ピンチがチャンスを生むことがままある。それは現状に危機感を抱き、創意工夫を凝らすことで危機的な状況を抜け出すということだろう。その一例を日本酒で紹介する。
ひところ純米や吟醸といった高級化路線でブームをつくった日本酒の業界だが、最近はワインや焼酎に押されてかつての勢いはないと思っていた。ところが、妙なところからブームが起きているのである。カップ酒だ。そういえば、コンビニでも棚に占めるカップ酒の面積や種類が増えている。
金沢の繁華街、片町にある日本酒バー「ZIZAKE」では石川県内の45銘柄のカップ酒がずらりと並んでいる。このバーを運営する県酒造組合連合会は昨年8月に「カップ酒王国いしかわ」を宣言して普及に乗り出した。観光地・金沢のちょっとした手土産に地酒のカップ酒が受けているそうだ。180-200㍉㍑、価格も200円から400円が中心だ。
実は今月3日に「カップ酒とカキ鍋を楽しむ会」が金沢市内の料理屋であり、誘われて参加した。塗り升に樽(たる)酒を詰め、上部を透明フィルムで覆って密閉したものや、小さなボトル型をした「ちょいボトル」などかたちも工夫を凝らしている。飲みきりサイズで酒を楽しむ。そんなコンセプトの商品が次々と生み出されているのである。
そのうち、ファミリーレストランなどにもカップ酒がメニューとなってくるだろう。なにしろラベルもバンビやパンダ柄などが全国的に人気を博している。狙いは新たな日本酒愛好家の開拓、ターゲットは若いファミリー世代とかなり戦略的に絞っているようにも思える。軽四自動車のデザインや機能が格段によくなってブームが起きている現象とよく似ている。
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