ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

今日、猿に会うとは思ってもいなかった

2012年07月22日 | BMW以外のオートバイたち

そこへ行く、と決めていても、それが初めてならば、

そこへの道程には、何の調和も用意されていない。

逆に、そこへ行くことを考えてもいなかった場所へ行くことになった時も、

同じくその道程には、何の調和もないはずだ。

難しい言い回しで、あたりまえのことを書いた。

けれど、本当に、いつだってどこにだって

ボクが考えることを上回る何かが待ち構えている。

人間の思考力、想像力なんて全く浅はかなもんだ。

今やもっとも貴重とされ、皆が熱病のように渇望する「情報」なんてのは

所詮、人のフィルターを通して発信されたものでしかない。

「あの店のスイーツは絶品だ」

その情報を確認するために行動している馬鹿が多い。

「あのスイーツは絶品だった」

予定された結論を求めて行動するなんて、御目出度い、まったく。

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東海環状道、富加関ICから津保川の流れをたどって

県道85号線(岐阜県・金山上之保線)を走る。

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時折り現われる集落をいくつか通り過ぎると、

やがて川筋も途絶えて、九十九折の急坂になる。

「放生峠」

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峠にはお地蔵様がいらっしゃるだけで、標識も無い。

この先が下っていることでしか、ここが峠だとは分からない。

峠を過ぎて最初の集落に入ると、道は急に道らしくなる。

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その先、国道をつたって県道86号線(岐阜県・金山明宝線)へ入り、

ダム河畔のワインディングを行く。

途切れることなく続く小さなカーブを、

ひとつずつ無心にかたずけて進むのはオートバイ乗り無上のひとときだ。

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巨大なロックフィルダムの岩屋ダム。

そのダム湖である金山湖の深部は二つの谷筋に分かれる。

馬瀬川へ進むと、道は県道431号線(岐阜県・下山名丸線)になる。

美しい馬瀬川の渓流を横目に少しダブル(W800SE)に鞭を入れる。

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馬瀬から国道のトンネルをくぐって飛騨川に出た。

その日は午後から雨になると予報されていたので、

早めに戻ろうと思っていたのだけれど、

ここまで来ると、鈴蘭スカイラインへ行きたくなった。

カッパは持っているし、別に帰りに雨に降られるなら、それでもいい。

なにより空はまだ青空が広がって、御嶽の姿も見られそうだった。

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小坂まで行って県道437・441号線へ折れる。

ワクワクしながらワインディングを駆け上がっていくと、

鈴蘭峠の手前の分岐で時間通行止めの標識と誘導員のおっさん。

鈴蘭高原を抜けて、その先の435号で柳蘭峠へ迂回しろと云う。

OK、OK。

県道435号線上等!

実はここ走りたいって思ってたんだよ。

少し行くと鈴蘭峠。1210m。

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雪渓も涼しげな御嶽と乗鞍がパノラマで広がった。

ただの別荘地だと思ってたから、ここ走ったことなかったけど、

もったいない景色のルートだった。

県道との交差点に郵便局。

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この先に秋神温泉があって、県道は実質そこまで。

その先はほとんど林道だ。

10年くらい前に走った時は、本当にこのルートで合っているのか

不安いっぱいで走った記憶があるけど、

道はその時よりまたさらに荒れていた。

けど、とてもいいルートだ。

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舗装というより踏みしめられた砂利道のような山道を

バーチカルツインの蹴り出すようなトルクでのんびりと辿って行く。

突然木々がひらけて、乗鞍岳が目のまえに現れた。

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その伸びやかな山容に、オートバイを停めて、しばし眺め入ってしまった。

クルマ一台通り過ぎず、ただ風が緩く吹き抜ける。

雨を知らせる巻雲を頭上に広げているが、まだ雲は虚空に飛来したばかりだ。

乗鞍の姿はやけに神々しく見えた。

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柳蘭峠から日和田高原へ下りて、開田を抜けることにした。

本当に午後から雨になるのか、と疑いたくなるような青空だった。

馬に草をやったり、

蕎麦を喰ったりしてのんびり過ごす。

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開田高原からはいろいろな角度で御嶽が見られる。

御嶽はいくつかの峰が連なって聳えるので、

見る位置によって様々な趣がある。

もちろん季節ごとの印象も違うけど、

夏の御嶽もやっぱり疑いようもなく美しい。

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いやー、今日、猿に会うとはなー。

それと、鈴蘭峠から槍ヶ岳の先っぽ見えたなー。

にしても、435。ひでェー荒れようだったぜェ~。


見よ、この街道への愛着を

2012年07月09日 | BMW以外のオートバイたち

いつの頃からか、クルマが大型化した。

衝突安全性とか云って、ボディがデカくなり、

それを動かすエンジンも大きくなった。

四国に行くと、軽自動車が多いなという印象を持つけど

あの道路の狭さでは、軽自動車がいちばん機動性があるのだろう。

中村(四万十市)から四万十川をたどって

佐田の沈下橋へ行く道を走ったことがある人なら分かると思うけど、

有り得ない道幅の狭さだ。

四国はそんな道ばかりで、町や国道を外れるとヤバいくらい道が狭い。

有名な祖谷渓の県道なんか拷問のようだ。

けれど、20年くらい前の日本はどこもそんな感じで、

国道153号線、三州街道なんて飯田まで走りとおすには

それなりの覚悟と、あきらめ、忍耐力が必要だった。

全線ほぼ1.5車線でトラックやダンプ、観光バスも走る。

そういえば数年前に、いまではすっかり寂れた安房峠を走って、

その道幅の狭さに改めてビックリしたのを覚えている。

あのころは乗用車の大きさも小さくて、

あれくらいの道幅でもなんとかなっていたような気がする。

いまのデカいボディのクルマと、現代人の運転のヘタさでは

とてもあのころの山間国道は走れないだろう。

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おかげで、高速道路がどんどん伸びたにもかかわらず、

山間部の国道は拡幅され、平坦で退屈に伸びるようになった。

下手くそな「らいだー」が道の駅を求めて走りまわるようになり、

うるさいマフラーのオートバイがひっきりなしに来る。

そんな休日が憂鬱だ、という街道沿いの住民が増えたと聞く。

新しくトンネルや高架橋が作られて道路が挿げ替えたりすると、

旧来の国道は県道に格下げされたり、道路そのものが閉鎖されたりする。

もちろん地盤の弱さによる土砂崩れや崩落を避けることが最大の目的だけど、

別にあそこまで快適にする必要もなかったんではないかとも思う。

かつての狭い国道では、先を見て運転しないと、

確実に自分とまわりの流れを滞らせる。

譲るべきか、譲られるべきか、一瞬の状況判断もいる。

ブラインドコーナーで正面衝突するようなボケはいなかった。

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鳳来の手前で分岐して、国道257号線に入る。

ここも見事に挿げ替えられていて、

美しい渓流の豊川を見ながらいわいる「快走路」が伸びる。

その先に突然信号が現れて、右へ県道が分岐していくが、

この先の田峯までは、この海老川に沿った県道32号線がメインとなる。

国道はそのまま豊川に沿って直進するのだが、

メインを奪われたルートは急激に道幅を狭め、

豊川の奔放な流れに沿った、複雑な道筋になる。

閉鎖されたり格下げされたりしなかったけど、整備もされない。

いわば見捨てられたルートだ。

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けれど国道257号線の白眉はまさにこの区間だとボクは思う。

先日来ハマっている県道435・436号線とも絡んだ地域だ。

街道は布里の集落を通るが、

そこにある産直の施設に地元の人たちのこの街道への愛着を感じる。

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「荷互奈」と名付けられたこの施設は、国道の「257」をもじったものだろう。

建物の壁にも257のサインが。

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どんだけ257号線LOVEやねん!

でも、それを見ているだけで、こころがなごむ。

この国道がいかにこの地域にとって重要なものかが理解できる。

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アユ釣りをする人たちはむしろ国道に入ってくる人が多い。

本当にいつからあるのか分からない老舗の旅館。

いまは蕎麦屋として有名になってるね。

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初めて見た時は営業してるとはとても思えなかったけど、

見れば見るほど味のある店構えだ。

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ねむの木が花をいっぱいにつけていた。

もう夏がすぐそこまで来ているな。


何も無いと見るか、豊かであると見るか(愛知県道435号線その1)

2012年07月03日 | R100RS 2本サス (1981) 銀じぃ

もう何年も前からそこを通り過ぎてきたはずなのに

県道への分岐があるなんて、ちっとも気付かなかった。

しかもそれが県道435号線(愛知県・作手保永海老線)の南の入口だったなんて。

地図を見てだいたいの見当をつけて向かったが、

あっさりと見落とし行き過ぎ、道を失した。

国道を本宮山スカイラインの南の入口付近まで進んで引き返した。

苦笑いしながら、分岐を分け入る。

それほど距離のある県道ではないけど、435号線には珠玉の趣がある。

小さな集落の中を心細い道筋が伸びている。

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さらに上るわけでも下るわけでもなく、道は巴川に沿って深い森の中を進む。

巴川は西三河の矢作水系と東三河の豊川水系両方につながる複雑な流れだ。

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時折、森が開けて集落が現れる。

集落にはやはり田畑が拓かれ、人が暮らす。

赤茶色の陶器瓦が特徴的な家が多い。

日曜の早朝、それほど大きくない銀じぃの排気音だけど、

それでも少し気が引けるような静けさが山村を支配する。

地盤が固いためだろうか、川は山奥であるにもかかわらず、あまり深い谷を作らない。

むしろ少ない高低差を求めて、もがくように蛇行を繰り返しているように見える。

流れも緩くはないが、烈しく岩を噛むことも無く、行方の定まらない不思議さがある。

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リアサスのダンパーのシールが抜けて、

ショックまるごとリプレイスした。

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外した純正とリプレイス品を並べてみたら

リプレイス品の方がちょっと短かったので、

また足つきが良くなるな、と思ってたら、

取り替えてすぐ跨ってみてビックリ!

全然足が届かない。

雑誌なんかで、RSはシート高が高くて足つきに難がある、と書かれているけど、

いままでちっとも感じたことなくて、

やっぱ現代っ子(?)のオレさまの足の長さは西洋人並みなんだ、と思ってた。

つまり、世間知らずのアホだったということだ。

30年たったバネは当然ヘタリまくってたって訳だ。

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この「ikon」というブランドのショックは、

赤いボディの「KONI」のライセンスを買い取ったオーストラリアのメーカー製。

動きも悪くないし、外観も純正に近くて、リプレイスには最適だと思う。

性能も良すぎないところが、RSのバランスにマッチしてくれると考えている。

ただ、他のブログでは耐久性に関して酷評されているので、

どれ程持つかが正直ちょっと心配かな。

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県道436号線との重複区間を過ぎると、

島田川の最上流の集落を最後に急激に高度を上げ、峠を越える。

峠の向こうにはまた別の集落。

斜面に貼りつく集落の中の細い道筋をたどって、慎重に谷へ下りていく。

やがて、豊川のたおやかな川筋にあたって、県道は国道257号線に合流する。

県道は南に下がった北貝津から東へ山を越えて、海老の街へ続く。

「貝津」という字名が多く見られるけど、何を意味しているのだろう。

「津」とは船着き場を意味することが多いが、

川津がなまったか?萱津か?

いずれにしろこの辺りは歴史的にも古くから人の気配が濃いところだ。

国道の合流点で、標識に従って一旦停止の後、

銀ジィの鼻ズラを南へ向けた。