テレビ局には「モルモット」といわれる番組がある。深夜帯にこれまで使わなかったタレントを起用して試しに番組をつくる。それが、視聴率を稼げると判断するとゴールデンタイムなどに持ってくる。実験動物にたとえた「モルモット番組」はタレントだけでなく、若手のディレクターの登竜門になったりする。 しかし、得てしてこのような野心的な番組には落とし穴が多い。
「モルモット番組」
その代表格の番組がテレビ朝日系・火曜日夜9時の「ロンドンハーツ」かもしれない。何しろ、系列内部では「平均14%を超える高い視聴率をマークした」と評判がすこぶるいい。中でも05年10月に放送された「青木さやかパリコレへ!」は19.2%を獲得して、裏番組のガリバー「踊る!さんま御殿!!」を9.8%と1ケタに落とすというテレ朝にとっては「快挙」も成し遂げた。
正確に言うと、「ロンドンハーツ」は冒頭に記したモルモット番組ではない。同じテレビ朝日系の深夜0時45時の番組「ぷらちなロンドンブーツ」の主力スタッフが制作していたため、「ぷらちな」のゴールデン昇格番組と思われているが、実際は99年のスタート同時期では「ぷらちな」も放送されていたので兄弟番組である。
落とし穴というのは、その後、「ロンドンハーツ」は日本PTA全国協議会が小学5年生と中学2年生の保護者らを対象にした「子どもとメディアに関する意識調査」で、子どもに見せたくないテレビ番組の1位になる。しかも、3年連続である。PTAの調査内容をもう少し細かく紹介すると、「ロンドンハーツ」は親の12.6%が見せたくない番組に挙げ、2位の日本テレビ系「キスだけじゃイヤッ!」(8.3%)を大きく引き離している。若者には14%を超える人気番組かもしれないが、子を持つ親には「2ケタもの反感」を買っているのだ。
これまで見た番組の印象では、女性タレントが言い争うコーナー「格付けしあう女たち」が人気のコーナーだが、冷静に考えば、ギスギスした人間関係を助長し、「だからそれが何だ」と思いたくもなるシーンもある。そしてコーナータイトルも「ドすけべホイホイ」など、子どもからその意味を聞かれて親が返答に窮する内容なのだ。
テレビ局側は「頭の固いPTAが感情論で…」などと軽んじないほうがよい。子どもを持つ親たちは感情論ではなく、医学や発達心理学の論拠を得て理詰めで、テレビが子どもたちに与える影響を考え始めている。そして、NHKを含めテレビ業界を見つめる社会の目は年々厳しくなっている。
野心的で若手ディレクターの登竜門となる番組を制作をすることはテレビ局の生命線である。ただ、その評価の尺度が視聴率だけであってよいのか、いまがその価値基準に一定の線引きをする潮目の時だろう。
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