが、やはり、高台内にまで丁寧に絵が描いてあるものは珍しいし、造形も厳しく、上品だし、買っておいてよかったな~と思ってるよ。

葉隠: ところで、私の名前が「葉隠」となっているんですが、どうして「葉隠」なんですか?

主人: ハハハ、特に意味はないよ。
 肥前の鍋島藩といえば「葉隠武士」で有名だよね。お前も肥前産だから「葉隠武士」と関係があるかもしれないが、お前を見た限りでは、武闘派の「葉隠武士」は感じられないね。せいぜい、なよなよとした文治派の「葉隠武士」というところかな。
 それはともかく、お前には葉っぱが何枚か描かれているよね。しかも、よ~く見ると、葉っぱに隠れて栗のイガのようなものも描かれているんだよね。それで、葉っぱだけではなく、葉っぱの陰に何か描かれているのかな~ということで、文字どおり、「葉隠武士」から「葉隠」だけを借りてきて「葉隠」としただけさ(笑)。

葉隠: そうでしたか。そんな単純な理由でしたか。

 

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