もうすっかり恒例となったラリージャパンの嵐が吹き荒れた後
三河の山は、それはもうまっしぐらに冬へと向かうのだ
山陰の落ち葉はいつまでも乾かずに路面に張り付きその厚みを増し
風が出れば植え放題のスギから枯れ枝がボトリボトリと落ちてくる
植林の山中は鬱蒼と真っ暗で
一日中陽のささない林の中の空気は日に日に凍えていくのだ
秋の深まりがじりじりとして
なかなか出掛けていくタイミングを取れずにいたら
もう11月も末だ
先日まで、今年の秋は来ないのか、なんてほざいてた口が
いやーもう冬だね、なんて抜かすくらい
秋が急激に深まった
だからいま思えば11月の上旬に飛騨に走りに行ったのは正解だった
件の六厩でも走りに出かけた次の日から最低気温が0℃前後まで下がっていたので
もう入れなくなっていたのかもしれない
ちなみに六厩の昨日(11/24)の最低気温は―5.0℃
10時を過ぎてもまだ3.0℃には届いていなかった
もう今年は山へ踏み込むのは終わりだね
あまり天気ばかり気にかける訳にもいかないので
風が強い日だったけどオートバイを走らせた
風のせいか雲ひとつなく真っ青な空が広がる
今日は国道257と151に挟まれた山の中を走りに行く
北限は何となく国道418辺りと決めて
まずは新城から寒狭川(豊川の通称)をたどって田口まで踏み込んだ
田口の周囲はいま設楽ダムの工事で「ひっちゃかめっちゃか」だ
特に北側はダムに水没するので道路の付け替え工事が急ピッチで進む
国道、県道の付け替えは現在6割ほどの進捗で
11/23にはいよいよ本体着工されるようだ
完成予定は当初の計画より8年遅れて2034年
もうボクは生きていられるかどうかわからない
余談だけど歳を取るとこの完成計画とか達成計画とか
流石に若いころとは違う思いを抱くようになる
リニアの完成なんてもう年寄りにはあってないようなものだ
2034年
今からちょうど10年後だ
満水の設楽ダムを付け替えられた国道をオートバイで走り眺められるだろうか
田口の中心部で国道473号へ入りすぐに分岐する県道へ進む
県道427号線 坂宇場津具設楽線
一本東側の県道10号設楽根羽線があるので「わざわざ」でなければ用もなく走らない道
いやいや途中で分岐して振草へ行くんですよ
なんてのもそもそも国道473を使うだろう
それくらい余所者には縁のないルートだ
それをあえて今日は行く
取り付きからすでに怪しい
幅員は1車線、離合はおよそ困難
すぐに家並みは途絶え、スギの林に突入する
スギは皆20メートルくらいはありそうで林は鬱蒼として中は真っ暗だ
おまけに少しでも風に吹かれるとスギが枯れた枝をボトボトと落とす
誰かかたずけてよ、とほざきながら進む、濡れてないだけマシ
特に面白いこともなく長江の集落にでる
ここにあった長江城という砦はなんと鎌倉時代に設けられたそうだ
そもそもこの辺りには秋葉詣に行き来する街道があった
いまでこそこんな陸の孤島だが昔からこの辺りには人の気配があったのだ
遠州へ行った時にも書いたけど
この三河、遠州というところは西の徳川、織田、東の今川、そして北の武田と
なかなかに物騒な地域だったのだ
砦も多く、人の行き来は盛んだった
山村と云っても沢沿いに集落が伸びる場所は多いが
奥三河は沢沿いだけでなく、深い山中にも多くの集落がある
ここ長江も戸数こそ少ないがそんな山の集落
南の斜面には立派な棚田がある
この辺りの棚田は、よくある斜面に石を積んだような簡素なものでなく
城壁と云っては云い過ぎだがしっかりとした石組みがされていて
遠目に見ると城郭の様にさえ見える
けれど今では人の気配はなく、サルの集団が集落を闊歩していた(大丈夫か)
長江から先へ進み、程なく唐突に分岐が現れる
まっすぐ行けば根羽を経由して遠州街道へ至る
ボクはさっき云ったとおり振草渓谷へ行くためここを分岐した
こちらは番号が変わって県道431号線 八橋中設楽線
同じようにスギが鬱蒼と茂り、路面には枯れ枝が散乱する
おまけに工事に向かう荒っぽい運転の輩の通勤ラッシュにあってややあぶない
ずいぶん冷え込むようになったとはいえこの辺りまで来てもまだ紅葉はおそい
山の中の集落を繋ぐいわばこの生活道路
くねくねくねくねとちっとも進まなくて振草で国道に合流するのに小1時間もかかった
もちろん楽しかったのは云うまでもないがね
紅葉狩りのクルマで国道はのろのろ
太和金トンネルの先を折れて豊根の中心部へ向かう
ダムのお金で潤う豊根村は役場がおしゃれでキレイ
屋根付きの広場(ゲートボール場かな)もある、屋根付きだよ
役場を横目に見て、その手前を県道74号線へ折れ、信州新野へ向かう
県道74号線は豊根村役場(というか大入川)を挟んで南北に走っているが
この北側部分は狭溢部分もあるけど整備が進んでいて比較的走りやすい道路だ
山村の小さな集落をいくつも繋いでいるのは一緒だが
こちらは開けた場所が多くて明るく空も近い
以前ここを走ったのはいつだったか忘れるくらい前だけど
その時とあまり変わっていないように感じた
高度がどんどん上がるのでそれにつれて紅葉が進んでいく
風がさらに強くなってきて枯れ葉が激しく散っていた
新野峠の先で国道に合流して道の駅へ下って行く
ちょっと前まではここは狭いクネクネ国道だったんだよ
いまでは真っすぐの下り坂
道の駅でシッコしてすぐ発車
売木峠を越えて平谷へ向かう
トンネル一発で越える峠は本当につまらないよね
むかーしむかしはね、売木峠なんてめんどくさい峠だったんだよ
でも本来、峠とは苦労して越えるもんだ
トンネルが出来ると旧道になった峠越えのルートはすぐに荒れてしまう
土砂が崩れたり路盤が落ちたりすればそのまま廃道の可能性もある
でもね、道路だからね
アトラクションじゃなくてインフラだ
安全と効率
でもこのルート、秋は格別かもしれない
初めてこの季節に走ったけどとてもきれいだった
交通量はそこそこあるけどほとんどの区間で
センターラインは破線なので追い越しが可能だ
国道で根羽まで下りて県道10号線へ向かう(まだまだ行くよ!)
ここまでほとんど走りづめで3時間くらい
そろそろおなかが空いたけど
良さそうな青空食堂が見つからない
津具の道の駅辺りに小さな園地があったのでそこで休むことにした
川べりで紅葉もきれいないい場所だけどやっぱり風が強い
河原のススキたちが風に吹かれて激しくうねり
まるで前衛的なコンテポラリーダンスを見せられているようだった
天候に左右されるのはアウトドアの醍醐味
なんだけどね
風でごみが飛ぶのよ
立つたびに椅子はひっくり返るし
湯を沸かすにも時間がかかって燃料はムダにかかるし…
え?
はい、楽しいですよ
今年の秋はあまり遠乗りできなかったけど
奥三河の山の中はこうして県道を繋いで走るだけでも十分楽しませてくれる
地元だから贔屓目も入るのだろうけど
特に目立つものがないから余計に美しく素朴に染みてくるみたいだ
あんまり背伸びして遠く異郷のことばかり気にしてないで
もっと自分の周囲に目を向けてみよう
サクラもモミジも君のすぐそばにあって美しく
そんな四季の移ろいを慈しむことこそが人生の楽しみなのだ
名所旧跡を一巡りしたら地図(ナビ)を捨て
ぎゅっと自分の掌に握りしめているはずの、
そーっと自分の胸の内に秘められているはずの、
そんな自分だけの美しさを探す旅へ出かけようよ