エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

目には青葉

2013年04月25日 | ポエム
「目に青葉」と来たら「ヤマホトトギス初鰹」である。
かつての江戸っ子の粋を表した言葉である。

この句、あまりにも人の口に上りすぎている。
そこで、原句を記しておく。

目には青葉山郭公初鰹
        素 堂

今、青葉と云えば欅もそうだし、いてふもそうだ。
柳もそうだし、葉桜だってそうだ。

だがしかし、もみじの青葉を筆頭に挙げたいものである。



重ねるほどに、色合いが淡白になって行く。
不思議な緑色である。



深山幽谷に迷いこんだかの錯覚すら覚えるのである。
昨今のもみじは、春から色が豊富である。







「残骸の一つとて無し緑濃く」







もみじだけで、色と季節を楽しめる。
奥行きのある花卉である。




荒 野人




暮春という季節

2013年04月24日 | ポエム
暮春である。



新緑と言うには、色濃く、万緑にはまだまだである。



だがしかし、間違いなく武蔵野の林は緑濃くなりつつある。
春の深まりを林が教えてくれる。
色の匂い、空気匂い、そして風の匂いがそれと教えてくれるのである。



暮春という概念に、ぼくは感動を覚えている。
「からまつ」での修行の賜物である。

絶えて久しくなかった「感動」あるいは「琴線の在処」などを自覚するようになってきたのだ。
若かった頃の感性が蘇生しつつあるのだ。

今の季節、もっともその新緑の鮮明さに感動するのは「もみじ」の緑である。







「武蔵野や暮春を迎う光あれ」







色を重ねてこれほど見事なのは、紅葉を以って嚆矢とする。



実に鮮やかである。



ぼくは平林寺に出向きこの映像を捉えた。
紅葉の時期と違って、境内には人影は少ない。

それだけに、林に畏怖を覚える。
言い換えれば「ある恐怖」としても良い。



滝のように緑を零すもみじである。



風の一寸した気配にもそよぐ。
そのありのままが「心地良さ」の源泉であろうか。



         荒 野人

満天星・・・ドウダンツツジ

2013年04月23日 | ポエム
ドウダンツツジの白く可愛らしい花が、そこここで咲いている。
満天星と書いて、ドウダンと読ませるのである。

グリルの店名ともなっている。
またホテル名にもある。
実に奥行きのある言葉である。



このほの白さが良い。
小粒の白さが良い。

コツマナンキンの満天星である。







「満天星の淡き目覚めの白い径」





ぼくは、この咲き方に控えめな花の意思を感じる。
ついこの間、ドウダンの写真を撮っていた時のことである。

「あら、可愛い花ね」
「そうね・・・」
「なんて言う名前かしら」
「いやね、スズランじゃないの!」

確かに、スズランに似ている。



でも、ドウダンツツジの花ですよ!
花言葉は「節制」「上品」「私の思いを受けて」「返礼」である。

名前の由来であるけれど「ドウダン」は、枝分かれしている様子が昔夜間の明かりに用いた灯台(結び灯台)の脚部と似通っており、その「トウダイ」から転じたものである。
また「満天星」の方は中国名に由来するのである。

花の名前は、原則間違えないようにしましょうね。



       荒 野人

花筏……裏側の景色

2013年04月22日 | ポエム
葉の上に花咲かす花筏。
前にも紹介したけれど、愉快な花卉である。



今日は裏側からの画像を紹介しようと思う。
正に、一葉に一輪の花である。



葉の上の祖薄から言えば、幾つかの花が載っているように見える。
けれど、裏側から覗けば一輪であると知れるのである。







「うらはらの目にやさしかり花筏」







こうして花を表・裏・横と見、果ては触ってみる。
時には齧ってみる。
視覚、味覚と見・あるいは味わい尽くし、果ては対話する。

そこまでしなければ、俳句は詠めない。
写生する。
そこから本質を掴み出す。

短詩形の宿命は、限られた少ない言葉、或いは文字で表現することにある。



楽しく呻吟する。
まだまだ野人のレベルでは、苦しんではいけないのである。



      荒 野人

二輪草

2013年04月21日 | ポエム
二輪草・・・東京では板橋区の植物園に咲く。
近在では埼玉の川口市に咲くのである。



静かに咲く。
花の盛りを感じさせないままに散ってしまう。



その秘めやかさが良い。



白く、誠実に咲くのである。
三葉の間から、二本の茎が伸びる。
一本の茎にそれぞれ、一輪の花を咲かせるのである。
それで二輪草だ。



帳尻のあわせ方が上手い。
決して一輪にはならないし、三輪にはならない。
言い替えれば、咲き方をわきまえているのである。







「三葉から二つの花の二輪草」






花言葉は「愛らしい」「予断」「友情」「協力」「仲良し」である。
キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草であって、春の山を代表する花の一つだ。

因みに東京都板橋区の花であって、板橋区のユルキャラ「りんりんちゃん」は二輪草の妖精、という設定である。



もう花の見頃は終わってしまった。
来年、板橋区立植物園と川口市で見る事が出来る。

確かに、妖精のような花である。



      荒 野人