Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染付 唐花文 輪花形小鉢

2021年09月27日 15時05分41秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 唐花文 輪花形小鉢」の紹介です。

 

表面

 

 

側面

 

 

裏面

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代中期

サ イ ズ : 口径;13.8cm 底径;6.9cm 高さ;4.3cm

 

 

 なお、この「染付 唐花文 輪花形小鉢」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で、既に紹介しているところです。

 つきましては、その際の紹介文を次に再度掲載することをもちまして、この「染付 唐花文 輪花形小鉢」の紹介とさせていただきます。

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー188  伊万里染付唐花文輪花形小鉢     (平成25年12月1日登載)

 

 

 比較的に薄作りで、口縁を輪花形にしたりと、造形的には厳しい作りである。

 内側には、底の方に二重圏線を施し、その中に唐花文を描いている。唐花文の茎部などは、まず細い輪郭線を描き、その中を濃み染めするなど、かなり丁寧な描き方である。

 それに反し、外側を一巡している蔓草は付け立て風に描かれており、内側部分の唐花文に比べると、かなり手抜きした感じである。

 高台内の銘も、「二重渦福」なのであろうけれども、あまりにも崩れ過ぎていて「二重渦福」なのかどうかも分からない程である。

 造形の厳しさ及び内側部分の丁寧な文様の描き方からみて、この小鉢は上手の作であることは伺えるが、外側部分の文様や高台内の銘の雑な描き方からみて、最上手の作とは言えないであろう。

 

江戸時代中期   口径:13.8cm  高台径:6.9cm  高さ:4.3cm 

 

 

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*古伊万里バカ日誌118  古伊万里との対話(輪花の小鉢)(平成25年12月1日登載)(平成25年11月筆)

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  小 鉢 (伊万里染付唐花文輪花形小鉢)

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、「さて、今日はどれと対話をしようかな~」と思案しながら「押入れ帳」をめくっていたが、最近では、「是非、これと対話をしてみたい」というような心トキメク古伊万里もみつからないので、「押入れ帳」に記載されている順番に従い、何の変哲もない小鉢を押入れから引っ張り出してきて対話をはじめた。

 


 

主人: お前には悪いが、どうも、お前は何の変哲もない古伊万里なので、対話をしようにも盛り上がりそうもないな(><)

小鉢: それはそれはご挨拶ですね。何の変哲もない古伊万里で悪かったですね(「むっ」とする)。
 でも、どこか気に入るところがあって買ってきたんでしょう?

主人: まぁね。どこかが気に入って買ったというわけではないだけれどね・・・・・。
 見てのとおり、お前は、まぁまぁ上手で、一応の水準をいっているからね。最近では、なかなか、お前程の水準の物を見かけなくなってしまっているからね。それで、このまま見過ごし、放置して埋もれさせてももったいないし、お前にも気の毒かな~と思って買ったわけさ。

小鉢: それはどうも。私を救ってくれたわけですか。
 でも、御主人以外のもっと立派な方の目に留まっていたのなら、とっくの昔に華々しく出世していたかもしれませんよ。

主人: うぬぼれるにも程があるぞ! 誰が、お前みたいなものに目を留めたりする立派な方なんかがいるもんか! せいぜい、その辺の骨董市をたらい回しされ、あげくの果てには、割られて棄てられるのがオチだな。
 棄てられるにしても、江戸時代に大名屋敷が火事に遭い、被災した家財道具と共に破損した陶磁器も土坑に棄てられ、それが現代において発掘され、一度棄てられたその陶磁器の破片が研究資料として再び日の目を見るという希な例はあるにはあるが、お前にはそんなチャンスもないだろう。

小鉢: それ程に立派な方ではなくとも、ご主人以上に私を大切に扱ってくれる方に、私に日の目をみさせてくれる方に買ってもらいたかったです。今では、ガラクタと一緒に押入れの中に閉じ込められ、もんもんとした息苦しい日々の連続ですから・・・・・(涙)。

主人: それは悪かった。謝るよ。
 でもね~、お前程度のものでは、それ程の出世は望めないぞ。お前が仮に5個組だったら、或いは大鉢だったなら、その場合は、小さな名もなき美術館に展示されるというような可能性もなきにしもあらずだが、1個だけではね~、それも無理な話だよ。せいぜい、一般家庭の中にあって、ちょっとした部屋のインテリアの一つとして飾られる程度だろうね。

小鉢: それでも、今の境遇よりはず~っとましです。

主人: わかった。わかった。
 しかしね~、今は、二年半前の大地震のことを思い出すと、部屋の中に飾ることを考えてしまうんだ。二年半前の大地震の際、部屋の中に飾っていた古伊万里は数点が遣られたが、押入れの中にあったものは全部無疵で、1点も遣られなかったからね~。
 押入れの中でじっと耐えて生き長らえるほうが、お前のためだと思うよ。それこそ、これからあと数百年も生き残れば、或いは、お前1個だけでも、大きな有名な美術館に名品として展示される可能性がなきにしもあらずだね。

小鉢: そうですか。それを聞いて心安らぎました。

主人: そうとも、そうとも。お前達陶磁器は、生身の人間とはちがって長生き出来るんだ。せいぜい、生きて、生きて、生き抜くことだ! 生きることによって灯りが見えてくるんだよ!

 

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