ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

天高く、馬肥ゆる実りの秋

2012年09月20日 | BMW以外のオートバイたち

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気が付けば、コンビニに「中華まん」ののぼりが立っていた。

季節はもうすっかり秋の装いだ。

稲刈りが迫った田んぼからは、刈入れが迫った独特の匂いがする。

青々としていた葉の色が黄色味を増し、稲穂が重たく実って首を垂れる。

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生き物にとって実りの秋は格別な季節だ。

秋の田の匂いを胸いっぱい吸い込むと、身体が悦んでいるのを感じる。

そして秋はその実りに感謝する、祭りの季節でもある。

オートバイで山里を走ると、そこかしこで秋祭りに出会う。

今日途中で通り過ぎた「水窪」は、天竜川の上流部にある山里。

中心部は大きな集落で、人も多い。

水窪はその日、秋の祭りで、そこら中で人が集まり

いつになく華やいだ雰囲気が充満していた。

ところかまわず出てきては、曲がって行く軽四の動くパイロンたち。

もちろん、ここは彼らのテリトリー。

郷に入っては郷に従うのが、旅人の掟。

細心の注意で街を通り抜ける。

まだまだ日差しは強くて勢いがあるけど、

夜の間に冷やされた空気は昼になっても涼やかだ。

           〇

兵越峠を越えて、遠山川の深い谷底へ下りていく。

下りても下りてもなお小刻みにターンを繰り返して高度を下げる。

分断された国道の北側へ合流しても、さらにくねくねと道は谷へ続く。

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今日はここが目的地。

遠山郷の「かぐらの湯」

上空には高い秋の空が広がる。

ここの風呂は広々とした浴槽なのに、あまり人が多くないのがポイント。

ゆっくり湯に浸かって、ソースかつ丼を喰って、広間で午睡をむさぼる。

開け放たれた掃き出しの広い窓から涼風が迷い込んで

あまりの心地よさに熟睡してしまった。

            〇

どっかで風呂にでも入ってのんびりしようか・・・

と思いつくと、大概ここへ来るのだけれど、

如何せん、家からこの遠山郷はちとばかし遠い。

しかもクネクネ道が大好物なので、性質が悪い。

午睡のつもりが爆睡になっちまったから、起き抜けの身体が重い。

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国道へ出ようかどうか迷いながら、まだもうちょっと走りたいなと、

よせば良いのに県道1号線(長野・愛知県飯田富山佐久間線)に流れ込んだ。

平岡から佐久間までおよそ45km。

さすがに楽しくはなかったかな。

富山からの長かったこと長かったこと・・・

途中、秘境駅の大嵐(おおぞれ)駅に寄って休憩。

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天竜川に架かる大きな吊り橋で流れを見てたら

どこか近くの拡声器から広報放送。

「水窪まつりの仮装大会の結果をお知らせします」だって。

まさか、あそこでそんな催しがあったとは・・・

見てくればよかったか?と後悔したとかしなかったとか。

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雨の森を行く(愛知県道435号線その2)

2012年09月06日 | R100RS 2本サス (1981) 銀じぃ

雨が降ると、森がいきいきとして見えるのは気のせいだろうか。

雨の中をオートバイで走ると、いつもより路面に気を使う分、

周囲の様子に対する観察眼がおろそかになりがちだけど

雨の時の森が、実に生命力に満ち溢れていることは

なんとなく以前から感じていた。

だからやっぱり気のせいなんかじゃあなくて

森は雨をよろこんでいるんだと思う。

それにしても森は不思議だ。

雑然と木々が生えているようで、実はそこにきちんとした秩序がある。

淘汰されていくものもあれば、しぶとく光を受けて生き残るものもある。

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この県道は中央に苔の帯がつづく。

雨に濡れると思わぬ挙動にひやっとすることもある。

オートバイとはいえ、軽自動車との離合も困難な道幅だ。

2速ホールドで慎重にカーブをこなす。

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県道435号線で寒狭川を渡り、海老へ抜ける峠を越える。

周囲の国道や県道(主要地方道)へ廻った方が楽なので

大抵の人はこのルートへは入らない。

何度か走ったことがあるが、海老へ出るまでに

クルマと擦れ違ったことは・・・ないかな。

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途中、大きな朴ノ木が上空で枝を広げていた。

1本生えているだけなのに、枝を広げた姿は巨大で

多くの木々がひしめく森の中での存在感は特別だった。

秋になるとその大きな葉っぱをすべて振い落して、根元に積もらせる。

朴の木はアレロパシーと呼ばれる他感作用によって

樹冠下の他の植物の発芽を抑制するため

この木のように独立してそそり立っているものらしい。

大きいものだと高さが30メートルにも達する巨木種だ。

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ヨーロッパ大陸のアウトバーンを疾走する雄姿の面影も薄く、

極東アジアの林道を這いずり回る銀じぃことR100RS。

前にも書いたけど、このオートバイは実はこういう道も得意で

そんな性格が日本人に愛されている理由なのかもしれないと

ボクは信じている。

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この日何度目かの雨宿り。

ずぶ濡れの銀ジィと、ずぶ濡れのカッパを着たおっさん。

黄昏色の時間が流れる、そんな雨の一日。

県道435号線その1の記事はこちらから