エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

雨の連想

2010年05月12日 | 日記
終日雨に垂れ込められたのである。
雨だれの音を聞きながら、ぼくのイマージュは膨らんだ。






            雨の序曲

      網膜に飛び込んできた色彩は
      重層的であって
      染みいるようで

      あなたは思わず
      目を細めたではないか

      色彩の縛りは
      単色の積み重ねであると
      あなたは言ったではないか

      違う次元の連なりに
      あなたは
      耽溺した
      と
      言い放った

      ぼくは
      そういうあなたを黙って迎え入れる
      その儀式に没頭したのだった

      雨が序曲を奏でた一日



           雨

      雨に打たれた緑
      その緑に
      絵の具が溶け入れられると
      新緑から
      万緑へと
      移ろう

      雨が
      絵の具を案配して
      緩やかで甘やかな
      大気を
      演出するというのだ

      それはヴィーナスの配剤である







            雨だれ

      軒から滴り落ちる雨だれ
      は
      あなたの
      二の腕の輝き
      にも似て
      ぼくを
      限りなく苦しめる

      雨だれの向こうに見える宇宙
      は
      あなたの
      瞳の色
      にも例えられるのだが
      ぼくは
      その宇宙に吸い込まれてしまう

      あなたが作り上げる
      宇宙は
      ブラックホールの
      漆黒の闇である
      その闇こそが
      あらゆる醜き物体を隠蔽し続ける
      だがしかし
      あなたはその闇に光明を灯す
      というのだ

      一筋の
      途切れてしまいそうな
      淡く脆い
      一筋の
      きみへの
      熱き思慕
      たおやかに眠れよ

      一筋の
      軒から滴り落ちる
      雨だれに寄せた思慕の愚かさよ

      ぼくは
      雨だれを両手の平で受け
      飲み下す
      だろう

      そしてきみの二の腕を甘咬みして
      囁く
      だろう

      きみが
      大好きである
      と








            函

      函が空間を浮遊すると
      きみが仕掛けた
      あの
      異物の鍵が
      爆破されたかのように
      弾き飛んでいった
      発条がゼンマイ仕掛けの時間割を
      狂わす
      と
      ぼくは欲望の塊になって
      あなたを襲った
      函に納まった空間は
      無限地獄になって
      今度は
      ぼくを
      襲った

      いま
      雨は限りなく降り続いている





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