エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

秋の蝶

2014年10月11日 | ポエム
黒揚羽がよたよたと舞う。
秋の蝶は、飛翔力が弱いのだ。

だが、見る者に寂寥感を与える。







「午後の日の色濃き花へ秋の蝶」







台風の襲来を前にして、涼やかな空であった・



こうした雲は、空の隙間を鮮やかに見せるのだ。
正に、秋の雲である。



今でなければ、この空と雲は見られないのである。
空を見上げれば、必ず「おまけ」が付いて来る。

さしずめ、ナンキンハゼの紅葉である。



赤一色だけ、抜き書きしたかのような色合いである。
この赤く変色した葉は、赤が極まって落葉する。

ナンキンハゼの樹の下は、秋が深まれば赤い絨毯を敷き詰めたようになるのだ。
野点の緋毛氈であるかのように、目に沁みる。
そう言えば、昨年は府中の森でお茶を頂いた。

緋毛氈に良く似合う、和服の女性であった。




       荒 野人



散歩道

2014年10月10日 | ポエム
いつもの散歩道をお見せする。
春夏秋冬・・・倦むことなく歩いている。

この道は、ロングコートを着て宮沢賢治のように歩きたい。
トレンチコートでは似合わないのである。

だらだらとしたコートが似合う道である。



四季折々、変化があって同じ景色はない。
かの飯田蛇笏が山梨県境川村の「山櫨」と称した庵で、格調高い句を詠んだ。
句の素材は、身の回りに溢れているのである。



ぼくは、空を見上げるのが好きだ。
雲の流れるのを見上げるのも、好きだ。

空は誰へだてなく広大である。
時に澄み、時に曇る。
また、空は涙する事もある。

自分の心象風景を投影できる。



モニュメントも空の一つでしか無い。







「道すがら息飲む秋の空高し」







このベンチは、いつもぼくが座ってパンを食する。
パンは公園内の売店「パークス」の焼き立てである。

カレーパンの熱々。
コロッケパンのボリューム。
林檎パイの皮のカリカリ感と中身のしっとり感。

それに、炭酸の飲み物を付ける。
ぼくは稀代の「炭酸小僧」であるからだ。

散歩途中の楽しみでもあるし、句材発見の場所でもある。




      荒 野人

月が欠ける

2014年10月09日 | ポエム
あなたは、皆既月食を見ましたか。
見事な天体ショーでありました。

月は左下から隠れ始めたのであります。



欠け具合を鮮明に見るため、あえてストロボを焚いて写しました。
7時5分過ぎの月です。



徐々に欠けていきました。



人の目でも、鮮明です。
正しく天体ショー、と言って良い・・・。







「月欠ける予感の影の赤く見ゆ」







赤い月は、何かを予言しているようにも感じさせる。
そんな不思議を覚えます。

自然の・・・いや宇宙の神秘を感じた一夜でありました。
何億光年の彼方よ。

新たな天体をぼくに与え給え。



      荒 野人

昨日の雲

2014年10月08日 | ポエム
誠におどろおどろした、しかし変化に富んだ雲が遊弋した。
ぼくは、思わずカメラを手に出かけたのであった。

楽しいけれど、少し不安もあった。
いきなり雨が来るのではないか・・・という心配であった。



風神や雷神が、この雲に乗っていても決して可笑しくない。
そんな雲たちである。

且つ、陰影に富んだ雲たちである。







「邪まな気配を隠し秋の雲」







変なおじいさんが、カメラを空に向けている。
可笑しな感じである。



その可笑しな感じこそが、俳味溢れる写真をゲットできる「こつ」である。
恥ずかしがらずにカメラを構える。

家で、修正しなくて済むように感じたままの構図を切り取る。
それが、俳句写真の要諦である。



夕方、茜色の空があった。



昨夜の空は、雲で覆われていた。
今日は、皆既月食である。



天気予報では、雲が広がると云う。
月食を激撮したいものである。




      荒 野人

台風の後

2014年10月07日 | ポエム
今回に限っては、台風一過で鮮やかな空が広がった。



この前の台風では一過とは言えず、はっきりしなかった。
けれども、歓迎出来ない事柄も続いている。

空は鮮やかだったけれど、哀しさが募るのである。







「台風に載せ忘れたい辛きこと」







青さが目に沁みる。
その青さは、蒼、藍、あお。



空は知らぬ気である。
辛い事も、楽しい事も全てを空に放擲してしまいたい・・・。



紫式部の実も、零れ落ちていて哀しい。
だがしかし、その風情こそが自然の営みであって季節の進行に欠かせないのだ。
欠かせないのだとしたら、受容する事が人の責務である。

この台風でまた多くの人命が奪われた。
御嶽山の噴火といい、今回の台風といい哀しき事が多すぎる。

どこかで救いを祈る・・・声がする。
そうだとしたら、この気分は晴れるに違いない。



      荒 野人