自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆秋の夜長3題~聴く、見る、読む~

2021年10月13日 | ⇒トレンド探査

   秋の夜長とはよく言ったものだ。たまにはゆったりと月を眺めて過ごしてみたいと思う気持ちは古今変わらない。昨夜は「ソナタの夕べ」と題したリサイタル=写真・上=を聴きに出かけた。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の第一バイオリンで活躍する原田智子さん、そして、原田さんが敬愛するというピアニスト小林道夫氏を招いて、ピアノとバイオリンのソナタの魅力を披露した。

   モーツァルトのピアノとバイオリンのためのソナタ(K379)、シューベルトのソナチネ第2番、ベートーベンのソナタ第10番の3曲。心に響いたのはベートーベンだった。森の中にいることを思わせる響きで、日光が差したかと思えば、暗闇になり、嵐になり、そして月影が現れ、また日光が差してくる。まるで、ドラマのような流れだった。アンコール曲は同じくベートーベンの「スプリング・ソナタ」。コロナ禍で席は一つ空けての着席。この方がむしろ、演奏者と空間を分け合い、そして音楽を聴きながら自分と対話しているような感覚になって、十分楽しむことができた。

    次の秋の夜長は、まるでベートーベンの「運命」をテレビで見るような感覚だった。10日に放送されたTBSの日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」(午後9時)の初回=写真・中=。1973年の小松左京のSF小説が原作。2023年の東京を舞台に内閣府や環境省の官僚、東大の地震学者らが、天才肌の地震学者が唱える巨大地震説を伏せようと画策する。環境省の官僚が海に潜ると、海底の地下からガスが噴き出して空洞に吸い込まれそうになるシーンはリアル感があった。ラストシーンは実際に島が沈むというニュース速報が流れ、騒然となる。

   これまで小説も読み、映画も観たので既視感はあった。さらに、7日夜に首都圏で震度5強の地震があった直後だけに、関東の人たちはこの番組をどのような思いで視聴しているのだろうかなど案じながら見ていた。ビデオリサーチ社によると、初回の世帯平均視聴率は15.8%だった。ドラマを楽しむというより、自分たちの運命はどうなるのだろうという不安心理などがない交ぜになった高視聴率ではなかったか。

   月刊誌「文藝春秋」(11月号)の「財務次官、モノ申す 『このままでは国家財政は破綻する』」=写真・下=を秋の夜長に読んだ。「最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえあると思います。」との出だし。現職の財務事務次官による、強烈な政治家批判だ。「数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ」は岸田総理の自民党総裁選での主張のこと。また、「財政収支黒字化の凍結」は総裁選での高市早苗氏の政策だった。「さらには消費税率の引き下げまでが提案されている」は立憲民主党の枝野代表の公約だ。
 
   読んだ感想だが。財務事務次官の立場からすれば当然だろう。国庫には無尽蔵にお金があるはずがない。財政規律を唱えて当然だ。政治家は選挙を前に必死に財政出動を訴えるものだ。今月31日の衆院選を前に多様な議論があっていいのではないか。
 
⇒13日(水)夜・金沢の天気    くもり時々あめ
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☆夏の終わりによみがえるあの2曲

2021年09月20日 | ⇒トレンド探査

   朝夕に肌寒さを感じるようになった。まもなく秋分の日(23日)だ。この夏を振り返ると、印象に残るのやはり東京オリンピックとパラリンピック、そして、耳に残るのが『マツケンサンバⅡ』と『波乗りジョニー』だろうか。

   俳優の松平健はテレビ番組『暴れん坊将軍』でおなじみだったが、歌っているとは知らなかった。オリンピック開会式のセレモニー楽曲を担当する作曲家グループの1人だった小山田圭吾氏が過去のいじめ告白問題で7月19日に辞任して大騒ぎになったが、そのとき、ヤフー・コメントなどで「マツケンサンバを開会式で」との書き込みを何度か目にした。検索して、『マツケンサンバⅡ』を動画で見て初めて知った。

   サンバのリズムに乗ってテンポよく歌い踊る松平健の後ろでは、腰元と町人風のダンサーたちが乱舞する。サンバは肌を露わにしたダンサーが踊る姿をイメージするが、赤い衣装を着た腰元ダンサーの方がむしろ艶っぽくなまめかしい。これが、正式にリリースされたのが2004年7月なので、17年も前の楽曲だ。さすがに、オリンピックの開会式では時間もなく無理だろうと思ったが、閉会式ではひょっとしてサプライズがあるのではないかと期待もした。家飲みのときにネットで楽しませてもらっている。
 
   テレビでオリンピック競技を17日間視聴して、印象に残っているのはもちろんアスリートたちの姿だが、番組での解説やコメントなどスタジオのバックで流れていた桑田佳祐の『波乗りジョニー』も、だった。この曲はもともと、テレビCMに流れる、日本の夏を象徴する曲だ。夏のテーマソングがそのままオリンピックのテーマソングのようになり、盛り上げてくれた。オリンピック競技場の無観客の状態は当初さみしいとも感じたが、毎日違和感なく視聴できたのもこの曲のおかげかもしれない。

   最後にこの夏を締めくくる言葉。東京オリンピックの閉会後にイギリスBBCのスポーツ編集長は「Tokyo Olympics : Sporting drama amid a state of emergency but how will Games be remembered?」との見出しで記事を書いている。最後の下り。「(意訳)パンデミックという事態であっても、オリンピックを否定することはできなかった。そのことに安堵した人も、失望した人もいたはずだ。そして、東京オリンピックの開催が正しかったのかどうかは、今後ずっと議論されていくだろう。しかし、不安に満ちた時代でも、スポーツ選手はこれまでと同じように、その元気な姿で我々を励ましてくれる存在であり続けた。それだけは確かなことではないだろうか」(8月9日付・BBCニュースWeb版)

⇒20日(祝)午前・金沢の天気      はれ

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☆中国人の不動産熱と「寝そべり族」

2021年07月02日 | ⇒トレンド探査

   中国の人々の熱い投資熱を感じたことがある。10年前のことだ。2012年8月、浙江省紹興市で開催された「世界農業遺産(GIAHS)の保全と管理に関する国際ワークショップ」(主催:国連食糧農業機関、中国政府農業部、中国科学院)に参加し、日本と中国のGIAHSについて意見交換や、隣接する青田県などを視察した。青田県方山郷竜現村を訪れたとき、田舎に不釣り合いな看板が目に飛び込んできた。川べりに建設予定の高層マンションの看板だった。

   中国人の女性ガイドに聞くと、マンションは1平方㍍当たり1万元が相場という。1元は当時12円だったので、1戸161㎡では円換算で1932万円の物件である。確かに、村に行くまでの近隣の都市部では川べりにすでにマンションがいくつか建っていた=写真=。夕食を終え、帰り道、それらのマンションからは明かりがほとんど見えない。おそらく、買って値上がりするのを待つ投資向けマンションなのだろう。前年の2011年6月に訪れた首都・北京でも夜に明かりのないマンションがあちこちにあった。

   同じ女性ガイドに「中国はマンションブームなのですか」と問いかけると、このような話を披露してくれた。「日本でも結婚の3高があるように、中国でも女性の結婚条件があります」と。中国の「3高」は、1つにマンション、2つに乗用車、そして3つ目が礼金、だと。マンションは1平方㍍当たり1万元が相場という。中国ではめでたい「8」の数字でそろえるので、1戸88平方㍍のマンションが人気。となると、1056万円だ。そして、18万元の乗用車、さらに8万元の礼金。この3つの「高」をそろえるのは大変だ。

   上記の話を思い出したのは、いま中国の若者の間で広がっているとされる、あえて頑張らない「タンピン(寝そべり)」現象がある一方で、習近平国家主席が共産党創立100年の式典で「われわれは党創立100年の目標である貧困問題を解決した。生産力が劣っていた状況から、経済規模で世界2位になるという歴史的な進歩を実現した」(7月1日付・NHKニュースWeb版)と拳を振り上げて強調した、いまの中国のギャップだ。

   習氏の世代は、極限の貧困や飢餓などを体験しながらも社会のはしごをよじ登ってきた。しかし、いまの若者たちは過当競争や長時間労働に耐えて、車の所有やマンション投資、結婚して子どもを持つという、いわば「人生の勝ち組」を目指すことにむしろ違和感や無力感を抱いているのではないだろうか。逆に言えば、習氏が「小康社会」と語ったように、それだけ国が豊かになったという証(あかし)なのかもしれない。

⇒2日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

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★「必要は発明の神さま」で祭り復活

2021年06月17日 | ⇒トレンド探査

   「必要は発明の母」と言われる。この場合は「必要は発明の神さま」かもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大で、昨年に引き続きことしも各地域の祭礼や神事などの恒例行事の中止が相次いでいる。インターネット調査で、コロナ禍で失われる可能性が⾼い⽇本⽂化として、「祭り」がもっとく高く42.3%、「花⽕⼤会」32.8%、「屋形船」29.0%、「花⾒」24.3%と続く(⼀般社団法⼈マツリズム、有効回答:男女400人、調査:2021年02月27日-3月1日)。祭りについては以前から高齢化や少子化で担い手不足が指摘されていたが、コロナ禍が拍車がかけたとも言える。

   多くの祭りは、神輿を担ぎ、その先導に獅子舞などがいて、それを見学する人々がいる。いわゆる「3密」の状態になることから、祭りが中止となるケースが多い。このような中、伝統の祭りを絶やしてはいけないと、神様を神社から外にお連れする神輿の代わりにミニ台車を手作りした神社の宮司がいる。きょう神社を訪れる機会に恵まれ、その想いを聞いた。

   石川県羽咋(はくい)市にある深江八幡神社。羽咋は祭礼の獅子舞が盛んな土地柄だが、昨年ほとんど中止となった。宮司の宮谷敬哉氏は3密を避けるために神輿を出せないとなれば、一人で押せる台車を作れないかとホームセンターに何度も通い、高さ150㌢ほどのものを完成させた=写真=。みこしに欠かせない鳳凰(ほうおう)は手作りが難しかったので、通販で小型のものを購入し飾り付けた。「神座(みくら)台車」と名付けた。

   昨年7月12日の例祭「祇園祭」では、神のより代である御霊代(みたましろ)を台車に収め、獅子頭だけを乗せた手押しワゴンが先導した。宮谷宮司が神輿の代わりに1人で台車を押して後に続いた。各家を1軒1軒回った。例年ならば神輿と獅子舞でにぎやか祭礼だが、簡素ではあるものの中止することなく続けることができた。

   この地区は500年ほど前に疫病が流行したことから、京都の八坂神社から神を招いて七日七夜祈祷したところ疫病が収まり、それを機に祇園祭が始まったと伝わる。宮谷宮司は「苦労して疫病を鎮めた歴史が地元にあり、『できない』ではなく、『どうしたらできるか』と考えた末にアイデアが浮かんだ」と。

   この神座台車と獅子頭の手押しワゴンが意外な展開を見せる。1965年(昭和40)年前後に神輿の渡御が途絶えていた集落から復活させたいと申し出があった。10月18日に地元の子どもたち6人が中心となって、神座台車と獅子頭の手押しワゴンで町内を歩いて回った。少子高齢化で担い手が少なくなり中止していたが、実に55年ぶりに祭りが復活したのだ。

   宮司は「祭りの復活で地域の様子が活き活きとしていることを一番感じたのは地域の人たちだと思う」と。この秋も神座台車と獅子頭の手押しワゴンの出番となる。

⇒17日(木)夜・金沢の天気     くもり

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☆蚊取り線香を携え 言葉が変遷する時代を想う 

2021年06月05日 | ⇒トレンド探査

   「一石二鳥」の4字熟語は一つの行為で二つの利益を得ることを意味する。新聞記者時代にこの言葉をめぐって他社の記者たちと意見を交わしたことがある。ある全国紙の記者は「なるべく使わないようにしている」と。一つの石を投げて二羽の鳥を落とすという言葉なので、動物保護の観点から読者からの理解は得られない。先輩記者から「一挙両得」の4字熟語を使うように言われている、と話した。すると、別の記者は「それは神経過敏だ。まるで言葉狩りではないか。言葉は言葉として尊重すべきだ」と場は熱くなった。

   この場面を思い出したのは、きのう4日付の全国紙朝刊の広告を見たときだった。「閲覧虫意」というアース製薬の派手な全面広告だ=写真=。アースは独自に「6月4日」を「『虫ケア用品』の日」と定めてキャンペーンを行っている。広告の文面を読むと、「虫はケアするべき健康リスク。だからアース製薬は『殺虫剤』から『虫ケア用品』へと呼び方を変えました」とある。さらに、ネットで公開中の「キケンな虫図鑑」をチェックすると以下のコンセプトが記されている。

   「虫も人間と同じようにひたむきに生きています。子育てをしたり、食べ物を探したり、住む場所を作ったり、時には人間の味方にもなる虫もいます。キケンで悪モノとされている、そんな虫たちの暮らしを覗いてみませんか」

   アース製薬の商品と言えば、実は我が家でも使っている蚊取り線香などの殺虫剤だ。それを、「虫ケア用品」とあえて呼び直している。上記のコンセプトは「虫たちと共存しながらも危険な場合もありますから十分ケア(注意)しましょう」と読める。確かに、殺虫効果のあるスプレーも最近では「虫除けスプレー」と呼んでいる。「殺虫」という言葉は冒頭の「一石二鳥」と同様に生物多様性や動植物保護の現代にそぐわくなってなってきている。

   欧米でも時代とともに言葉には敏感になっている。昨年5月にアメリカのミネソタ州で起きた白人警官によるアフリカ系男性への首の押さえつけ死亡事件。黒人差別反対を訴える「Black Lives Matter」の抗議活動が全米に広がった。すると、アメリカの医薬品会社「J&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)」はアジアや中東で販売していたホワイトニングクリーム(シミ消しクリーム)を販売中止に。フランスの化粧品会社「ロレアル」もスキンケア商品で「ホワイトニング」といった表現を使わないと発表した(2020年6月27日付・ニューズウィークWeb版日本語)。白肌をイメージさせる言葉を避けたのだろう。

   言葉に対する時代感覚が実にナーバスになっている。一方、コロナ禍で新たな言葉が次々と社会に放出されている。言葉が目まぐるしく変遷する時代、果たして自身はついていけるのか。蚊の季節になった。午後からの庭の草取りは蚊取り線香を持って出ることにしよう。

⇒5日(土)午前・金沢の天気    くもり

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★「たかがサカキ されど榊」 こだわりの消費者心理

2021年06月04日 | ⇒トレンド探査

   スルメイカ漁の苦難が続く。日経新聞(6月3日付)によると、今月から漁が解禁となったスルメイカの価格が落ちている。函館漁港では生きたままの「いけすイカ」の初競りが1㌔1650円と昨年に比べ25%安く、おととし2019年より68%も下落した。新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の再延長で飲食店などの需要が振るわない。さらに、日本海の好漁場「大和堆」周辺はEEZ(排他的経済水域)でもあるにもかかわらず、解禁前から大量の中国漁船が押し寄せて違法操業を行っている。イカ釣り漁業者にとってはまさにダブルパンチだ。

   先月29日付のこのブログでも述べたが、中国漁船でインドネシア人が不当に働かされていることが国際問題にもなっている。先日、コンビで酒のつまみを選んでいて、「さきいか」を手に取った。裏面を見ると「中国産」と書かれてあり、違法操業と不当労働行為で得たイカかもしれないと思うと買う気にはなれなかった。

   話は変わる。金沢のスーパーに行くと、フラワーショップのコーナーに並ぶ商品の中にサカキがある。「榊」と漢字で表記されているものが多い。あるショップでは「国産榊 本体価格200円(税込220円)」とあり=写真=、別の店では「榊」と表記され「価格(税込)160円」だった。サカキは普通に庭先に植えられていたり、金沢の里山でも自生している。なぜあえて「国産榊」と表記しているのだろうかとふと疑問に思って、その店の経営者に尋ねたことがある。

   返事は意外な言葉から始まった。「店に並んでいるサカキの90%ほどは中国産なんです」と。仕入れ業者が中国から輸入し、それを全国のショップに卸している。「でも、サカキは普通の観賞用は違いますよね」と、その女性経営者は丁寧に説明してくれた。サカキは古くから神事に用いられる植物であり、家庭の神棚や仏壇に供えられ、そして拝まれるものだ。

   ある日、よく買いに来る客から「これ、どこ産」と聞かれ、女性経営者が「中国産です」と答えると、その客は「サカキなので国内産だと思っていた。外国産に毎日手を合わせるのは違和感がある」と。産する国は違うものの、同じサカキだ。しかし、これは客のこだわりの言葉と理解して、それ以来、店のサカキは能登や金沢など含めて国内産を調達し、「国産榊」として販売するようにした。値段は国産のサカキの方が少し高い。しかし、輸入品は防疫の消毒液がかかるため、長持ちするのは国産だという。

   同じ植物であっても、その植物がどのような思いで育てられたのかということに消費者はこだわるものだ。もし、サカキが日本人と同じ価値観で中国で伝統的に栽培されていれば、国産より価格は高いかもしれない。逆にモノづくりに生産者のこだわりがなければ拒絶される。中国・新疆の綿花畑でウイグル族の人々が強制労働に従事させられていると報じられると、その綿花で製造された衣類はたとえシャツであったとしても着たくない。上記のスルメイカもそうだ。こだわりの消費者心理を理解しない生産者、生産国は見放される時代だ。

⇒4日(金)夜・金沢の天気   くもり

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☆タオルを回せば アサギマダラも踊る

2021年05月26日 | ⇒トレンド探査

   ネット動画でたまたま見つけた、アイドルグループ「PiXMiX」の『タオルを回すための歌』=写真・上=が面白い。手でタオルを回しながら歌い踊る、そのリズミカルな体の振りをさらに回るタオルが雰囲気を盛り上げる。タオル回しと言えば、夏の甲子園大会でも、タオル回しの応援風景が最近見られるようになった。自己表現の一つとしてタオル回しの文化が定着するかもしれないと想像をたくましくした。 

  タオルを回す光景は、実は山の中にもある。2017年9月、能登半島で一番高い山、宝達山(637㍍)に学生たちといっしょに登った。「旅するチョウ」と言われるアサギマダラが宝達山の山頂付近に飛来している。このチョウは春は日本列島の北の方へ、秋には南の方へと飛び、その距離は2000㌔にも及ぶと言われる。宝達志水町役場職員の田上諭史氏ら愛好グループはアサギマダラを捕獲、マーキングして放している。蜜(みつ)がエサになるホッコクアザミを伐採しないようにと植物の保護運動にも取り組んでいる。

   田上氏に捕獲の現場を見せてもらった。右手に白いタオルを振り回していると=写真・中=、上空をふわふわとまるで踊っているような様子でアサギマダラが飛んで来る。近寄って来たところを、左手に持ったネットで捕まえるが、この日は風が吹いていたせいか、1匹しか獲れなかった=写真・下=。それにしても、不思議な光景だった。

   なぜアサギマダラはタオルに誘惑されるのか。以下、田上氏の説明から。寄って来るタオルの色は白色と水色。白色と水色でも、回転しないタオルには寄って来ない。ゆっくり回すより、はやく回すと寄って来る。アサギマダラには回転する白や水色のタオルはどのように見えているのだろうか。吸蜜植物のホッコクアザミやヒヨドリバナなどお花畑が広がる光景なのだろうか。タオルを回せばチョウも踊る。PiXMiXの動画を見てそんなことを思い出した。

⇒26日(水)午後・金沢の天気      はれ  

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★「ワクチン接種」予約は必要なのか

2021年05月17日 | ⇒トレンド探査

   きょうから東京と大阪で行われる新型コロナウイルのスワクチン接種の予約受付が始まる。このブログで何度か「ワクチン敗戦国」と称してきた行政の対応の矛盾などが一気に噴き出すのではないかと懸念している。たとえば、一番の混乱は、予約は防衛省のホームページや通信アプリ「LINE」などインターネットでのみの受付となっていて、電話は受け付けないということだ。

   ネットやスマモを使わないシニアは多数いる。これは全国統計だが、総務省「情報通信白書(令和2年版)」によると、70代(70-79歳)のSNS利用者は41%だ。さらに、「NTTドコモ」モバイル社会研究所のSNS利用動向についての調査リポート(2020年6月29日付)によると、スマホを所持する70代の46%がLINEを利用している。この割合でいくと、LINEを使っている70代は19%、つまり5人に1人ということになる。東京23区では午前11時から予約を開始しているが、「なぜ電話で受け付けないのか」と各役所には苦情が殺到しているだろう。

   さらに、金沢市でも見られた事例だが、二重予約の原因にもなる。ネットやスマホを使わないお年寄りは知人や家族ら複数の人に予約の代行を依頼している。実際に知り合いの80歳代のお年寄りは3人に依頼し、うち2人が登録を済ませていた。接種センターでは、自治体とシステムがつながっていないため、二重の予約を防ぐ手立てはない。

   そもそも予約は必要だろうか。むしろ、ワクチンの接種率をどうすれば高めることができるかが肝心な点ではないか。これを選挙の投票率を高める発想と考えるといろいろアイデアが浮かぶ。つまり、「接種権」と「投票権」を同列に考えて、選挙管理委員会と連携を取る。住民登録をベースにした「接種人名簿」を作成し、「接種はがき」を事前に送付する。接種日と会場を地区ごとに分散させて、小中学校や公共施設で接種会場で来訪順に接種する。1回目が済んだときに2回目の接種はがきを渡す。アナフィラキシーショックを想定して、15分後をめどに会場を退出する。医師1人1時間あたり20回接種(厚労省基準)といわれているので、地区ごとの接種人の人口を換算して医療関係者を配置する。 

   政府は高齢者への接種を7月末までに終えたいとの方針のようだが、変異株では年代は関係なく感染が拡大する傾向にある。接種日と会場を地区ごとに分散させる方式ならば、接種年齢を現在の65歳以上から20歳以上に拡大してもよい。さらに、緊急事態宣言や「まん延防止等重点措置」の対象地域を優先的に接種した方が効率的ではないだろうか。

   2月に始まった日本のワクチン接種は2%と先進国の中で最も低い(5月14日付・Bloomberg-Web版日本語)。接種率が上がらなければ、「ワクチン敗戦国」として、世界からオリンピック参加すら忌避されるだろう。

⇒17日(月)午前・金沢の天気    あめ

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★眞子さま婚約内定にまつわる問題 これからを読む

2021年05月05日 | ⇒トレンド探査

   今月3日の憲法記念日にちなんでこのブログで「憲法改正」に傾きつつある民意について述べた。新型コロナウイルスの感染拡大の中での基本的人権や、中国による領海侵入など脅威が増す中での安全保障など、今の憲法下でこうした難題に臨機応変に対応できるのかと国民は案じている。そして、皇室についても、だ。

   これまでの皇室のイメージは「国民に寄り添う」姿だった。平成の天皇皇后は被災地を訪れ、丁寧に被災者を見舞われた。膝をついて被災者に声がけして対話するお姿は国民の共感を呼んだ。2019年10月に行われた「即位礼正殿の儀」を前にNHKが行った「皇室に関する意識調査」の「皇室への親しみ」の項目では、「とても」と「ある程度」を合わせた「親しみを感じている」が71%だった。一方、「あまり」と「全く」を合わせた「親しみを感じていない」は27%だった。では、この割合は現在はどうなっているのか。

   ネット上で探したが、「皇室に関する意識調査」の最近のデータは見当たらない。ただ、最近の眞子さま婚約内定にまつわる問題で状況が一変しているのはないかと推察する。眞子さまと婚約内定者である小室圭氏がそろって記者会見し「天皇陛下のお許しを頂き、婚約が内定いたしました」と述べたのは2017年9月3日だった。その3ヵ月後に12月11日発売の『週刊女性』に小室氏の母親の元婚約者との金銭トラブルが報じられた。翌年2018年2月6日に宮内庁は一連の儀式を2020年に延期すると発表。本来ならばその年の3月4日に正式な婚約となる納采の儀、そして11月に結婚式を行う予定だった。秋篠宮殿下が「国民に納得できる説明」を小室氏に求めたのは2018年8月8日だった。さらに2020年11月30日、殿下は眞子さまと小室氏の結婚を認めると話された。

   ところが、国民が納得しない状況になってきたのが、ことし4月8日、小室圭氏が母親が元婚約者から受けた金銭は「借金ではなく贈与」と断じたA4用紙28ページの文書の公開だった。「録音テープがある」と記したことで、「こっそり録音する油断ならない」人物評価となり、世論が不信感を募らせた。『AERA』が同月9日から12日にかけて実施したネット上での緊急アンケート(2万8641人回答)で「小室氏は文書によって金銭問題の説明を十分に果たしたか」の問いに、95%が「十分とは言えない」と回答した。さらに、小室文書の4日後に「解決金を渡す意向」と代理人弁護士を通じての態度替えが不信を募らせた。

   そして「文春砲」でさらにエスカレートする。『週刊文春』(4月29日号)が報じた「小室圭さん母 『年金詐取』計画 口止めメール」の記事は小室親子への疑念を深めた。母親が2002年に亡くなった夫(公務員)の遺族年金を受給するため、2010年に知り合った婚約者に内縁関係を秘するよう依頼したというメールの暴露だった。遺族年金は再婚または内縁関係になると受給資格を失うのが決まりなので、「これは年金詐取ではないか」と文春は問題提起した。一連の騒動がありながらも宮内庁が動かないのは、小室氏側の問題というよりむしろ皇室の問題ではと民意は問い始めている。

   眞子さまが普通の人であるならば本来ならば、お二人は憲法第24条「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」に基づいて、本人同士の意思で結婚すればよい。しかし、皇族は「民間人」ではない。選挙権も戸籍もない。そして、国民の納得も必要だ。憲法第88条では「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」と定めている。国民の納得というのは国会の決議とある意味で同意語だ。令和3年度の内廷費(皇族の日常の費用)3億2400万円、皇族費(各宮家の皇族)2億6932万円、宮廷費(儀式、国賓・公賓の接遇など皇室の公的、皇居などの施設整備)118億2816万円となっている(宮内庁公式ホームページより)。皇室に私有財産はなく、結婚式など経費に関することは国会の決議が必要だ。

   話が長くなった。以下、憶測だ。お二人の結婚に皇室が反対すれば、国際世論が沸騰するだろう。相思相愛のお二人の結婚を許さない日本の皇室は前近代的だ、そして日本の旧態依然とした姿だ、と。問題は小室氏側にあったとしても、この批判は日本にとっても不名誉だ。おそらく秋篠宮殿下はお言葉通り、眞子さまの皇籍離脱を条件に結婚を許すことになるのではないだろうか。結婚式はささやかに挙げ、民間人となった眞子さまは小室氏とアメリカで暮らすことになるだろう。皇室からの財産分与はない。これで騒動は一件落着するかもしれないが、この時点で皇室の求心力が落ちることは想像に難くない。ここから皇室と憲法の有り様をめぐる議論がスタートするのではないだろうか。

   もう一つ。上記の遺族年金の不正受給問題は今後どのように展開していくのか。不正受給の工作を疑わせる母親のメールなどについて、遺族年金を管轄する厚生労働省は警察と連携して犯罪性があれば立証してほしい。皇室に関わる案件を理由にした忖度は国民の反感を招く。(※写真は2017年9月3日、眞子さまと小室氏の婚約内定の記者会見=宮内庁公式ホームペ-ジより)

⇒5日(祝)夜・金沢の天気    くもり時々はれ  

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★コロナ禍で頭もたげる黄禍論か

2021年04月04日 | ⇒トレンド探査

   先ほど「ジョンズ・ホプキンス大学」公式ホームページのコロナ・ダッシュボード=写真=をチェックすると、世界の感染者数は4月4日時点(日本時間)で1億3065万人、コロナウイルス感染による死亡者は世界中で284万人となっている。アメリカでは55万人以上が亡くなり、変異株ウイルスが蔓延するヨーロッパではイギリスで12万人、イタリアで11万人の死亡が確認されている。日本は感染者48万人、死亡9223人(4月3日現在・NHKWeb版)。欧米諸国と比べて人数が少ないのは、日本人がソーシャル・ディスタンスとマスク着用を律儀に守っていることの効果かもしれない。

   このダッシュボードの感染発生の地図を見ていて、北東アジア、とくに中国では小さな赤丸がポツポツとしかない。つまり感染者が少ない。中国では強制力を有しての厳格な感染拡大防止策が講じられていると言われる。その成果の表れがダッシュボードなのだが、ほかの国々の人たちはこれを眺めて何を感じているのか気になる。

   コロナ禍で印象に残っているのはアメリカと中国の応酬だ。中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスだが、WHOの独立委員会は中国のウイルス感染症への初期対応に遅れがあったと指摘する中間報告を出した(2021年1月18日付・ロイター通信Web版日本語)。すると、中国側は反論した。中国外務省の報道局長は19日の記者会見で、武漢市の海鮮市場を2020年1月1日に閉鎖し、新型肺炎の発見からわずか3週間あまりで武漢を封鎖したと強調。早期に世界に警鐘を鳴らしたと主張した(1月19日付・共同通信Web版)。

   世界の人々はこの応酬で何を思うか。中国が初期対応に遅れはなかったと主張するのであれば、昨年1月下旬の中国の春節の大移動で世界にコロナ禍をまき散らす結果となったが、なぜそのときに出国禁止としなかったのか、と考えるだろう。そして、1月23日のWHO会合では、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を時期尚早として見送った。この頃すでに、中国以外での感染が18ヵ国で確認され、日本政府は1月29日からチャーター機で武漢から邦人を帰国させた。WHOによる緊急事態宣言が出たのは翌日の30日だった。WHOテドロス事務局長と中国の関係が怪しいと取り沙汰されるようになった。

           その後、政治問題化したのは当時のアメリカ大統領トランプ氏が3月16日付のツイッターで、新型コロナウイルスコロナのことを「チャイナウイルス」と書き、18日の記者会見でも同じ言葉を述べた。これに対し、中国外務省の報道官は、トランプ氏のツイートは「中国に汚名を着せる行為」「中国に対する根拠のない告発をやめるようアメリカに強く求める」などと批判の応酬があった(2020年3月19日付け・BBCニュースWeb版日本語)。

   アメリカにおける中国への感情が悪化したのはこの頃ではなかったか。「コロナは中国の人工ウイルス兵器」といった根拠のないコメントもネット上で飛び交っていた。さらに中国だけでなく、アジアへの憎悪感情へと広がっていく。4月23日にはホワイトハウスへの請願サイト「WE the PEOPLE」に、「INDICT & ARREST Moon Jae-in for SMUGGLING the ChinaVirus into the US & ENDANGERING the national security of US & ROK!」(意訳:起訴し逮捕を。ムーン・ジェインはチャイナウイルスをアメリカに密かに持ち込み、アメリカと韓国の国家安全保障を危険にさらしている!)が掲載された。86万もの署名を集めて一時期トップにランキングされた。ムーン・ジェインは韓国大統領の文寅在氏のことだ。

   そして今年2月25日、日本が標的となった。ロサンゼルスにある東本願寺別院の提灯立てが放火され、金属製の灯籠や窓ガラスが壊された。事件をテレビのニュースで知って、「黄禍論(おうかろん)」という、かつて歴史の授業で習った言葉が浮かんだ。黄禍論(Yellow Peril)は欧米の白人による黄色人種への脅威感や差別感を表現する言葉だ。現在は、ヘイトクライム(Hate crime)に言葉が置き換わっているのかもしれない。

   アメリカでは、アジア系住民に対する暴行などのヘイトクライムが急増していると連日のように報じられている。暴行犯は白人だけでなく、アフリカ系やヒスパニック系もいるようだ。55万人が亡くなったアメリカでは、このダッシュボードによってアジアに違和感を感じ、黄禍論が頭をもたげているのかもしれない。そうでないことを祈る。

⇒4日(日)午前・金沢の天気      あめ

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