出発前、「杉生産量日本一の宮崎」をインターネットで検索していたら、「弥良来杉」と書いて「ミラクルスギ」と読む面白い杉の材を発見しました。
早速、宮崎県の木材組合に問い合わせをしてみると、
「ミラクル杉については、海野さんだね」
と言って、そのプロジェクトのキーマンを紹介頂いていたのです。
そして、ついに本日その海野さんとお会いするため日向市駅に向かったのです。
既にお約束の時間を大幅に遅れ、外は完全に暗くなっていたため日向市駅のコンコースで見た海野さんはほとんどシルエットでしたが、ポニーテールに髪をまとめたその姿からはとてもエネルギッシュな印象を受けました。
早速新築された日向市駅の駅舎の一部と駅前公園に設置されたベンチなどの野外設備、これを「ストリートファニチャー」と呼ぶが、ここにミラクル杉が使用されている。
◆日向駅の軒
◆10メートルのベンチ
ミラクル杉の特長は、
1.水に強く屋外でも腐らない
2.安全、安心の無公害素材
3.木本来の姿や色、加工性を損なわない
の3点である。木にはたくさんの長所がある一方、短所もある。そのひとつが「腐る」ということで今まで屋外に使用されることは限定的だった。
また屋外で使用される木材には通常防腐処理が薬品などで行われているが、これは健康や環境にとってマイナスだった。
しかし、ミラクル杉の添加素材はいずれもベビーパウダーやハンドクリームに使われる安全素材。完全な無公害素材なんだそうです。けれど上記のメリットのために木本来の良さが失われては本末顛倒。
防腐処理を行うと色が緑色になったり加工性が木と異なってくるのが従来の材でしたが、ミラクル杉は特殊な材でありながら木本来の色や加工性が同じということです。
けれど、私がお伝えしたいことは、このミラクル杉の特長ではありません。
実は海野さんの活動であり、ネットワークなのです。
「宮崎は杉生産量日本一」
しかし、その生産した材を需要に変えていかなければ循環しません。
住宅用材が圧倒的な割合を占める製材業の中で、新たな付加価値をつけた商材で、新たな市場を開拓していかなければ未来は苦しい。そ
んな考えから、日本の国産の技術で既に10年以上の歴史がありながらなかなか表に出てこなかった「モックル処理」の技術を見つけ、ミラクル杉という商品化を行い、その市場を今まで木が敬遠されてきた「屋外物」に求めたのです。
しかし、その活動はそんなに平坦なものではなかったようです。
全国にデザイナーや異業種の方とのネットワークを築き、県内には林業、製材業の仲間との組織作りを地道に行ってきたそうです。
そして日向市駅の駅舎が新築されるに伴い、駅前の再開発事業の中でようやく「ストリートファニチャー」として屋外に木を使った構造物を作成する機会を、模型を作るなどの工夫で関係者への理解を深めてようやく得たのです。
その過程では様々な試行錯誤が行われています。
その他にも、宮崎の杉を広めるための活動として、毎年「杉コレクション」という「杉を使った構造物なら何でもよし」という面白いイベントを実行しています。
ベンチでもオブジェでも建物でも、道具でもなんでもOK。
さらに凄いところは、「自分で作成できなくてもOK。アイデアやイラスト、設計図が審査を通れば製作は主催者で行うこともできる」こと。
これによって職人さんだけでなく、幅広いデザイナーやはたまた一般の主婦や子供まで、その自由な発想を持ち込めるのです。
この間口の広さはポイントだと思います。
私もインターネットを見て、海野さんにお会いしようと思った一番の理由は、ミラクル杉をもとにしたあの手この手の活動に新しいエネルギーを感じたからです。
その後、案の定?飲み屋に移動し海野さんとはいろいろなお話をしとても勉強をさせて頂きました。
「中田さん、日本には一体何種類の鳥居があるか知ってる?」
そんな質問を受けました。建設業が本業という海野さんですが、ご自身は「鳥居専門店」の顔も持っていらっしゃるそうで、なんと日本には大きくは10数種類、細かく言えば60種類以上の鳥居のスタイルがあるそうです。
ビジネスを勝ち抜くために「2つのこだわりを持つこと」が大切で、「腐らない木」と「鳥居の専門知識」、これがその意味です。
海野さんが10年をかけて築き上げてきた宮崎県内のネットワークは、人と人のつながりを大切にし、伝えていくことを徹底しています。
直接のお客様だけでなく、例えば私のようなどこの馬の骨ともわからない木工科学生も快く受け入れてくださり、宮崎市の川上社長に伐採現場の見学をお願いしてくださったりした県のネットワークでご対応いただけたことは本当にありがたかったですし、凄いことだと思います。
ビジネス面でも、ミラクル杉は通常の木材に比較すればもちろん割高ですが、木と争うつもりはありません。
「木とは戦わない。ミラクル杉の敵は屋外構造物におけるアルミやブロックであり、そうした競争相手であればコスト面でも太刀打ちできる」そうです。
木の良さが再認識され屋内を木で彩る住宅やお店、施設も増えてきました。
けれど、屋外はどうでしょう?木の国日本であればもっともっと屋外でも木を見てみたいです。
ミラクル杉の防腐品質ランクは、現在の「どれだけシロアリを殺すか」という基準では最低ランクになってしまうそうです。しかしミラクル杉は「シロアリを殺さないけど、シロアリにも食べられない」材です。
さて、どちらが今後求められる材でしょうか?
何かと既成の基準に縛られてしまう世の中ですが、私達の発想や考えはできるだけ早くそうした古いパラダイムから脱却したいものです。
今後も海野さんの活動にはミラクルが起きそうで目が離せません。
海野さん、宮崎滞在中は本当にありがとうございました。
早速、宮崎県の木材組合に問い合わせをしてみると、
「ミラクル杉については、海野さんだね」
と言って、そのプロジェクトのキーマンを紹介頂いていたのです。
そして、ついに本日その海野さんとお会いするため日向市駅に向かったのです。
既にお約束の時間を大幅に遅れ、外は完全に暗くなっていたため日向市駅のコンコースで見た海野さんはほとんどシルエットでしたが、ポニーテールに髪をまとめたその姿からはとてもエネルギッシュな印象を受けました。
早速新築された日向市駅の駅舎の一部と駅前公園に設置されたベンチなどの野外設備、これを「ストリートファニチャー」と呼ぶが、ここにミラクル杉が使用されている。
◆日向駅の軒
◆10メートルのベンチ
ミラクル杉の特長は、
1.水に強く屋外でも腐らない
2.安全、安心の無公害素材
3.木本来の姿や色、加工性を損なわない
の3点である。木にはたくさんの長所がある一方、短所もある。そのひとつが「腐る」ということで今まで屋外に使用されることは限定的だった。
また屋外で使用される木材には通常防腐処理が薬品などで行われているが、これは健康や環境にとってマイナスだった。
しかし、ミラクル杉の添加素材はいずれもベビーパウダーやハンドクリームに使われる安全素材。完全な無公害素材なんだそうです。けれど上記のメリットのために木本来の良さが失われては本末顛倒。
防腐処理を行うと色が緑色になったり加工性が木と異なってくるのが従来の材でしたが、ミラクル杉は特殊な材でありながら木本来の色や加工性が同じということです。
けれど、私がお伝えしたいことは、このミラクル杉の特長ではありません。
実は海野さんの活動であり、ネットワークなのです。
「宮崎は杉生産量日本一」
しかし、その生産した材を需要に変えていかなければ循環しません。
住宅用材が圧倒的な割合を占める製材業の中で、新たな付加価値をつけた商材で、新たな市場を開拓していかなければ未来は苦しい。そ
んな考えから、日本の国産の技術で既に10年以上の歴史がありながらなかなか表に出てこなかった「モックル処理」の技術を見つけ、ミラクル杉という商品化を行い、その市場を今まで木が敬遠されてきた「屋外物」に求めたのです。
しかし、その活動はそんなに平坦なものではなかったようです。
全国にデザイナーや異業種の方とのネットワークを築き、県内には林業、製材業の仲間との組織作りを地道に行ってきたそうです。
そして日向市駅の駅舎が新築されるに伴い、駅前の再開発事業の中でようやく「ストリートファニチャー」として屋外に木を使った構造物を作成する機会を、模型を作るなどの工夫で関係者への理解を深めてようやく得たのです。
その過程では様々な試行錯誤が行われています。
その他にも、宮崎の杉を広めるための活動として、毎年「杉コレクション」という「杉を使った構造物なら何でもよし」という面白いイベントを実行しています。
ベンチでもオブジェでも建物でも、道具でもなんでもOK。
さらに凄いところは、「自分で作成できなくてもOK。アイデアやイラスト、設計図が審査を通れば製作は主催者で行うこともできる」こと。
これによって職人さんだけでなく、幅広いデザイナーやはたまた一般の主婦や子供まで、その自由な発想を持ち込めるのです。
この間口の広さはポイントだと思います。
私もインターネットを見て、海野さんにお会いしようと思った一番の理由は、ミラクル杉をもとにしたあの手この手の活動に新しいエネルギーを感じたからです。
その後、案の定?飲み屋に移動し海野さんとはいろいろなお話をしとても勉強をさせて頂きました。
「中田さん、日本には一体何種類の鳥居があるか知ってる?」
そんな質問を受けました。建設業が本業という海野さんですが、ご自身は「鳥居専門店」の顔も持っていらっしゃるそうで、なんと日本には大きくは10数種類、細かく言えば60種類以上の鳥居のスタイルがあるそうです。
ビジネスを勝ち抜くために「2つのこだわりを持つこと」が大切で、「腐らない木」と「鳥居の専門知識」、これがその意味です。
海野さんが10年をかけて築き上げてきた宮崎県内のネットワークは、人と人のつながりを大切にし、伝えていくことを徹底しています。
直接のお客様だけでなく、例えば私のようなどこの馬の骨ともわからない木工科学生も快く受け入れてくださり、宮崎市の川上社長に伐採現場の見学をお願いしてくださったりした県のネットワークでご対応いただけたことは本当にありがたかったですし、凄いことだと思います。
ビジネス面でも、ミラクル杉は通常の木材に比較すればもちろん割高ですが、木と争うつもりはありません。
「木とは戦わない。ミラクル杉の敵は屋外構造物におけるアルミやブロックであり、そうした競争相手であればコスト面でも太刀打ちできる」そうです。
木の良さが再認識され屋内を木で彩る住宅やお店、施設も増えてきました。
けれど、屋外はどうでしょう?木の国日本であればもっともっと屋外でも木を見てみたいです。
ミラクル杉の防腐品質ランクは、現在の「どれだけシロアリを殺すか」という基準では最低ランクになってしまうそうです。しかしミラクル杉は「シロアリを殺さないけど、シロアリにも食べられない」材です。
さて、どちらが今後求められる材でしょうか?
何かと既成の基準に縛られてしまう世の中ですが、私達の発想や考えはできるだけ早くそうした古いパラダイムから脱却したいものです。
今後も海野さんの活動にはミラクルが起きそうで目が離せません。
海野さん、宮崎滞在中は本当にありがとうございました。