エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

新緑を讃えよう

2010年05月14日 | 日記
街に出て、新緑を讃えよう。
新緑への賛歌を高らかに歌えば、その音声は空高く散華するのである。

秘すれば花・・・いやいや上花は、凛として実在である。




         新緑が萌えて


      5月の図書館でぼくは風を浴びた
      風は閲覧室を吹き抜けて進み
      向こうの壁にあたって砕け散った
      前の席に座っている女性の
      原稿用紙の縁を少しだけ捲(まく)りあげ
      つむじ風のように過ぎ去っていく風は
      お茶目だ

      新緑が萌えて
      ぼくは
      内面から洗浄される夢を毎日みている

      図書館の窓が曇っている
      その分ぼくの内面は研ぎ澄まされていくようだ
      窓の汚れの向こうは
      新緑の一部
      風は遠慮会釈もないまま自然体だ

      五月の図書館でぼくは風を浴びたのである







         風の命ずるまま


      ぼくの
      精神世界は
      風の
      命ずるまま
      新緑の
      梢を
      吹き抜けた
      梢の向こうは
      青い空と
      白い雲
      そして寂寥たる
      空間
      次元の
      谷間だ
      忘莫(ぼうばく)とした
      無限に広がる
      宇宙の入口
      梢は
      ノックされるのを
      待っている
      のだろうか
      梢は
      時にそよぎ
      ときに
      ざわめく
      しなり
      もどり
      風という
      ゼウスの
      暴君化した
      心象をやり過ごす
      現世のアキレスが
      そうで
      あったように
      ぼくの
      ポエニ戦争が
      勝利したように
      ぼくの
      精神世界は
      いつのまにか
      アテナイの景色に
      染まって
      しまったようだ







         雲が流れる


      五月の雲が流れるのである
      新緑の木々は
      梢に狂おしき気分を載冠させ
      万緑に移行する時間を熟成させている

      硝子の向こうに輪郭を
      鮮明にさせ
      雲がたゆたい崩れる
      雲が流れるのである

      硝子の表面に付着した
      きみの皮脂が
      甘やかに風景を屈曲させるのは
      楽しい
      きみの皮脂は
      怪しげなプリズムのようでいて
      気配を消し去った時間の上を
      流れていった
      きみの皮脂は
      怪しげなプリズムであるから
      気配をねじ曲げてしまった
      きみの皮脂は
      それだけで
      実在であるのか
      きみの皮脂は
      豊かにきらめく
      豊饒の重み
      である

      きみの皮脂は
      実存であって
      架空の実在であるのか

      雲が流れる
      流れて変幻する
      流れて自在にかたちを変えるのである

      ぼくはそうした
      きみに
      嫉妬する
      自由であって気ままなきみの
      実存的感覚にである







         新緑というニンフについて


      新緑はまことにニンフである
      その滴り落ちる匂いは
      人を狂わすからである

      新緑は優れて若い時代である
      その色彩と姿は
      ジュラ期のメタセコイアにも似て
      生命力が横溢するからである

      時代が輪廻転生する現実は
      語るまでもないのである
      生々流転の明暗は
      ニンフが開け放した
      時代のベクトルである

      新緑はまことにニンフの微笑である
      微笑は世紀を駆け抜ける
      駆け抜けて魂の岸辺に逢着するのである

      若い世代であったり
      紀元前の生命であったりする
      新緑はまことにニンフである







スズランは高原の涼風に遊ぶニンフである。





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